【試合評】芸は身を助く。宮城県在住30代、岸孝之さんの場合~9/4○楽天8-5西武

運命の分かれ道

6回3失点のQSになるのか、5失点以上の炎上で自軍ブルペンを慌てさせるQS未達を余儀なくされるのか──
本戦の先発・岸孝之の「運命の分かれ道」は6回にあった。

戦況は楽天打線が序盤から西武先発・今井達也を攻略。
3回には打者一巡11人を送り込む猛攻をみせ、4本の適時打が飛び出すなど一挙5得点。イーグルスが1イニングに5点以上をあげたのは今季7度目というビッグイニングを演出した。

翌4回に2点追加して今井をKO。5回にも後続から加点した楽天は前半戦だけで8-1と大量リードし、主導権をガッチリ握る。
「運命の分岐点」の6回には、点差が大きく開いたなかで突入した。

◎岸孝之 球種別の投球結果

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6回、打者25人、球数103、被安打5、被本塁打0、奪三振5、与四球2、与死球0、失点3、自責点3。

しかしこの回、相手打線が3巡目に突入したこともあるのか、岸が捉えられ大ピンチを背負った。

先頭の1番・源田壮亮の中前快打を皮切りに、左安、四球とつながれて無死満塁。自慢の快速球がことごとく弾き返されていく。

NPB記録になる通算22本の満塁弾を誇る4番・中村剛也にも真っ直ぐを弾き返され、適時単打だけで済んだ点はホッとしたものの、1点返されてなおも無死満塁。4点差に詰められ、バッターボックスには6戦連続ヒット中の5番・外崎修汰を迎えていた。

「分岐点」はその初球に訪れた──

火を噴く超絶ライナーが岸めがけて鋭く飛来。
当方による手元の計測と計算では時速150キロ以上は悠に出ていたと思われる、中前行きを覚悟するアップルパンチだった。

ところがである。
このヒット性を岸が逆シングルで、なっなんと!好捕!!!

もし抜ければ1人は必ず生還。そしてなおもノーアウトでピンチは続くという難しい局面になっていた。「投手は9人目の野手」とは良く言ったもので、自らの好フィールディングで自らを助く大きなプレーになった。

芸は身を助く

2018年にゴールデングラブ賞の受賞歴もある岸は、このようなライナー処理がズバ抜けて上手い投手だと思う。

昨年も2本の投直を処理している。

1本目は7/11ソフトバンク戦の2回2死2,1塁。
こともあろうか、あの柳田悠岐の当たりだった。

2本目は7/19西武戦、1回に発生した源田の投直。

芯を食ったロケットが岸の真正面に飛んだ。これを映画『マトリックス』のネオばりに体勢を沈みこませて青グラブで華麗にキャッチ! 解説・野口寿浩さんが「もし当たっていたらと考えると大変なことですからね」とコメントするほどの危険な打球を好捕してみせた。

岸が移籍してきた2017年以降~本戦まで、楽天投手陣がアウトにした投直は合計34本を記録している。

そのうち、最多処理数は下記のとおり岸がダントツに多い。まさに「芸は身を助く」で7勝目をつかんだと言えそうだ。

◎2017年以降 投直の処理数ランキング
9本・・・岸孝之
4本・・・則本昂大
2本・・・ブセニッツ、牧田和久、福井優也、塩見貴洋、辛島航、近藤弘樹
1本・・・藤平尚真、久保裕也、福山博之、石橋良太、高梨雄平、森原康平、青山浩二、美馬学、田中将大

見抜いているアグーの弱点

6回3失点にまとめた岸の最後の難関は、6回2死2,1塁、7番・山川穂高との対決だった。一発出ればたちまち2点差という局面で、2018・2019年のホームランキングと対峙している。

息詰まるフルカウント9球勝負だった。

初球カーブがはずれて1-0になった後、2球目・3球目ともに真っ直ぐ。
映像で見る限り甘く入ったようにみえるが、どすこいは手を出さず1-2と追い込むことに成功した。

解説・高橋雅裕さんによると、山川はストレートはカットでいいという考えで遅い球を待っているんじゃないか、という見立てだった。

結果球はその遅い球。114キロのカーブだった。
これを打ち上げさせてイージーな左飛に退けたのが、この日の岸の最後の大仕事になった。

山川の2打席目も・・・(続く)

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