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【2019総括】 安楽智大 ── 失われた5年間。瀬戸際の2年連続白星なし

※本稿は全文noteに公開中。最後までお楽しみ頂けます。
※楽天の主要選手(安楽は違うかもだけど)の2019年を「文字数1,600字」で総括するシリーズ11回目。

『豪腕』から3年・・・

『豪腕』を読んだ野球好きにとって、2019年は象徴的な年になった。

Yahooスポーツ/ESPNの名物記者ジェフ・パッサンが約3年にわたる取材で日米の投手酷使、頻発する肘の故障問題に切り込んだ力作。上梓から約3年が経つ話題作で対照的な事例として描かれたのが、取材当時は済美高と大和広陵高でエースを張った2人の高校球児だった。

旧態依然とした指導者に心酔し、甲子園で腕もちぎれよと2年春のセンバツで772球を投げた安楽は、2014年ドラフト1位で楽天入り。一方、自ら課した厳格な球数管理のもと、酷使とは一線を画した立田将太は、甲子園に届かなかったものの日本ハムへ6位入団。

しかし、あれから5年、全く異なる経路でNPB入りした両右腕はともに苦しんでいる。

この秋、立田は遂に戦力外通告で退団。1軍登板は2018年終盤の消化試合1登板だけだった。安楽も期待を裏切る『2年連続の0勝』。通算成績も5勝と完全に足踏みし、200万円減の1400万円で契約更改を終えた。10月には右肘関節鏡視下クリーニング手術を受け、現在はリハビリ中だ。

若手不振の象徴に

思えば昨年の今頃、僕の期待は高まるばかりだった。Instagramにアップされたトレーニング風景、年始に桑田真澄さんに教えを仰ぐ姿を目撃するたび、厳冬に閉ざされた信州の山奥から、未完の大器の完成形に想いを馳せたのだ。

しかし、結局、今年も9登板(先発4試合)32.1回、0勝2敗、防御率4.73。9/4ソフトバンク戦ではプロ入り後の最速タイ151キロを3年ぶりに計測して驚かせたものの、元の木阿弥。

今年は古川、安楽、藤平、池田、西口、近藤ら先発ローテの若手候補が揃ってスランプに陥ったが、その「不振の象徴」になった感は否めない。

安楽に読ませたい『お股本』の一節

今、安楽は豪腕に後ろ髪を引かれながらも、『制球重視の大人の投球』を目指している。しかし、僕から見れば、実現に乏しいのでは?と感じるのだ。

今年話題を呼んだお股ニキさんの著書『セイバーメトリクスの落とし穴』の一節を借りれば、まさに「制球にも球速にもプロで必要な最低ラインが存在し、それを下回っていてはもう一方がいくら優れていても挽回不能である」(46頁より)。

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安楽のヤバさは、ストレートの平均球速が最低ラインに届いておらず、プロ1年目と5年目でほとんど変わらないところなのだ。この間、NPBでは約142キロから約144キロへ高速化が進んでいるのに、安楽は変わらない。

右打者の内角へ捕手の要求どおりに制球良く速球を投げ込んでも、唯一複数被弾を浴びてしまったのは、球速が伴わないからだろう。

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昨年まで師だった与田監督から受けた抗議

思うような球速が出ないから、球速以外の部分で手を変え品を変えざるをえない。打者の立ち遅れを狙うため、テンポを変える投球術は立派な技の1つだ。しかし、安楽の場合、小手先に見えてしまう。

その最たる例がオープン戦の3/22中日戦。8回1死走者なし、渡辺をフルカウント勝負で見三振に取ったシーン。

打者の準備が終わる前に投球動作を開始した投球が、前年まで同じユニフォームを着た与田監督の抗議に遭った。事態は意見書提出まで発展し、NPBからの回答は「反則投球と宣告しても良かった」というもの。

シーズン中にも、しっかり静止しないまますぐさま投げた投球でボークを取られる場面があった。

近藤のような中継ぎ転向も難しい

唯一、ストレートの球速を担保できるのは、今年5試合で投げた救援起用だ。

先発では平均138.9キロだったのに対し、救援では142.8キロを計測した。先発では21.1回で奪三振9個だったが、救援では11回で10個と、球速上昇に伴い、三振も増えた。

こうなれば、近藤のように中継ぎ転向も1つの道になってくるが、安楽の場合、それも難しい。というのは、連投への適性に乏しいからだ。

今年の救援5登板は全て単発。それどころか、プロ入り後に連投したのは、当方調べではプロ1年目の6/6・6/7のロッテ2軍戦の1度だけなのだ。肩や肘に過度な負担をかける逆W字型の投球フォームに加えて、例年のようにどこかしら痛める故障体質がネックになり、使うほうも連投させるのが怖いのだろう。【終】

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