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【戦評】総じて中村に分が悪い森原事情と、連戦日程で光った石橋の好投~8/8●楽天2-3西武

※本稿は全文公開中。最後までお楽しみいただけます。

平石楽天、勝つべきゲームを落とす

9/6●E4-5L
9/7○E5-3L
9/8●E2-3L

この3連戦、楽天投手陣は健闘した。

とくに第2戦、第3戦だ。
西武の強力打線を3失点に止める働きぶりをみせてくれた。

西武は後半戦に入り、得点力が増している。
前半戦5.16だった1試合平均得点は、オールスター明けは5.79へ。

2年連続の優勝へ破壊力が増した山賊打線を相手に、後半戦の同一カードで『2試合以上・3失点以下』に抑えたのは、現時点ではこのカードの楽天投手陣だけなのだ。

それに、西武は3得点以下の成績がかんばしくない。
防御率リーグ最下位がネックとなり、下記のとおり、わずかに5勝なのだ。

◎2019年 パリーグ各球団 3得点以下の成績
ソフトバンク 17勝41敗4分、勝率.293
オリックス 19勝46敗2分、勝率.292
楽天 14勝44敗2分、勝率.241
日本ハム 13勝46敗2分、勝率.220
西武 5勝33敗、勝率.132
ロッテ 6勝45敗3分、勝率.118

ということを考えると、本戦の敗因は打線にある。

敗戦投手は三番手・森原。
6番・山川に決勝の二塁打を浴びてしまった。

しかし、森原の今季貢献を考えれば戦犯扱いは気の毒な話。
やはり、ブラッシュ31号2ランだけに終わり、3点目以上が遠かった打線に原因がある。

ヒットはよく打った。
マルチ安打は島内、銀次、ブラッシュ、辰己の4人が記録。
安打数は西武5本に対し、楽天はそれを上回る10本。

楽天打線が敵軍より5本以上ヒットを多く打ったゲームは17勝3敗1分で、本戦は勝って当然と言えるゲームだった。

それなのに負けたのは、楽天を襲う併殺禍だ。

本戦も1試合3併殺。

1回1死1塁、銀次が3-6-3のゲッツー。
2回1死2塁、フェルナンドの遊直で飛び出した二走ブラッシュが戻れずの併殺。
7回1死1塁、島内が6-4-3のゲッツー。

これで併殺打は12球団唯一の三桁到達104本になっている。

幸いにも同日3位・ロッテが6-9の逆転負け。
このため3位とのゲーム差は変わらずの0.5のままだったのが救いだ。

両軍のスタメン

西武=1番・秋山(中)、2番・源田(遊)、3番・森(捕)、4番・中村(三)、5番・栗山(指)、6番・外崎(二)、7番・山川(一)、8番・木村(右)、9番・金子侑(左)、先発・本田(右投)

楽天=1番・島内(左)、2番・渡辺佳(三)、3番・銀次(一)、4番・ブラッシュ(指)、5番・浅村(二)、6番・茂木(遊)、7番・フェルナンド(右)、8番・堀内(捕)、9番・辰己(中)、先発・石橋(右投)

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珍しい浅村のエラー

1回1死2,1塁、浅村の2塁悪送球が痛かった。

3番・森は1,2塁間深めの二ゴ。
浅村が球際良く追いつき、難しい体勢から身を翻した2塁送球がエラーになった。

ショートバウンド送球が2塁に滑り込む源田の足とちょうど重なるかたちに。
ベースカバーに入った茂木の捕球も難しくなった。
捕球しかけたミットが源田のスライディングにもっていかれ、完全捕球できずにこぼしたのだ。

とても難しい判断だと思う。
しかし、もし1塁で確実にアウトを取っていたら、続く4番・中村の2点二塁打は最少失点に止めることができたことを考えれば、送球先は1塁だったのかな?とも感じる。

3位浮上へ負けられない終盤の戦い。
チャレンジしにいったプレーを厳しく批判することは難しく、やむを得なかった部分も大きい。

一方、試合前に解説・岩崎達郎さんが「細かいミスはなるべくなくしてほしいですね」と言ったように、些細なミスが命取りになるのも、順位争いが正念場を迎える終盤戦だ。

それにしても、浅村のエラーは珍しかった。

今年、楽天二塁手のエラーは昨年の9個を下まわる6個と少ない。
浅村が本戦含めてエラーを5個に抑えていることが大きいのだ。

◎浅村栄斗 2019年 エラー記録

全て送球ミス。
内野手にありがちなファンブルや後逸がゼロなのも珍しい。
その送球ミスも大暴投は1度もなく、微妙なズレによるものなのだ。

JB、クレバーな31号2ラン

この日、楽天生命パークは珍しく強風に見舞われていた。

接近中の台風15号の影響だったのか、風速6~7m。
時節、マウンド上の投手のユニフォームも風でたなびくほどだった。

ちょうど左翼方向は逆風になった。

この逆風に救われたのが先発・石橋。

1回2失点してなおも2死2塁、5番・外崎の左飛はホームラン級の快飛球だった。
しかし、逆風に押し戻されフェンスギリギリで失速。
風の恩恵を受けて被弾を回避することができた。

一方、この逆風の罠にハマったのも、楽天打線。

西武打線の左飛が3本だったのに対し、楽天打線は5本も。

とくに2点を追う4回が顕著だった。
4番・ブラッシュ、5番・浅村、6番・茂木が仲良く揃って左飛で凡退。
左翼方向に飛球を打ち上げた場合、ポテン性の詰まったフライやライナー性でない限りはノーチャンスと思われた。

6回のブラッシュ31号2ランは、逆風の左翼方向を回避した見事な一撃になった。

実況の中田浩光アナが「8月後半に入ってから打球がまた上がってきたジャバリ・ブラッシュです」と言い終わるやいなやのことだった。

二番手・平良の153キロがシュート回転して甘く入ってきたところを一閃。
行き先は右翼スタンド、三井住友銀行の外野広告を超えて着弾する31号2ランは、前の打席の反省を踏まえた上でのクレバーなバッティングのように見えた。
NPBでの順応性をよくあらわすホームランのように僕には思えた。

ここまで30本の打球方向は

左翼 14
左中間 9
中堅 5
右中間 1
右翼 1

圧倒的にひっぱり方向の左翼・左中間が多く、右方向の一発は珍しい。

また、この31号、打球角度19度のライナー一直線だった。
当方集計ではJB一発の平均角度は29.5度だったから、それを10度も下まわる低弾道になった。

打球方向も打球角度も珍しいJBの一発が、貴重な場面で飛び出す。
そういうシーンになった。

森原は総じて中村に分が悪かった

楽天は7回途中に石橋が走者を残して降板すると、二番手ブセニッツが火消しに成功。
翌8回は三番手・森原が登板した。

しかし、先頭の3番・森に初球アウトコース速球を狙撃されて左安。
無死1塁、4番・中村に3-1から四球を与え、一走・森を得点圏に送り込んでしまったことが、その後の山川の適時二塁打につながっていった。

4番・中村の四球はコースの際どいところを狙いすぎるあまりに出したもの。

長打警戒の場面で慎重投球になるのは仕方ない部分もあった。

とくに中村は8月も9月もOPS10割超え。
8月以降パリーグで最も当たっている打者だと思う。

それに、森原vs中村の今季対戦成績は、10打数4安打1打点、1三塁打、2三振。

中村剛也(西武)には5/29●E1-4Lにタイムリーを許し、中村奨吾(ロッテ)には軽打2本を弾き返され、中村悠平(ヤクルト)にも交流戦で左翼フェンス直撃のスリーベースを浴びており、今季はなぜだか総じて中村に分が悪いという事情もあった。

それにしても与四球率2.50と四球少なく、攻めの投球が持ち味の森原がボール先行3-0にしてしまうケースは珍しい。

今季これで5度目になった。
そのうち4度が西武戦なのだ。

森原も強打西武には気をつかっている様子がうかがえる。

それもそのはず。
例年、森原の西武戦防御率が悪い。

2017年 14.73
2018年 18.00
2019年 4.50

今年は二桁の汚名返上し4.50だが、これとて対戦カード別でワーストになっている。

それに、今季の森原は2連投・3連投時の成績がかんばしくない。

下記表のとおり、防御率5.54。
13回を投げて投球回を上回るヒット14本を浴びている。

原因は前日の疲労、スタミナ不足もあるだろう。
と同時に、2連投・3連投になるときは同一カードの場合が多い。
前日対戦した打者にリベンジされている可能性もありそうだ。

◎2019年 森原康平 2連投以上時の投手成績

黄色網掛けのみ3連投

健闘光る石橋のゲームメイク

これで、3週連続の6連戦日程(最後7連戦)は、

1週目 3勝3敗
2週目 4勝2敗
3週目 1勝5敗
合計 8勝10敗

1試合を残して負け越しが決まった。

1試合平均得点が

1週目 5.54
2週目 3.83
3週目 2.67

と見事な右肩下がりなのも、連戦日程による野手陣の疲労、チーム全体の体力不足と言えそうだ。

そのなか、光る活躍をみせた1人が、本戦の先発・石原。

7回途中に走者を残すかたちで降板したが、QSをマーク。

QS率33.3の3週連続の6連戦日程(最後7連戦)。
そのなか、チーム唯一3度のQSを記録したのが、石橋。

そのうち2度は西武戦での達成を考えると、その価値はさらに大きい。【終】

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