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モズの高鳴き秋の風

まだ残暑が残る空に、錆びた歯車が鳴るような「ギチギチギチ……」という甲高い声が響いています。
目を上げると、電線にとまった一羽のモズが、くるくると尾を振りながら入道雲に向かって鳴いていました。
漢字で「百舌鳥」とも書かれるモズは、他の野鳥の鳴き声を取り込んだ複雑な節回しのさえずりも持ちますが、繁殖期の終わった秋からは前述の「高鳴き」と呼ばれる鳴き方が主です。早春に平野部で繁殖し、夏を高原で過ごし、初秋に再び平野部に降りてきたモズが、ひと冬を過ごすなわばりを宣言する際に目立つ場所で高鳴きを始めることから、百舌鳥は俳句の世界では秋の季語にもなっています。

モズといえば獲物を枝などに突き刺す「早贄(はやにえ)」も有名です。
小動物食のモズは、越冬期間中の補助栄養食としてはやにえを利用います。はやにえを多く作り、多く食べたオスほど、翌春の繁殖活動が活発になるという研究結果があります。
モズにはその年の降雪量を予想する能力があるという俗説も人気があり、北陸地方では早贄の高さでその年の積雪量を占うこともしばしば行われます。

枯れた灰茶色の百舌鳥が錆びた高鳴きを上げ、干乾びた早贄を作るたびに、夏の大気はその湿気を奪われ、澄み切った秋空が近づいてくるように感じます。

草茎を失ふ百舌鳥の高音かな    与謝野蕪村
レール果てなく百舌鳥のみが鋭し  種田山頭火

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