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君が去りし祝日


孤独な夜に目を閉じれば
闇は白んでいく


苦い薬を一息で飲み干せば
きっと良くなるだろう

分かりきった解決策ではなくて

些細な、小さな喜びを時間内に積み重ねた日

苦しくても暫くは大丈夫だと

喧騒の街への電車に乗り込んでいく君よ


激痛を待ち構える朝に

交わしきれない刃を受け止める昼に

落し物を数える夜に


図らずも戻り行く君よ



会えなくなるその日までに

君は世界の瞬きを忘れてしまわないだろうか

世界を愛する事をやめてしまわないだろうか

世界で起こる奇跡を笑ってしまわないだろうか


ただ、それだけが心配で
ただ、これだけを覚えていて

仕事帰りの電車で
本を読む君は素敵だ


虫をティッシュにくるんで
外へ逃がす君は素敵だ


優しくなれなくて
1人涙する君は素敵だ


気付いて居るだろうか 君は素敵だ。



せめて、時が経ったら

君が長い間荷造りした鞄を持って

街を出て行って、苦しくても幸せだと

今度は笑って言って。

暖かい場所に居て

優しい音に包まれて

他人に優しくできるだけの愛を

誰からともなく受け取って居て欲しい。


春一番が好きな人の頬に触れるように

虫が種を運ぶように

それくらいに奇跡めいた当たり前を

君が決して 無くさないように。



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