【2019総括】堀内謙伍 ── 美馬を新たなステージに押し上げた影の功労者
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“嶋超え”最多65試合出場
今年は世代交代に舵を切ったチーム方針のもと、嶋が初めて正捕手の座を追われた。
そのなか、ホームベースの番人を最も多く任されたのが背番号65。高卒4年目22歳の堀内が、大卒1年目23歳の太田を制し、65試合393回でマスクをかぶった。しかし、太田が1軍初昇格した6/7以降は、堀内302回、太田307回と両者併用になっている。
昨年は消化試合が大半の11試合69回だから、今年は出場機会が約6倍に増加した。
石橋の先発プロ初勝利や完全試合に迫る美馬完投勝利の女房役を務め、3位が確定した9/24ソフトバンク戦でもマスクをかぶるなど健闘もある一方、途中出場した10/7では内川に決勝弾を許しCS1stステージ敗退の悔しさも味わう得難い1年になった。
美馬再生を後押しした堀内の好配球
配球の特徴は『落ちる球の多さ』だ。その割合は18.6%。チーム全体と比べて2.5%、太田との比較でも4.7%多かった。
5/24オリックス戦、1点リードの8回、一発でたちまち同点にされてしまう場面で吉田正、ロメロを退けた宋家豪のチェンジアップ8連投など、終盤の要所などで『落ちる球の多投』を要求するサインが印象に残った。
この配球に一番フィットしたのが、美馬だ。
シーズン防御率はリーグ平均値付近の4.01だったが、先発25試合中17試合でバッテリーを組んだ堀内とは防御率3.76を創出。これにより自身3度目の規定投球回に到達、再び名を上げた。
背景には堀内が落ちる球を23.9%で使った点がある(堀内以外のときは14.5%)。落ちる球はヒットを打たれにくく長打も浴びにくい。また、空振りを奪いやすい。
この特性を活かして美馬に多投を促し、
被打率の改善 (昨年.286→今年.262)
被本塁打率の削減 (昨年1.37→今年1.19)
奪三振率の上昇 (昨年4.67→今年7.02)
につなげた。NPBが打高に傾く時流の中、33歳を新たなステージへ押し上げるサポート役を見事に務めた。
痛すぎるバッテリーミス
一方、配球以外の守備は正直、物足りなさが残った。
オフに手術に踏み切るほどかんばしくなかった右肘痛を抱え、精度を欠く2塁送球もたびたび目撃されながらも、盗塁阻止率は.357を記録。この点は素晴らしかったが、他はもっとできたはず。
定評のあるワンバウンド投球の処理能力は楽天投手陣のパリーグ最少暴投(球団史上でも最少)に貢献する一方、暴投8個中4個がタイムリー暴投になった点は残念すぎる(楽天投手陣のタイムリー暴投は5個だった)。
7/21ソフトバンク戦では2-1と勝ち越した直後の6回2死走者なし、デスパイネを三振に取りながらも捕球できず振り逃げ出塁(股間抜け捕逸)を許してしまい、直後、長谷川に逆転決勝2ランを被弾。「僕がそらさなければ、あの回はゼロで終わっていた」と悔やむミスもあった。
僕は堀内のワンバウンドを止める技術はピカイチだと信じているので、彼ならもっとできたはずという思いが、どうしても強くなってしまう。
◎2019年 堀内謙伍 盗塁成績
※=黄色網掛けは捕手関与せず。投手1塁牽制に誘い出されての二盗のため、盗塁阻止率算出時の分母に入れない。
打撃は成長見られず・・・
課題の打撃は『2年連続で打率1割台、OPS4割台』。成長の跡はほとんど目撃できなかった。
低すぎるBABIP.235は運の要素というより、打球速度、スイングスピードの遅さに尽きると思う。通算164打席あれば1本ぐらい柵越えしてもよさそうなものの、プロ初本塁打はお預けに。ここまで1本しかないフェンス直撃弾もそのことを物語る。
この手のタイプの打者にしては空振り率11.4%と多く、三振率も29.3%と高い。投手に10球以上投げさせた打席は今年も1度もなく、粘りに欠ける印象だ。
立ちはだかる「真の強敵」
太田のOPS.550に対し、堀内は.406と後塵を拝した。打撃と捕手防御率は太田に遅れをとり、数字は互角の盗塁阻止率も、送球の正確さは太田に軍配が上がる現実。
さらに今秋に右肘手術したとなれば、来年の久米島キャンプは2軍スタート濃厚だ。オリンピックイヤーの正捕手争いは、太田から一歩も二歩も遅れてのスタートになりそうだ。
もっと言えば、堀内のライバルは岡島かもしれない。同じ左打ち。通算OPS.680の.岡島が状態万全に整え本来の打撃を取り戻してきたら・・・ 岡島に出番を食われ、出番が大きく減るのは必至。厳しい正捕手争いで堀内がどのように生き残るのか注目したい。【終】
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