【惜別】 塩見貴洋
「15勝以上できるピッチャーだと思っています!」
球春到来からまもない2012年2月某日、テレビ朝日『報道ステーション』で工藤公康が、人なつこい笑顔を浮かべて断言していた。
同番組スポーツコメンテーターとして12球団キャンプ地を訪問、「これは!」と思った注目投手に話を訊く企画。この日は楽天の大卒2年目左腕にスポットが当てられていた。
同じ左腕で224勝、引退してまだ日の浅いレジェンドが注目したのは、完投勝利を飾ったルーキーイヤー2011年8/2西武戦での中村剛也との4番勝負だった。
統一球導入で極端な投高打低に針が振れるなか、ライオンズの主砲は48本、116打点で二冠王。そんな無双の強打者を全てインコースのクロスファイアで詰まらせ、遊ゴ、三邪飛、遊飛、左飛に抑えた。
塩見「困ったらインコースのストレートを選択します」
工藤「絶対的にこだわりたい?」
塩見「そうですね、こだわりたいですね」
あれから11年。通算150登板、876.1回、46勝57敗、防御率3.80。2歳下の辛島航と長らく左腕先発戦力を担った塩見貴洋が、戦力外通告を受けた。
報道によればトライアウトを受ける予定はなく、今後は検討中だという。直近3年2登板に終わった満身創痍をひろう奇特な球団は現われないと思われ、13年間の現役生活に別れを告げるものと思われる。
1988年生まれのハンカチ世代。あの黄金世代からプロ入りした投手55人中、勝利数、投球回は7位。左腕では大野雄大(中日)、吉川光夫(日本ハムほか)に続く3位だ。
11年前、工藤が「15勝以上できる!」と太鼓判を押したわりにはプロ1年目の9勝がキャリアハイ、規定投球回到達も2011年、2016年の2度のみ。極端な投高打低が解消された2013年以降は防御率4.05と4点台に悪化し、観る人によって微妙な成績に映るだろう。
ただ・・・(続く)
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