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【2019総括】ウィーラー ── ゾーン打率の推移でみる、副将の「看過できない劣化」

※本稿は全文公開中。最後までお楽しみいただけます。
※楽天主要選手の2019年を『文字数1,600字』で総括する13回目。

審判に激昂。緩慢守備に併殺打王。来日最低の1年に

開幕カードでみせた3発8打点の大暴れ、指揮官の誕生日に花を添えた4/23祝砲3ラン。最大8点差からの逆転を完了させた5/15サヨナラ犠飛も、この人の活躍だった。6/18には球団史上2人目の100本塁打を到達すると、9/24はチームを3位に導く千賀撃ちの逆転決勝2ラン。

しかし、そんな局地戦での輝きは広がりをみせなかった。

OPS.738、打率.243は来日5年で最悪だ。NPBへの順応に苦しみ、4度の抹消を繰り返した来日1年目(.791、.255)すら下回った。22併殺打はリーグ最多タイを記録した。

残念な光景が目立ったのも、今年の特徴になる。

ハーフスイング判定を巡り1塁塁審・白井に激昂し初の退場処分を受けたのは7/8のこと。7/27には1試合3失策が全て失点に絡んだ。8/20には平凡な三ゴを内野安打にする気持ち切れた緩慢守備で翌日抹消へ。

止まらないゾーン打率の悪化

チームきっての闘士らしくないプレーも多々あったが、それ以上に僕を心配させるのは、ゾーン打率の劣化だ。

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直近3年ぶんを確認すると、『ホットゾーンの減少&苦手ゾーンの増加』が際立つ。

来日最高の戦績を残した2017年はストライク9マスが全て打率.250以上を記録し、苦手は存在しなかった。しかし2018年以降、内角全般と低め一帯で戦績悪化が進行し、今年は看過できないレベルになった。

壊滅状態の内角撃ち

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とくに今年はインコースが打てなかった。

例年全打席の約25~27%を占める当該戦績でOPSは.820→.727→.559と凋落の一途を辿る。本人も自覚するのだろう。2年前と比べると、今年は前傾姿勢を修正し、本塁からも離れて立っていることが確認できる。

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上記グラフは内角撃ち打球の結果を分類したものになる。ここ2年は「ゴロ凡打と内飛アウト」の割合が39%→57%に急増し、安打割合は30%→18%に減少。内角で『希望の見えない打球』が一気に増えた。

実際、今年の内野ポップフライ36本のうち、21本は内角を打ったもの。22本の併殺打も、そのうち9本は内角で記録されている。

水を差した無死満塁ゲッツーも、CS敗退の遊ゴも内角撃ちだった

8/13ソフトバンク戦は象徴的なシーンになった。

序盤に2点先行されるなか、楽天は2回に無死満塁を演出。打席は7番・ウィーラーへ。絶好機を迎え、お盆休みで満員の本拠地の熱気は最高潮へ。しかし、甲斐の内角ミットめがけて投げ込んだ高橋礼の134キロ速球に詰まらされ、1-2-3のゲッツー。結局、後続も凡退した。

今年、楽天が無死満塁で無得点に終わったのは4度あり、そのうち2度はウィーラーの内角撃ち併殺打が絡んでいた。(もう1つは6/5巨人戦の3回)。

内角での凡退といえば、CS1stステージ敗退が決まった10/7も忘れられない。

1-1の同点で迎えた7回1死3塁、ウィーラーが甲斐野の火消しに遭った場面だ。155キロの膝元速球に刺され、前進守備を敷く今宮正面の遊ゴに。もちろん、三走は動けない。結局、後続も凡退し、その裏に宋家豪が内川に被弾。楽天の2019年が終幕した。

左投手戦績にも影を落とした内角撃ち

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内角撃ちの悪化はvs左投手成績にも暗い影を落とす。

右打者vs左投手はクロスファイアが多投されるためインコースが多くなる。実際、敵軍左腕はウィーラーに対し、全体の約39%で内角狙い投球を試みた。左投手戦績で来日最低のOPS.598、打率.208を記録した最大の原因も、内角がさばけなくなったことが大きい。

NPBの高速化についていけず・・・

甲斐野の155キロに詰まらされたように、今年は速球戦績、なかでも150キロ超えでカラッキシだった。変化球打率.271に対し、速球.216。150キロ超えでは.136に終わった。

来日5年の間にウィーラーは28歳から32歳へ加齢し、NPBでは速球の平均球速が2キロ上昇した。高速化が進むNPBの時流に、衰えが進む自身の身体がついていけないのだ。

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今や彼の鉄板ホットゾーンは上記ピンク網掛けで示したストライク外角高め~真中4マスの変化球のみ。ここに入った変化球は打率.556。スイング106球でヒット30本を量産した。(当該速球は159スイングで21安打)。

逆を言えば、ここ4マスしか希望は持てなくなりつつある。

FAで入団した鈴木は石井GMいわく「基本的には三塁を守ってほしいと考えている」という。来日6年目を迎える副将は、来季どうなってしまうのか・・・ 【終】

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