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【試合観戦記】 6/23楽天6-2日本ハム:炎の守護神・則本昂大28,977球で唯一。難条件で6勝目・藤井聖の真骨頂

炎のストッパー、渾身の1球!

最後はハラハラ!!!
自分ごとではないのに、久しぶりに神に祈る気持ちだった。

仏様ではない。
~の尊(命)という神社に祀られている神様でもない。

中南米系の選手が天を指指してお祈りを捧げる、あっち系の一神教の神様にお祈りする、そんな心持ちにさせられた。

胃が痛くなる状況を作り出した張本人は、4点リードの最終回に登板した4番手・ターリーだった。

先頭にヒットを弾き返され、2死までこぎ着けたものの、そこからが劇場の始まりだった。

ストライクが思うように入らない。
この人は今季ここまでストライク率55.1%、もともと制球不安定なのだ。
その不安材料が露呈した。

3番・マルティネスに四球を与えて2死2,1塁。
このとき、GAORAの解説・金村暁さんは、ブルペンで準備していた則本への継投を促してたが、楽天ベンチは動かなかった。

結局、3番・水谷にも4-1四球を与えて2死満塁。一発出れば同点という瀬戸際の局面で、今江監督がようやく動く。金村さんが「一手遅い」と評した自軍ベンチの継投ミスを、33歳6ヵ月の守護神が尻拭いをさせられるかたちになった。

打席には4番・レイエス。

このカード初戦はグラスラ、2戦目は3安打、この日は前の打席で右中間フェンス直撃弾を弾き返した右の怪力。実働6年に及ぶMLBではキャリア通算のバレル率が、MLB平均の約2倍にあたる13.8%を記録する能力のスラッガーだ。

最初4球は変化球でかわす配球も相手に看破されてしまう。
2-0、2-1、3-1とカウントを悪くした。もはやボールは投げられない局面に追い込まれたそのとき、則本のリミッターが解除された。

155キロの真っ直ぐが胸元をついて、巨漢のバットに空を切らせる。
すると、3-2からの5球目はアウトコース投げきりの156キロ真っ直ぐ!

最後は全面に出した闘争心でレイエスをねじ伏せ、炎のストレートで空三振に斬った!

この瞬間、今や少数派となった則本抑え転向反対をいまだに唱えるファンも、またグッとその数を減らしたと感じる、そんな気迫の名場面になった。

当方は10年以上楽天戦のプレーデータを1球単位で集計してきた。その記録から、則本の156キロを抽出してみよう。自己最速は2021年に計測された158キロ。156キロ以上は本戦レイエス斬り結果球を入れて合計59球あった。(下記表参照)

則本昂大 156キロ以上使用時の塁状況

満塁で156球以上を投じたのはキャリア2度目

表のとおり、59球中88.1%に当たる52球は走者なしの場面で使用されていた。

ここまでの高出力でのハイスピードボールになると、いかに則本とはいえ、抜けたりひっかけたりするリスクが高く、走者有の状況ではなかなか使いにくいのだろう。ましてや塁上全て埋まった満塁なら、なおさらだ。

実際、59球中、満塁で投じたのは2球のみ。

2017年8/2●E4-7L(メットライフドーム)、同点の3回2死満塁、4番・中村剛也へ0-2から投じた3球目、アウトハイに大きく外れてボールになった156キロと、本戦ラストだけ。

もっと言えば、満塁の3ボールから156キロ以上を投じたのは、28,977球を投げてきたキャリアの中で初!

ということで、ゲームを終わらせ17セーブ目をあげたあの場面は、初戦の失敗をバネにしたノリが、また一段成長した瞬間だったと思う。マジで鳥肌モノだった。

それにしても、交流戦初Vで迎えたリーグ戦再開最初のカードになったこの3連戦は、まさに激闘だった。敵地で1勝1敗1分。なにより借金を作らずに終えた点はよかったと思う。

詰めるべき課題はまだあるものの、これで同日ソフトバンクと引き分けた3位・ロッテとの差はいよいよ1.0。週明けマリン2連戦で3位浮上の機会をうかがうことになる。

試合展開

楽天=1番・小郷(右)、2番・村林(遊)、3番・辰己(中)、4番・浅村(三)、5番・鈴木大(一)、6番・フランコ(指)、7番・小深田(二)、8番・太田(捕)、9番・伊藤裕(左)、先発・藤井(左投)

日本ハム=1番・万波(右)、2番・マルティネス(一)、3番・水谷(左)、4番・レイエス(指)、5番・田宮(捕)、6番・郡司(三)、7番・松本剛(中)、8番・福田(二)、9番・上川畑(遊)、先発・加藤貴(左投)

両軍のスタメン

打線は加藤のペースにさせず。積極的なアプローチが結実した

打っては打線が長打4本を含む二桁11安打。投げては先発・藤井以下5人の継投で2失点。6-2の勝利はまさに投打かみ合うかたちになった。

打線は相手先発・加藤貴に対し、積極的な応戦が光った。

球界を代表する技巧派左腕は、試合前BB/9の値は0.58。最後に四球を出したのは5/4オリックス戦。ここ6試合はフォアボールを出していなかった。

楽天打線はその傾向を頭に入れて臨み、ゾーンに入ってくる球に対し、各自が狙いを絞り、良いアプローチを続けた結果が、4回5回の計4得点に結実したと感じる。

実際、加藤貴と対戦した打者23人中、1打席で見逃しストライク複数を許したのは、小郷2打席だけ。昨年は楽天戦で1試合平均22球の見逃しストライクを得た加藤貴は、この日は14球どまりだった。

小郷三塁打でE2-1Fと勝ち越した直後の5回1死3塁、村林の左翼線いっぱいに運んだタイムリーツーベースが素晴らしかった。

今季は右打ちがことさら際立つ2番打者だが、もともとはハイボールをひっぱって左方向にもっていくのが本来の姿。ここでは状況に応じて打撃を使い分け、本来の姿で応戦して加藤貴の失投カットボールを捉えてみせた。

終わってみれば、1番~8番までがヒットを放ち、9番~5番までがホームを踏み、1番~6番までが打点をあげる、全員がなにかしら得点にからむ働きをみせてくれた。

藤井聖、ファイターズ重量級打線に仕事をさせず!

打線の働きも良かったが、やっぱり評価したいのは、先発・藤井のハーラートップタイ6勝目だ。

いろんな難しい状況ありながらも、よく粘りの投球で5回戦ボーイに終わらず、6回まで投げて1失点(自責0)にまとめてくれた。3、4、5回と3イニング連続で先頭を出す局面もあったものの、要所を3併殺で制圧したところも、らしさ溢れる内容になった。

この日、・・・(続く)

...続きは『Shibakawaの楽天イーグルス観戦記2024』でどうぞ。

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