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【イベント開催レポート】 Engineering Mix Session vol.3 ~開発責任者が語る 市場×事業×組織 今とこれから~

こんにちは、E3編集部です。先日開催した「Engineering Mix Session vol3 ~開発責任者が語る 市場×事業×組織 今とこれから~」のイベントレポートをお届けいたします!

開催概要

日時:3/18(木) 20:00~22:00
場所:ZOOM / clubhouse
内容:住居というレガシーな領域で、次の文化を創ることに挑む二社。開発責任者であるお二人をお招きし、エンジニアの視点で「市場×事業×組織」についてお話を伺いました。

登壇企業紹介

▼株式会社 ツクルバ(cowcamoプラットフォーム事業部エンジニアリング責任者 野沢康則 氏)

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<事業内容>
・「cowcamo(カウカモ)」の企画・開発・運営
・不動産企画デザイン(不動産ソリューション・ワークプレイス運営・空間設計 / コンサルティング)

▼ルームクリップ 株式会社(CTO 平山知宏 氏)

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<事業内容>
・お部屋写真SNS「RoomClip」の開発・運営

パネルディスカッション

※内容は一部抜粋となっております。

編集部:本日はどうぞよろしくお願いします。まず登壇パートを終えてのご感想をいただけますか?

ルームクリップ株式会社 平山氏:
同じ領域で、共感すること甚だしいなと思いました。その中でも、ツクルバさんはオペレーションがオフラインにまで踏み込んでDXされてたり、それが資産となってオペレーションシステムがユニークな形になっているのが、うちと違って面白いと思いました。

業務オペレーションを作っていくというビジネスラインは常に頭の片隅にはあるのですが、それを形にされていて素晴らしいですね。

株式会社ツクルバ 野沢氏:
理想の住空間を妄想して、作りあげ、さらにその理想に近しいものがあるのか検索していく体験、そして検索した先に出てきた「これいいな」「私もこうなりたい」みたいな欲求から、実際の商品に連携して提案していくというような、ユーザー体験の考え方が似ているなというのをすごく感じました。

それを作るために裏側のシステムが複雑に絡み合ってるのですが、見た目以上に裏側が肝になってくるのは住環境や不動産という領域だからだと思います。扱う変数が多いゆえにいろんなテーブル構造がどうしても複雑になるんですよね。

扱う情報量が一つの商品に対して多いからこそ、それを支えるためにバックエンドの仕組みに力を入れているとか、体験を支えるための検索に力を割いているとか、大事にしているものがちゃんとあって「ユーザー体験を支えるためにどんなシステムが必要か」をちゃんと考えていらっしゃる点にすごく共感しました。

技術基盤への投資のあり方について

編集部:技術トレンドが短期間で移り変わっていく中で、技術基盤への投資のあり方についてどう考えているか教えてください。

ルームクリップ株式会社 平山氏:一般にベーシックとされる技術トレンドは、1年ぐらいでブラッシュアップされていくと思います。そこの流行り廃りをキャッチアップしていくというのはもちろん大事ですが、一方で我々の事業ドメインにおいて本当に必要か?というのを慎重に検討していくべきでもあると思っています。

よって、技術基盤をオリジナルで作りたいわけでは決してないのですが、我々のやっていることはコアに近づけば近づくほどユニークになるので、知恵を絞って我々に最適かつフィットするものを作り込む、さらにそれを延々とメンテナンスするのだという意識を持ち続けることが、基盤づくりにおいてもっとも大事かなと思っています。また、エンジニア以外のエキスパートの知恵をどう自分の中に沈殿させて、システムに反映させていくかという点も意識しているところではありますね。

株式会社ツクルバ 野沢氏:
技術に対する投資というのは、エンジニアに働いてもらうなかでも非機能要求に近しい問題の扱い方だと思っています。機能開発ではない、非機能開発にどれくらいコストをかけていくべきかについて、話し合いはどのようにされていますか?

ルームクリップ株式会社 平山氏:
これは非常に難しくて、正直今現場で働いているエンジニアとはそこまで一緒に考え抜けていないとも思っています。ただ、これはまさにBS的な発想というか、要はみなさんのアウトプットをどう資産にするかというジャッジでもありますよね。

結構そこはエンジニアリングを経験した人間が経営に近しいということの利点だと思っています。営業出身だとPL脳になってしまう、エクイティだけを考えているとすべて財務になってしまう中で、エンジニアとしてきちんと技術的価値を主張し続ける感じですね。

株式会社ツクルバ 野沢氏:
やっぱりエンジニアっていいものを作りたいですし、自分の作ったシステムが負債になっていく姿は好きじゃない。技術の移り変わりもあって、そもそも2年スパンくらいで運用したら、もっと新しいモダンなものに乗せ換えようかみたいな話しも出てくる中で、どういった考え方でそこの非機能欲求への工数の使い方を考えてるかは結構大事だなと思っています。平山さんは、技術的資産を大事にしたいからそこに工数をかけていく、と説得していくような姿勢が今の言葉から見て取れてとても素敵だと思いました。

ルームクリップ株式会社 平山氏:
ありがとうございます。一方で、僕は創業者であり株主でもあるのでBS的発想を最優先にできますが、被雇用者としてのエンジニアだったら自身のキャリアがとても大事なのは当たり前だと思っています。永遠にphpやjQueryを書いているわけにもいかない(笑)。

その人のキャリアとして、最新の技術を採択していかなければならないところも当然ある中で、バランスを取るのが重要だし難しいですよね。当然従業員も大事なステークホルダーなので、ステークホルダーみんなが笑顔になるように調整するというのが一番マネジメントとして大事な仕事だと思っています。だから一言でどれが正解だとは言えないですよね、きっと。

株式会社ツクルバ 野沢氏:
スライドの中でも、価値を届ける対象としてTo E、つまり従業員への矢印がちゃんと出ているのが印象的でした。

組織の階層化と役割分担の設計について

ルームクリップ株式会社 平山氏:
なかなか難しいですけどね。まさにそれでいうと、ツクルバさんは上場もされていますし、管理の必要性という視点の上でも業務的に最適な階層化がだんだん始まってるかと思います。役割分担は必要だと思う一方で、個人を矮小化してしまうというか、システマティックにしてしまう側面もあると思っています。やっぱり役割を超えてみんな動いてほしいと思うシーンもある中で悩んでいるのですが、そのへんはどう設計されましたか?

株式会社ツクルバ 野沢氏:
そうですね、やはりシステムが大きくなってきた中で、全部のシステム領域を見れるだけの時間がなくなってきたことから、役割分担が必要になってきました。そうなってくると、影響範囲を区切って、あなたのチームはここまでの担当だからここに対して責任を負ってね、というアサインの仕方になります。

そうすると全体でひとつのチームといった構造だったものがまず二つに分れて、しかし基盤とするシステムが同じなので、二つのチームを同期する場所もどうしても必要になってきた。そうしてまた全員で話していたら元と同じになってしまうので、開発チームの代表者としてのヘッドと、それぞれのチームのリーダーという構造に分かれました。そうしてヘッドが一番上を見て、リーダーが各チームを見るという感じのやんわりとした階層になりました。開発ラインとしてどう追いかけたいかの方針がチームの構造になっているという感じですね。

ルームクリップ株式会社 平山氏:
めちゃくちゃいいですね。

株式会社ツクルバ 野沢氏:
ただ、現場と上をつなぐのがとっても難しいなと思っているので、やっぱりプレイングマネージャーになってもらえる人は貴重ですよね。

ルームクリップ株式会社 平山氏:
やっぱりこっちが考えている枠組みに人が合わせに行くのはどこか無理を感じるし、素朴にやっていたメンバーたちをそのまま組織化するのというのもなかなか難しくて。

組織って完全に歩み寄りだと思っているんですね。お互いのやりたいこととかを理解しあって、第三の選択肢を作りましょうみたいな、そういう世界観。ただ往々にして、やっぱり現場的な実態に近いものからスタートして、きちんとしたものに仕上げる方がいいなと直感としては思っていて、それっぽいことをされてるんじゃないかなと単純に羨ましく思いました。

住環境だからこその難しさややりがい

編集部:ありがとうございます。「住環境」だからこそ感じる難しさややりがいは何ですか?

株式会社ツクルバ 野沢氏:
先ほども言った「住環境は項目が多い」という点についてですが、見た目の話でいえばそれをどうスマートに見せて、必要な情報を必要な時に出せるかがとても大事になってきます。

ですので、デザイナーとフロントエンドとUI/UXデザイナーが、情報量が多い中でどうコンパクトに見せるのか、どう伝えたいものを伝えたいように見せるのかが、腕の見せ所だなと思っています。

また、どうしてもデータベースが複雑になりがちなので、それをどう正規化するのか、処理のパターンによってはあえて非正規化するのか、みたいなところの駆け引きを含めたテーブル設計は、バックエンドエンジニアの腕の見せ所ですね。

ルームクリップ株式会社 平山氏:
僕らのサービスが複雑である一番の要因は、やっぱり我々のサービスが喚起されるシーンが多様だからだと思うんです。生活ってかなり様々なシーンがあって、朝起きてから夜寝るまで、アプリを開かれるニーズがシーンによって全然違うんですね。

同じ人でも全然違うので、簡単にユーザーのグルーピングもできない。かといっていわゆる幕の内弁当のようなシンプルなインターフェイスを用意しても、みんなにとって使いづらいものになってしまってビジネスとしてエッジが立たない。難しさでも、面白さでもありますね。

レガシーな領域に「新しい文化を創る」とは

編集部:ありがとうございます。次に、今回の会の趣旨でもある「文化を創る」ということに対してのお考えをお聞きしてもよいですか?

ルームクリップ株式会社 平山氏:
文化って、最後には記録されたり、残されるものだと思っているんです。文章とか写真とか、要は博物館とかに表れているものが、わりかし文化に近いかなぁと勝手に思っています。

ただ、人々の生活って、例えば1940年代の人の部屋は残っていないんですよね。でも、10年前の人々の暮らしがRoomClipの中には写真で残っているんですよ。仮に100年続けたら、100年前の人の部屋がデータとして見れる。これもう「住みソニアン博物館」だろという風に思ってるんですね(笑)

そこに関心を持ってる未来があるんだとすれば、それは文化だという風に、ロマンチックかもしれませんが思っていたりします。

株式会社ツクルバ 野沢氏:
僕は文化というのは、本当に少しずつ少しずつ出来上がっていくものだと思っています。課題を見つけてそれに取り組んで、出てきた課題を解き続けたいという思いの中でいろんな働きをした先に、ちょっとずつそれに共感してくれる人がついてきて、大きなサークルみたいなものができあがる。そして、そこにさらに周りの人が集まってくると思っているんです。

まさに裸踊りのような、小さなムーブメントを絶やさずに続けながら、ありたいものを作ったあかつきに、それが文化になっていくんじゃないか。そんなことを考えながら、日々の向かっていくところと、やるべきタスクに取り組んでいる感じですね。

さいごに

編集部:ありがとうございます。こういったビジョンのもとで、現在の課題感だったり、こういう人と働きたいなどがあれば、ぜひ最後にお聞きしたいです。

ルームクリップ株式会社 平山氏:
組織や不確実なプロダクトをタフに解決していくことに楽しみを見出せる人でしょうか。大前提のスキルはもちろん必要ですが、そういうタイプの人で成長する気概さえあれば、そこに時間やお金を投資することは可能だと思うので、基本的にはそういうマインドをもっている人と働きたいですね。

ただ、全方位で困ってるので、フロントもバックエンドもインフラも、どしどし応募してきてくださいって感じです(笑)。

株式会社ツクルバ 野沢氏:
課題感みたいなのを付け加えてお話しすると、数年にわたって積み重ねてきたシステムなので、中規模のアプリケーションによくある課題感みたいなのがすごく生まれてきているタイミングと思っています。

例えば、アカウントの体系まわりや、ロール権限の管理をちゃんとしないといけなかったり、複雑なシステムの境界があいまいになっているなどが課題感としてあります。あとは、事業成長にともなって、いろんなところのスケーラビリティもあげていかなければならない。

よって、事業成長を支えながら、クライアントアプリや、フロントアプリ、バックエンドも、全方位で当たり前に動いているものの品質を高く保っていく設計を考えて、リードしてくれるようなメンバーに来て欲しいなと思ってます。

▼採用情報ページ

編集部:ありがとうございました。参加者の皆様にとっても、本イベントが何かのきっかけになりましたら幸いです。改めて、本日は誠にありがとうございました。

参加者の声

・エンジニアとビジネス視点の変数の多さをどう解釈して作っているかが印象的でした。
・両社のビジネスモデルの考え方が勉強になりました。
・住環境に関するソリューションがあることにあまり意識がなかったため、全般的に勉強させていただきました。
・ソフトウェアについてBSとPLで説明されていたところが参考になるなと思いました。
・技術的負債を可視化しようとしている点が印象に残りました。

他にもたくさんの感想をいただきました。
ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました!

▼最新のイベント情報等は、公式Twitterで発信してまいります。


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