20200213note表紙

【戦評】『弱者の兵法』も垣間見えた三木楽天の初陣勝利~2/13○楽天2-1日本ハム

※本稿は全文noteで公開中。最後までお楽しみいただけます。

初陣は苦手の1点差勝利

今年は例年より開幕が約1週間はやまる五輪日程。
“熱パ”のゴングが鳴るまで約1ヵ月、突然襲った大いなる喪失感のなか、イーグルスの対外戦が始まった。

野村克也元監督の訃報から2日明けた本日、現役時代に野村ID野球の薫陶を受けた三木監督、栗山監督率いる両軍が強風吹く名護で激突、2-1で初陣を飾ったのは三木楽天だった。

序盤2回は0-0で進んだゲームは、楽天が3回に先制。
その後はリードを維持したまま勝利を収めた。

先制点は太田の左越えチーム1号ソロ。
左腕・加藤とのフルカウント勝負を制し、逆風の左翼ポール際へ突き刺した。

2点目は6回2死1塁、途中出場の和田による中越え三塁打だ。
センターから右方向に大飛球を飛ばせる固有スキルをいかんなく発揮。外野からの3塁返球との競争にも勝った好走塁スリーベースになった。

投手陣は先発・石橋、釜田が上々で各々2イニング零封。
5回以降は毎回走者を出すかたちになったが、藤平、寺岡が粘投。
9回に五番手・渡邊佑がソロを被弾したが逃げ切り、『苦手の1点差』をモノにしている。

【一言解説】『苦手の1点差』・・・楽天の1点差勝率は2018年.356、2019年.381。当該勝率2年連続4割未満は1998年~2000年の日本ハム以来、パリーグでは19年ぶりだった。

7安打の内訳は、太田(左本①)、島内(右安)、内田(右安)、小郷(右安)、小深田(右安)、和田(中越三①)、黒川(右線二)

スタメン出場したルーキーコンビも快音響く躍動を披露した。

◎楽天のスタメン

1番・山崎(左)、2番・小深田(遊)、3番・島内(指)、4番・内田(三)、5番・銀次(一)、6番・オコエ(中)、7番・太田(捕)、8番・黒川(二)、9番・小郷(右)、先発・石橋(右投)

◎試合展開

画像1

目撃された『弱者の兵法』

『三木流・弱者の兵法』をさっそく目撃できたゲームだった。

最も印象的なシーンは、4回1死1塁、4番・内田vs左腕・加藤の対決だ。

2-2からの5球目、1塁走者・島内が2塁へスタート。
内田はタイミングをズラされながらもくらいつき、右方向に上手く応戦。
しぶとい打球が1,2塁間を破り右前へ抜けていき、悠々の3,1塁を演出した。

三木監督が指揮を執った昨年の2軍では、中軸や強打者にもサインが出るケースたびたび。
今キャンプでも、7日のケース打撃で浅村に犠打のサインが出て、浅村が一発回答で応じる場面もあったばかりだ。

内田は昨年シーズンの大半を2軍で過ごし、三木イズムをみっちり吸収、しっかり叩きこまれたのだと思う。
当該状況でこういう作戦もあることを想定し、前もって準備できたからこその右前巧打のように感じた。

2つめは、6回無死1塁での攻撃。
依然スコアは1-0と楽天1点リードの僅差の展開だった。
打席上の山崎はあらかじめバントの構えを見せており、手堅く送るバント作戦濃厚の場面だった。

初球は外れてボール。
このとき、バントシフトを敷いた一・三塁が猛チャージしてきた。
この陣形を見た山崎は2球目、構えたバントを引き一転のバスターで応戦。
再度前進してきた内野頭上を狙う打撃だったが、惜しくもファウルに。
不発に終わったが、相手の動向を見きわめた柔軟な作戦だった。

好守、光る!

この試合、3回から4回にかけて楽天の好守備オンパレードになった。

テンポ良い好投で当該2イニングを無失点に抑えた釜田本人と、ショートの小深田が各々2個のファインプレーをみせた。

ボテボテと芯を食った痛烈打球、相反する打球に好反応をみせたのは釜田。
とくに1点先制した直後の3回先頭のボテボテ処理は大きかった。

先頭・万波は右の強打者タイプ。引っ張ったときの三塁打球は痛烈のため、サードを守る内田は前では守らない。
そこへ、ゴルフのパターで転がしたかのような予想外のボテボテ。
内野安打になりそうな打球を冷静にさばき、1塁送球も一塁手に負担をかけるショートバウンドにはせず、ダイレクトで銀次のミットへ。

小深田は三遊間深いゴロをこちらもノーバウド1塁送球。
一転、3回2死・今井の遊ゴは、詰まったハーフライナーが2塁ベース後方で着弾するゴイナーゴロ。
中前へ抜けてもおかしくないヒット性を丁寧にまわりこんで処理し、こちらも送球は問題なしだった。

ドラ2・黒川、躍動のツーベース

前日のシート打撃で新外国人シャギワからヒット性2本を打ち返した新人・黒川が、今日も存在感を発揮した。

見三振、遊ゴ、右線二の3打席は全て『左vs左』の対決。
3打席目に右翼線へ弾き返し、ライトからの2塁返球を間一髪で制して滑り込んだ好走塁の二塁打になった。

この“プロ初安打”は、1、2打席目あっての3打席目だと思う。

バッテリーは加藤x清水、堀x石川亮、鈴木x宇佐見、全て顔ぶれ異なったが、1、2打席目で確認できたのを3打席目に活かしたと感じた。

1打席目はストライク3個全て見逃して三振。
2打席目は一転、初球を打ったイージーゴロ。

左投手の球の軌道や自身のアプローチの精度など修正をかけた3打席目は、1-0からの2球目を見事に捉えてみせた。

露呈した課題点

総じて良いところが光ったゲームだったが、今後への課題点を挙げるとすれば、送りバントだ。

バント3回試みて、2回は失敗だった。

とくに6回無死1塁、山崎のあらかじめバント構えからのバントは2-6-3のゲッツーになってしまった。
8回1死2塁では2塁走者・黒川が全く動けなかったほど、小郷のバントは本塁超手前に落ちて転がらなかった捕バゴになった。

昨年、楽天の真のバント成功率は69.9%。
2017年の78.4%と比べると、この2年間で約10%も下落した。

バントファウル等で追い込まれてしまい、そこから打って出て安打・四死球・進塁打などで取り返したリカバリー率も昨年は27.8%と低く、直近5年では最低値だった。

バントの精度の改善は、石井GMから三木監督に託された課題点の1つ。
開幕前の練習でぜひ修正を要求したい。

投手陣の寸評

投手陣はおおかた合格点だった。
打者33人に与四球わずか1個(藤平)と、余計な出塁を与えなかった点も評価ポイントだ。

“開幕投手”を任され、2回無失点で1安打に抑えた石橋は、持ち味のコントロールが冴えた。
ストライク率は70.4%を記録、初球も6人中4人がストライクで入る好内容だった。

2回は先頭にヒットを許したが、無死1塁からがハイライト。
右飛に仕留めた渡邊との対戦も、注文どおりの二ゴ併を打たせた海老原との対決も、わずか2球で(見逃しS)(見逃しS)で0-2の投手最有利カウントを作ってからの勝負だった。

釜田は西川、王柏融といった左の好打者のタイミングを完全に外しての三振劇が見事。
緩急を意識したコンビネーションが決まった。

荒れ気味でボール先行も目立ったが、力強い球を投げたのは藤平だ。

横尾ら右打者に一邪飛、一ゴといった《右打者が最も屈辱的に感じる打球》を打たせることに成功。
この日、敵軍の中で最もタイミング合い9回にはソロ弾も放った石井を、詰まらせて捕邪飛に仕留めている。

藤平といえば、6回には内田の失策で出した走者を、自らの投手牽制でアウトにするプレーもあった。

昨年2軍で9イニング当たり許した盗塁企図が1.30を記録した背番号19。
戸村、熊原、近藤、木村と並び、《盗塁を仕掛けられやすい投手》である。

そのぶん、走者への警戒も強い。

《執拗に牽制を繰り出し、あわよくば牽制でアウトを狙うタイプ》で、当方が集計した限りの2軍データでは、昨年2軍で3球以上連続して牽制した回数が最も多かった楽天投手だった。

ここでは後者の要素がハマり、1塁走者・松本を憤死させた。

寺岡は可もなく不可もなく。
唯一、マズいピッチングになったのが、渡邊佑。

石井に浴びたソロ弾はもとより、打球8本全てが外野に飛ばされていた。
8本中7本が外野に飛球で打ち返されており、フライアウトの中には悪くない打球が複数含まれていた。

渡邊佑といえばゴロを打たせる投手だ。
2軍でのGO/AOは2018年3.25、2019年1.43だった。

しかし、本戦での簡単に打球を外野まで飛球で運ばれたさまを見ると、調整不足なのかな?というイメージになってしまう。【終】

・・・といった試合評をシーズン中、note/まぐまぐで綴っています。前半戦の試合評やコラムなどお得にお楽しみいただけるnoteマガジン『Shibakawaの楽天イーグルス観戦記:2020前半戦』新規読者さんを募集中! 詳しくは下記記事でご確認ください。


ここから先は

0字
この記事のみ ¥ 100

読者の皆さんにいただいたサポートで、さらなる良い記事作りができるよう、心がけていきます。