【戦評】辻監督の逆転シナリオを空論にした、Mr.マルチヒット猛打賞の活躍~7/16○楽天7-4西武
Mr.マルチヒット3安打の活躍
後世、先発・弓削「涙の負傷降板」として語り継がれる西武2回戦は、楽天が一時は4点リードを奪った。
しかし7回、五番手・牧田が誤算。3安打1四球に捕逸のバッテリーミスも絡んで3点を失い(自責1)、1点差へ肉薄されてしまう。
翌8回はブセニッツが自らのエラーで2死2塁を招いた。太田の好リードでピンチ脱出に成功したものの、9回西武の攻撃は2番・源田から始まる打順。一発のある4番・山川まで打席がまわる計算になった。
はたして1点差の8回裏、西武・辻監督は平井をマウンドに送る。
主に7回を任されている勝ちパターンを、今季2度目のビハインド起用。
昨年81試合36ホールドを挙げたタフネスにぴしゃり抑えてもらい、主砲にまわる9回の攻撃に望みを託す逆転勝利へのシナリオだった。
漂い始めたイヤな雰囲気に敵将の執念の采配。
前夜のヒーロー「Mr.マルチヒット」が、これらを綺麗に振り払っていく。
5回までに相手先発・高橋光からヒット2本を放ち、パリーグ最多11度目の複数安打を達成させていた背番号7に、この回は2死満塁で5打席目がまわった。
1-0からの2球目だった。
平井の内角球に詰まらされたが、巧打で応戦。
打球はサード後方にしぶとく着弾。
この2点打は本当に大きかった。
猛追された1点差を再び3点差に広げて、鈴木は今季5度目の猛打賞に。
この数もパリーグ最多、打率も同1位の.370に上げる活躍劇になった。
敵軍サイド側からみれば、悔いを残す場面になった。
負けている展開でリリーフエースを投入したのに、逆に複数失点の返り討ちに遭ったのだ。
辻監督も同一カード6連戦(今回は5連戦)の“怖さ”から平井を投入したのだろう。6連勝もあれば6連敗も十分にありえる今季の異例日程。2連敗スタートとなれば、5連敗も脳裏にチラつく。
楽天に流れを持っていかれないようクサビを打ち込んだはずの辻采配を、鈴木の躍動が倍返しに。逆にイーグルスが4戦目以降の布石を打つ状況を作り出す、非常に意義のある一打になった。
お立ち台には7度目の浅村と、3年ぶり白星をつかんだ安楽が登壇。
3連敗から2連勝としたイーグルスは1位、23試合15勝8敗の貯金7へ。
ゲーム差は2位・ロッテと2.0、3位・ソフトバンクと3.0、4位・西武と4.0、5位・オリックスと5.5、6位・日本ハムと6.5になった。
◎両軍のスタメン
西武=1番・鈴木(中)、2番・源田(遊)、3番・外崎(二)、4番・山川(一)、5番・栗山(左)、6番・中村(指)、7番・山野辺(三)、8番・木村(右)、9番・岡田(捕)、先発・高橋光(右投)
楽天=1番・小深田(二)、2番・鈴木(三)、3番・茂木(遊)、4番・浅村(指)、5番・島内(左)、6番・ブラッシュ(右)、7番・銀次(一)、8番・太田(捕)、9番・辰己(中)、先発・弓削(左投)
◎試合展開
チーム好調に影を落とす、島内、ブラッシュの不振
チームが好調の中、島内とブラッシュの不振が際立つ。
島内は7/9○E9-1Hに津森から中前適時打を放ち11試合連続ヒットを決めた後から快音から遠ざかる。試合数にして5試合、打席数にして22打席ノーヒットだ。
この間の15打球中じつに11本がゴロ、本戦も4タコ全てがゴロになった。
本戦ではカーブ撃ちの達人よろしく高橋光の遅球に2度応戦したが、いずれも内野守備網を突破することは叶わずに、ゴロ率も前年比8.3%増の56.6%まで増えてしまった。
この間の22打席中7打席はチャンスでまわったもの。そのうち6打席は2死得点圏だった。しかし、島内がブレーキ役になり攻撃終了する場面が多い。
JBは単打や四球は出るが、打球が上がらずに持ち味の長打が出ない。
前日は今季初の休養日になったブラッシュは、この日2安打1四球。2回1得点を先導する回先頭二塁打に、8回2得点の足掛かりを作った中安、辰己2号を2ランに変えた四球。高い出塁能力は維持できているが、かたや4回の左飛はまさかの柵越えしなかった。
高橋光の失投フォークを角度良く捉えたはずのホームランコース。これが東京インテリアの左翼塀際で失速し、予想外の左飛に終わったのだ。
7/11●E4-8Hでも同様場面があった。
二保のスライダーを捉えた一閃は、じつはバットの先。全く伸びなしの浅い左飛に倒れ、思わずJBが頭を両手で抱える光景が中継カメラに射抜かれていた。
JBの不振は、こんな記録からでも確認することができる。
ウォーニングゾーン以遠に到達した大飛球の内訳だ。
昨年は当該46本中、71.7%を占める33本が柵を越え、82.6%に当たる38本がヒットになった。ところが今年は当該6本中、柵越えはわずかに1本(16.7%)。残り5本は(犠飛1本含むものの)失速フライアウトになっていた。
8回平井の速球を・・・(続く)
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