書いたことすら忘れていた詩
「こんにちは、おチビちゃん。こんなところに迷い込んで災難だったね」
「え?ここはどこなの?」
「そんなに震えなくても大丈夫。知ってるはずだよ、君を覚えてる。」
「僕を?」
「そうさ、何度もここへ来てるじゃないか」
「きっと人違いだ」
「いつもそう言うね、懲りない君だ」
「本当に知らないよ。早く帰りたいんだ、道を教えて。」
「どこへの?」
「どこって、元居た場所さ」
「ならどこへも行く必要はないね」
「どうして」
「私にとっては君の元いた場所はここさ」
「それは君にとってだろ」
「そんなもんさ、もう来てはいけないよ。」
彼は去って行った。
自分が居るべき場所を探す途中で、迷い込んだ小さな森は
僕が僕のままでいる 最後のチャンスだったのかもしれない。
そんな思いも後の祭りで
気付けばまた、僕は彷徨っている。
あの森はそれから1度も見つけられない。
彼が僕をおチビちゃんと呼んだのも
何度も来ていると言っていた理由も
なんとなく気付いて、はっきりと気付かないふりをした。
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