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第4講(後編) シャトルが打つ1回1回の重み

こんにちは。遠州産地の学校事務局です。
遠州産地の学校 第4講レポート(後編)です。
高密度でありながらふっくらとした風合いの生地を得意とする古橋織布有限会社にて、シャトル織機について学びました。今回、レポートを担当したのは4月に古橋織布有限会社に入社し、もっと遠州産地のことを知りたいと産地の学校に参加した斎藤さん。講義の様子だけでなく、実際に働くからこその思いなども綴ってくださいました。前編・後編の2つに分けてお送りします。(前編:座学と実技、後編:工場見学)
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座学と実技で織物の仕組みを知った後は、いよいよ工場見学です。
工場に入った途端みなさんシャトル織機に釘付けでした。

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力強くよこ糸が往復する姿はどうしても見入ってしまいますよね。
最初はとても大きな音に圧倒してしまうのですが、リズミカルに鳴るシャトルの音がなんだかいいなと思ってしまうので不思議です。

またシャトル織機の特徴のひとつで綿ぼこりがたくさん積もります。それが雪のように見えるのですよね。

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綿埃

講義の中で出てきた、タペットとはこの子のことです。
回転することでカムに接触して綜絖を上下させてくれます。

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ちょうどレピア織機も稼働していたので、シャトル織機との違いも見ることができました。主に織機のメンテナンスを見てくださっている西井さん。織機の仕組みに詳しいのでとても頼りになる存在です。レピア織機の設定を入念に行っています。

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見学中に1台の織機が止まりました。
止まった原因はたて糸切れでしたが、そこで浜田さんのひと声「齋藤さん説明お願いします」。無茶ぶり!と思いつつも皆さんの前でたて糸切れを直させていただきました。
古橋社長の娘さん、佳織理さんから道具を借りて、まずはどの位置のたて糸が切れたのかを探します。そしてドロッパー、綜絖(あそび)へ通し、最後に筬に通して織機を動かします。もちろん、切れた糸を結ぶのは前半で実践した機結び。
浜田さんが私の動きに合わせて皆さんに説明してくださいました。

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織機がなぜ止まったのかを見極めるのには経験が必要です。先輩方の手助けもあって少しずつわかってきた部分もありますが、織機のことをしっかりと知るためにはまだまだ時間がかかりそうです。

工場内をじっくり見たところで次は織る前の準備工程の経通し(へとおし)の作業を見せていただきました。

経通しがしたいと古橋織布に入社したという府川さんが、工程を説明してくださいました。
糸の一本一本をドロッパー、綜絖、筬という部品にそれぞれ通してゆきます。
単純作業とのことですが糸の本数を考えたら気の遠くなる作業です。
見学当日の経糸は古橋織布で2番目に細い糸が7200本とのことでした。
なぜ経通しをしてみたいと思ったのか、府川さんへ聞いてみたところ、糸が規則正しく並んでいるのがとても綺麗だったから。そして、糸を触っている時間が好きとのことで、府川さんのものづくりへの想いがとても心に響きました。

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経通しやってみたい人!ということで受講生も体験。
道具の扱い方に試行錯誤していました。やはりコツがいるようです。
私もいつか体験してみたいです。

へとおし体験

その後はショールームへ移動。
現在ショールームになっている場所は、昔宿舎として使っていたそうです。
改装を経て生まれ変わったというショールーム、壁際に並べられた生地たちに皆さん夢中でした。
たくさんある生地たちにはそれぞれに品番があり、営業担当の浜田さんと佳織理さんはすべて記憶しています。
品番を伝えるだけでどの生地か通じるところがとてもかっこいいです。

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浜田さんは、さまざまな加工を紹介してくださいました。
その中の一つで、紙のような質感の布は「ロータス加工」を施しているそうです。ロータス加工の由来は「蝋(ろう)」を「足す」から来ているそうで、加工会社さんのユニークさが伺えます。

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また浜田さんからの豆知識で。
昔の織機はユニフルという自動でよこ糸をチェンジしてくれる機械が付いていなかったらしく、織子(おりこ)さんが緯糸の変わる直前に織機を止め、手作業でよこ糸の交換をしていたみたいです。
ベテランさんでも4台見るのがやっとだということで、昔の織子さんはもっと忙しい日々を送っていたということですね。知ることが出来てよかったです。

ゆにふる

今年の4月より入社し3ヶ月が経ちましたが、未だに糸を織ってゆくと布になるということが私にはすごいものだと思うのです。
あの細い糸たちが集まることでこんなにも大きな1枚へと変貌します。
そして身に纏う服になったり、モノを持ち運ぶための道具になったり、ゆったり眠る時のお供になったりと私たちの生活には欠かせないものになってゆくのです。

きれいに織られてゆく布たちを、製造の過程で見るのはもちろん好きなのですが、普段は欠点になってしまうような少し間違いがある布も私は好きです。

製品として出すことはできなかったとしても、それぞれに個性があっていいなと思っております。それもシャトルが打つ1回1回の重みに出会えたからだと思います。
こだわりを持った先輩方と共に布と向き合い、これからも自分のできることを探していけたら嬉しいです。

次回はジャガード織機の仕組みを学びに
有限会社エム・村松ジャガード織物さんへ訪問します。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

古橋織布有限会社 齋藤


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