20160325芝生

──東北は日の出を待っている── shibakawaが作る犬鷲選手名鑑2016(8)ファイナル

岡島豪郎、ウィーラー、村林一輝、塩見貴洋、レイ、則本昂大、福山博之、戸村健次の8選手分

現在、書店の店頭で各社一斉発売されるプロ野球選手名鑑。その数は合計10数冊以上にも及びます。当ブログでは過去に10冊以上を大人買いし、名鑑比較を実施するというおバカな企画もやりました。

当方のお気に入り選手名鑑は『日本プロ野球オール写真選手名鑑』。我が国唯一のMLB専門誌『Slugger』編集部が製作する各種データ満載の名鑑です。

このお気に入り名鑑を眺めているうち、実際に中に入って選手名鑑作りをしてみたいなあ!と思う気持ちが強まってきた近年。何度かTwitterで思いの丈を叫んでみたりしましたが、オファーが来る訳もございません(泣)(来年こそ来ればいいなあー)

そこで、勝手に作成してしまおう!という企画です。

作成に当たり、ルールを2つ設けました。

◎主力選手/注目選手の寸評は本文500字以内。その他の選手は250字以内のテキストを厳守する。自分が読んでも楽しく、納得できる寸評を目指す。基本、当該選手への愛情こもったテキストにする。ただし、気持ち悪くなるほどのあからさまな贔屓の引き倒しはしない。

◎市販の選手名鑑に記載されている略歴や主要成績等は省略する(今やネットですぐに見ることができますしね)。その代わりに、鷲ファンで楽天選手のデータを最も多く眺め、ここ数年、楽天戦全試合を1球集計してきたshibakawaならではの珍しいデータ、注目して欲しい数字、チェックポイントを適宜ご用意して、解説する。※則本、福山、戸村は割愛します。

今回は岡島豪郎、ウィーラー、村林一輝、塩見貴洋、レイ、則本昂大、福山博之、戸村健次の8選手分をお送りして、ファイナルとさせて頂きます。


岡島豪郎・・・そのバットで勝利の活路を切り開け! 新生楽天のトップバッター!

「1番打者としての起用を考えている。その確率は高くなってきたかな」。梨田監督の心を見事に射止めた新生楽天の1番打者は、背番号27になりそうだ。入団時から知る礒部打撃コーチも「西武の秋山のような安打製造機になってくれれば」と期待を寄せる。

対外戦14試合中7試合で1番スタメン起用され、残した成績は打率.348、出塁率.429(3月10日現在)。まだ分母が少なく、シーズン前の参考値ではあるが、自ら掲げた『出塁率4割』の目標をクリアしている。

プロ入り後、見事な右肩上がりの成長曲線を描いてきた。それだけに昨年の低迷は、ただ残念だ。

1年目は必死に白球にくらいついた。50m6秒1の俊足を活かし、内野安打割合は22.6%。球団史上で岡島しか達成していない新人選手サヨナラ打2本、そのうち1本も三塁線への内野安打で決めた。2年目はシーズン途中に自ら申し出ての外野手転向。1番・右翼52試合に先発出場し、OPS.790、出塁率.405で日本一に貢献した。3年目は右翼レギュラーとして活躍、主に1、3番を任され巧みな打撃で、チーム日本人選手2位の7本塁打と出塁率.353の両立に成功した。

今年は失われた成長曲線を取り戻し、哲朗に奪われたバレンタイコチョコの座を奪い返したい。

☆昨年の不振は、松井稼頭央の右翼コンバートの影響も大きい?!

昨年12月、東京・台場で開催された「SAJ2015 スポーツアナリティクスジャパン2015」。そこに登壇したチーム戦略室アドバイザーの山本一郎氏は、動画解析/映像分析の重要性が増すポストセイバーの時代は、従来以上に「関連性」に重みが増すだろうという話をされていた。(詳細は昨年12月21日配信メルマガVol.118参照)

「関連性」の具体例として紹介されていたのが、山本氏がデータ分析に携わっているオークランド・アスレチックスのプラトーン・システムだ。

◎良いところを組み合わせると、打率2割打者が3割打者に変身?!

【表の訂正】良いところどりしたときのトータルの打率が.600になっていますが誤りです。正しくは.300です。

上記図で示したように、対戦投手の左右で各々欠点を抱える打率2割の左右の打者2名を、相手投手の左右で上手く組み合わせて起用すれば、打率3割打者を創出することができるという話だった。

楽天の例で言えば、則本、福山、松井裕を挙げていたのを思い出す。

則本と松井裕は、他投手よりもファストボールの回転数が多く、打者の空振りを誘発できるホップする球を投げるタイプ。一方、福山は「ハエが止まるような球を投げる」「私でも打てそう」と山本氏は表現するほどの、球速に見合ったスピンよりも少ない回転数を投げる真っ垂れタイプ。打者は打ち損じてゴロになるケースが多い。この福山の特徴を「より活かす」には、則本の後に起用するのが望ましく、福山の後に松井裕を使うことで、松井裕の能力も「さらに引き立つ」ことになるという話をされていた。

今シーズン、当ブログもどこまで実施できるか?は分からないものの、「関連性」を意識して観戦していきたい。

その「関連性」に絡めて言うと、昨年の岡島のまさか絶不調も、「関連性」が大きかったのでは?と思うのだ。(もちろん、怪我の影響もあったのは間違いないが、どちらかというと「関連性」が大きかったでは?という話)

数日前の深夜、TL上に誰もいなくなったTwitterでツイートしたけど、

Aに言い渡された他部署への人事異動が、移動先でそれまで溌剌と頑張っていた若手Bの焦慮を誘い、Aの人事異動自体は成功に終わったものの、焦燥に苛まれたBは1年間持ち味を出せず自分を見失ったままだった。こういうケース、一般企業でも多いと思う。

これをイーグルスに当てはめると、A=松井稼、B=岡島になる。

前年は岡島が141試合でスタメン出場していた右翼の守備位置に松井稼が102試合で先発出場した。松井稼の右翼コンバート自体は、記録ラッシュが続くベテランの選手生命を維持するためにも良かったと言えるし、事実、ライトで松井稼は主に走者の進塁を良く防ぐ役割をこなしていた(※)。

※・・・昨年パリーグで右翼200回以上の守備に就いた選手10人中、走者の進塁を阻む肩力を表すARM値は、ソフトバンク・中村晃の+2.8に次ぐ+0.6を記録した。F岡、L脇谷、M角中、H福田、L木村、F杉谷、Bs糸井、M清田を上回る数字を見せた。

しかし、今、冷静に考えてみれば、このコンバートはどうだったのだろう?

前年レギュラーとして142試合でプレーし、数字もしっかり残し、これから多くの経験を積んで、さらなる成長曲線を描くことが予想された26歳から、大久保監督は、いきなり定位置を取り上げたのだ。結果、何が起きたか?というと、岡島は不安をどんどん増幅させていったのだ。首脳陣との信頼関係も大いに揺らいだはずだ。

このことは、土井麻由美さんの記事に詳しい。一部を引用する。

◎東北楽天ゴールデンイーグルス「チーム藤田」の始動は、今年も京都のわかさスタジアムから(Yahoo個人/土井麻由実2016年1月19日 11時30分配信)

---引用開始---

開幕は1軍で迎えたものの、ポジションが決まらなかったこともあり「やらなくちゃ」という焦りが芽生えた。そして不調により抹消。そこからも焦りばかりが大きく膨らんでいった。「早く上がらなきゃ、上がらなきゃ」と。とにかく自分自身を追い込んだ。5月後半には背中を痛め、実戦復帰まで2ヶ月を要した。しかし体は回復しても、打撃の復調には程遠かった。

そこから得たことは「“休む勇気”を覚える」ということだったという。気持ちばかり焦って、頑張り過ぎてむやみに追い込んだことが、裏目に出てしまったのだ。

---引用終了---

確かに競争相手は必要である。「レギュラー3年やって初めて一人前」とは良く言われることである。確かに、まだ3年レギュラーを張っていない岡島のさらなる成長を促し、慢心する暇を与えないためにもライバルの存在は必要だったと思う。

しかし、その乗り越えるべき壁が、海千山千の松井稼だったことが、岡島の焦りを増幅させた1つの要因かもしれないと思っている。あれだけの実績を日米で残してきたレジェンドだ。自分がどれだけ頑張ってアピールすれば、松井稼頭央さんに勝てるのだろうか・・・。普通に考えれば、ちょっとやそっとの活躍では「定位置」は戻ってこないだろう。私が岡島でも、そのように懊悩すると思う。あまりにも存在が大きすぎたのだ。

もし昨年、岡島が「定位置」をある程度の保障をされていたら、自信を持ってプレーし、2014年と同程度、あるいはそれ以上の数字を残しただろうと思うのだ。

これらのことを「関連性」の中で考えると、果たして、松井稼の右翼コンバートはチーム全体として見た時、プラスだったのかどうか...と考えてしまう。

◎松井稼、岡島のWAR推移

上記表に両人のWAR推移をまとめた。2014年は両人合計2.8のWARを記録した。しかし、2015年は松井稼は前年同推移の1.0ながらも、岡島が前年比2.5減の-0.6で、合計0.4に落ち込んでいる。

この選手総合評価指標を見てしまうと、腕組みせざるを得ないのだ。

では、松井稼の処遇をどうしたらよかったのか?と問われると、私の中でも明確な答えは出ていないが、レフト/DHで良かったのかもしれない。昨年一塁/左翼で出場することが多く、短期間で強烈な閃光を放った中川は、終わってみればWAR-0.2だったからだ。

誤解されるといけないので丁寧に書いておくが、昨年の松井稼のプレーは本当に素晴らしかったと思う。40歳を迎える年に外野手元年という難しさがありながらも、特に前半戦は素晴らしい働きだった。終わってみればチーム日本人選手最多10本塁打に聖澤に続く同2位14個の盗塁、打点も同2位の48を記録した。多くの選手が怪我で戦列を離れる中、最後まで確かな1軍戦力として貢献。その働きを目撃できた我々ファンは幸運だったと思う。

その思い前提で、岡島との「関連性」で考えたとき、どうだったのかな?ということを指摘したいのだ。

松井稼の頑張りが岡島の不振の引き金になったと言いたいわけではない。松井稼を前年岡島が立派に働いた右翼に据えた指揮官の起用方法に疑問符を投げかけているわけで、松井稼云々ということを言っているわけではないので、御了承頂きたい。

ベテランを活かし、若手のさらなる成長を促す。このことの難しさを再度確認することになった。「風が吹けば桶屋が儲かる」「バタフライ効果」と同じで、チーム運用も、良かれとやったことが思わぬ副作用をもたらす。今シーズンはこのことに例年以上に留意してみたいと思っている。

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