【試合評】勝てない田中将大が検討すべき代替プラン~●楽天4-8西武

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楽天、後半戦は最下位

この時期になると、楽天戦を観戦しながら他球場の進捗が気になってくる。

たとえば、E1-0の3回裏には、M2-3F、H0-1Bだった。
E2-3Lと逆転された直後の5回裏には、M4-4F、H0-1Mになっていた。

この後、ロッテは4-5と日本ハムに勝ち越しを許し、オリックスはソフトバンクに1-1と追いつかれ試合は振り出しに戻った。

しかし、9回に楽天が宋家豪、森原を投入しながらも4点を奪われている最中に、ロッテは追いつき追い越せで7-5の逆転勝ち。8回に追いつかれたオリックスも9回ジョーンズの決勝打で2-1と競り勝つ展開に。

上位を争う3球団のうち楽天だけが敗れて、楽天と1位とのゲーム差4.5、2位との3.0、これは今季最大である。

後半戦、イーグルスは5勝8敗2分。
これ、じつはパリーグでワーストの成績なのだ。

◎パリーグ 後半戦の成績
ロッテ 10勝5敗2分
オリックス 8勝5敗3分
ソフトバンク 6勝7敗3分
日本ハム 5勝6敗5分
西武 6勝9敗3分
楽天 5勝8敗2分

◎試合展開

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◎両軍のスタメン
西武=1番・源田(遊)、2番・岸(中)、3番・森(捕)、4番・中村(指)、5番・外崎(二)、6番・栗山(左)、7番・山川(一)、8番・呉念庭(三)、9番・川越(右)、先発・松本(右投)

楽天=1番・小深田(遊)、2番・鈴木大(一)、3番・島内(左)、4番・浅村(二)、5番・茂木(三)、6番・オコエ(中)、7番・岡島(右)、8番・カスティーヨ(指)、9番・炭谷(捕)、先発・田中将(投)

検討してほしい代替策

NPB復帰後で最多125球。8回岡島の2点適時打で6敗目の黒星が消えて勝敗つかず。4勝5敗のまま、防御率2.86はパ規定投球回3位である。

田中将の特徴はイニング先頭打者を出塁させないこと。
当該の被出塁率.155。則本.229、岸.270と比べれば傑出している。

本戦はその数少ない回先頭を出した4回と8回で合計4失点を喫した。

8回には石井監督が「ちょっと余計だった」という被弾を浴びている。
左打ちの川越にスライダーを上手く右翼席へ運ばれた。

◎田中将大 球種別の投球結果

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8回、打者30人、球数125、被安打7、被本塁打1、奪三振5、与四球0、与死球0、失点4、自責点4。

スライダーは復帰後の投球の軸球だ。

その投球割合はストレートの28.1%を上回る最多30.5%。
被打率.164、被OPS.512、空振り率19.9%、抜群の戦績をあげてきた。

しかし、打者の左右では様子が異なってくる。

右打者・・・被打率.141、空振り率25.4%、本塁打0
左打者・・・被打率.208、空振り率13.7%、本塁打4

左打者には身体に近づく球になるため、コンタクトされやすくなるのだ。

スライダーで許した一発4本は全て左打者に打たれている。
(T佐藤輝、H柳田、M安田、L川越)
左打者への当該被打率は.208と上々も、一発が多いため被OPSベースでは.801に跳ね上がってしまうのだ。

復帰後は被本塁打率1.09と被弾が多くなっているマー君。左打者に浴びた一発のうち約半数がスライダーになっている。

接戦やピンチの場面など要所では、スライダーよりも7キロほど高速で平均140キロ前後のカッターを代替としてもっと使っても良いかもしれない。左打者のカッターは被打率.143、今までのところ長打を許していない。

初回に浅村がみせた不可解な光景

浅村が7回裏の守備からベンチに退いた。

試合後、石井監督は「ちょっと調子が悪かったからですね。あの打席(遊ゴロに倒れた6回の第3打席)の後というのは心配だったので代えました」とその理由を明かしていた。

結局、本戦も3タコ。昨年9/25~10/1(5試合)に続く4試合連続無安打だ。

前日4打席全て走者有で4タコしたなか迎えた本戦は、初回1死2,1塁の第1打席からふだんと様子がおかしかった。

というのは、先制の好機でありながら1度もバットを振らずに見三振に倒れたのだ。

フルカウント6球勝負のうち、見逃しで奪われたストライク3つはいずれも高めに甘く入ってきたストレート。そんな絶好球が3度もやってきたのに、バットが出なかった。

これで浅村の後半戦成績はOPS.569、打率.212になっている。

“熱盛”立役者がみせたプロ初の「きっちりお仕事」

オコエがプロ初の1試合2犠打。

2点を追う4回無死1塁では自身も生きようと投手右を抜けてセカンド前方に転がすプッシュバントを狙う投犠だった。

同じく2点ビハインドの8回は無死2,1塁から三塁線方向へ絶妙なバントを決めて1死3,2塁を演出。その後の岡島の同点打をお膳立てする黒子役に徹した。

今季のオコエの真のバント成功率は5度試みて5回成功の100.0%。
従前とは違う姿をみせている。

守備ではテレビ朝日『報道ステーション』の熱盛に認定された。

1点リードの3回1死走者なし、呉念庭が弾き返したセンター右の塀際直撃コースの快飛球。これを背走、アイリスオーヤマのフェンスに激突するジャンピングキャッチ。

1点ビハインドの6回には先頭・森の中前フライヒットコースを突っ込んでグラブに収める好捕もあった。

見ごたえあった力勝負

イーグルスにとって最大のチャンスは、1点を追った7回だったか。

この回から西武のマウンドは増田。
楽天はこの前守護神を2安打1四球で攻め立て、2死満塁を作っていた。

その2安打1四球、いずれも西武側からすればダメージ残るもの。

2安打は増田のフィールディングが良ければ投ゴになっていたかもしれないグラブを弾いた紙一重の強襲内野安打。1四球はキャリア通算打率.213の8番・炭谷に3-1から与えたものだった。

2アウトながらもフルベースでバッターボックスには、現在パリーグ打点ランキング1位の島内。

フルカウント6球勝負の結果球の直前、島内が左手を大きくあげてタイムを取るシーンがあった。

打席に入るときからマウンド方向へ謝意の手刀を切りながら自らの間合いで入り、打席内でもタイムを取ることの多い鈴木大とは違って、島内のタイムは珍しい。

それだけ、この場面18.44mの駆け引きに集中し、自らの間合いを作り出そうとしていた証拠だと見た。

甘く入ってきた150キロを応戦したが、結果は中飛。

しかし、夢のある飛球をセンター後方に打ち返した。
背走した岸の守備範囲に収まったが、悪くはない打撃内容だった。

島内と言えば、今季もスピードボールに強い。150キロ超えでヒット8本を記録。そのうち3本は一発を含む長打になっている。そんな島内をもってしてもだから、ある意味、わりきれる。

両者のシビれる力勝負になったこの場面、結果は出なかったものの、見どころのある対決になった。

大地すれすれの好捕球

平良の152キロをセンター右に運ぶなど、この日も2安打。
これで今週は3戦連続マルチヒットとし、後半戦打率.344と好調の鈴木大。

後輩・村林から「ずっとあのまま。大地さんはずっとあのままです。365日あのままです」と慕われる鉄人が、この日は守備でも良いところを2つみせてくれた。

1つめは2点を追った8回、先頭・源田の遊ゴだ。

小深田の怪しげなスローイングがこの場面でもワンバウンド送球した。
これを一塁手としてがっちり捕球し、小深田のエラーを防いだ。

小深田の1塁送球がバウンドしたとき、その44.8%でアウトにならない。
高い確率で打者走者の出塁を許すリスクを秘めた場面だっただけに、地味ながらも大きなプレーになった。

2つめは4-4同点の9回無死1塁、5番・外崎の一バ飛だ。マウンドより前方の一塁線沿いのバント小飛球である。

チャージをかけてきた鈴木大が物凄い勢いで飛び込み、大地すれすれでダイビングキャッチをみせたのだ。そんな好守支援を受けながらも4失点。点を取られるときはえてしてこういうものなのかもしれない。

それにしても、今季の鈴木大はこういうときの好処理が際立つ。

走者有で相手のバントが「一バゴ」「捕バゴ併」「投バゴ」「捕バ飛」などに終わったケースは今季10度目。

そのうち最多3度が一塁手・鈴木大の手によるもの。

記憶に新しいのは8/25△E2-2Bの好プレーだ。

2-2同点の7回無死1塁、若月のバントがマウンド右横に飛ぶフライになったところを前進捕球。
すかさず身をひるがえして1塁送球。飛び出していた一走を見事に刺す併殺劇を完成させてみせた。

北九州市民球場でお紺われた●4/20E4-6Hでもビッグプレーがあった。

4-4同点の6回無死2,1塁のピンチだ。6番・中村晃は送りバントの構え。投前にきっちり転がされ、1死3,2塁が決まったにみえたバントゴロに対し、なぜか岸の前方に姿を現したのが鈴木大だった。

機敏に処理して間髪入れずに3塁送球。一寸の隙も見せない鋭いプレーで二走・栗原を封殺してみせた。【終】

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