見出し画像

マニラ旅行したら色々大変な目に遭った 後編

後編は旅のメイン、強盗に遭った件について。

出会いはマニラのコーストライン


事案の始まりは2日目の夕方。
夫と2人でマニラのコーストラインを歩いていたら、ローカルっぽい4人組に話しかけられた。
50代後半~60代のおじさん・おばさんと20-30代の女性2人。

最初に話しかけてきたのはふくよかなおばさんで、徳島でフィリピン料理店のシェフをしていた多少日本語が喋れる64歳。マカティ(マニラの高級エリア)でレストランを持ち、シェフをしているという。
歩きながら積極的に話しかけてくるのはこのおばさん。若い女性2人はつかず離れずでたまに話に加わってくるくらい。その後後ろを歩いていたおじさんも加わってきて、兄弟が日本人と結婚したため2回ほど日本に行ったことがあるという話で盛り上がる。札幌と東京にいったことがあるけど、とても寒い!とても高い!を繰り返していた。
おじさんおばさんは日本語多少喋れるし、そのうち、我々が英語を喋れると理解したためか若い女性2人も加わってきた。ガツガツ来るわけではなく、とても自然。フレンドリーに話しかけただけですよ、という感じ。

そのうち、おばさんが自分のレストランはマカティでホテルに近いし、今日はおばさんの誕生日なので一緒にご飯を食べに行こう!と誘ってきた。この時点で警戒心が緩んでおり、まあマカティのレストランというし大丈夫だろうと思ってOKした。
4人乗りの所を無理矢理6人乗りさせてくれるタクシーを捕まえてレストランへ。車内では楽しくおしゃべりしつつ、店へ向かった。

この4人組、おばさん、おじさん、そして若い女性2人を、一方をウタウマだったのでセリーヌディオン、もう一方を赤い服を着ていたので赤服さんとする。(名前は言っていたが忘れたし偽名だったろう)

ファーストラウンド ‐ レストラン

着いてみると、日本でいうところの汚い町の安い定食屋という感じで周囲もここマカティ?という雰囲気。地図で見るとギリギリマカティの右上端に引っかかるか、という立地。まあギリマカティなのか、と思う。
なんてどローカル、こんなところ地元民がいないと入らないなあ、地元民の生活に触れる感じでワクワクするなあ、と店に入ってみると、壁には「HAPPY BIRTHDAY」というバルーンが飾られており、おばさんの誕生日であるという話に信憑性が増す。

お店はNobu J.(https://www.facebook.com/nobuj70/
壁には日本絵が飾られており、親しみがわく。

オーナーのこれまたふくよかなおばさんは、サイズが1/2くらいの若いときにエンターテイナー資格で日本にいたことがあると言い、確かにとても日本語が上手。池袋・錦糸町等を半年ごとに転々として働いていたとのこと。
*事件後に接触した印象だと、このおばさんは4人組と無関係(たぶん)

誕生パーティーメニューは豚肉・野菜のライスヌードル炒めとフライドチキンとビール。
誕生日にはヌードルを食べてロングライフを願う習慣があるそうだ。
ビールはあとで確認したらアルコール度数8%の高アルタイプ。
ちなみに一緒に氷が出てきてビールに入れて飲むのがフィリピンスタイル。

フライドチキン、美味しかった。やっぱフィリピンは揚げ物が上手。

右上が赤服さん。フードをかぶり、できる限りマスクで顔を覆っていた。

フィリピンだけあってカラオケセットももちろんあり、セリーヌディオンがウタウマで、宇多田ヒカル First Love、セリーヌディオン My Heart Will Go Onを熱唱。知っている歌もないけど私は断ったけど、My Heart Will Go Onのサビの一部でマイクを向けてきた。
一緒に歌ってくれたので、気持ち良く歌ってしまった。
フィリピンではカップルにはそれぞれのテーマソングなるものがあるらしく、あんたたちのカップルソングは何だときかれた。なんだろう。

そろそろ帰るかと考えていたら、1時間だけダンスしに行こうと誘われる。
この時点で夫は「お金がないから、と断ろうか」と言っていたのだが、私は「行こうよ」スタンスで、そのままタクシーでダンスできるという場所へ。店から出て6人乗せてくれるタクシーをどうにかみつけて移動。

コーストラインからレストランに移動するときもそうだったが、6人乗りはやはりまずいのか、またはマズイ空気を察しているのか、掴まえるのに苦戦する。交渉うまくいかずおじさんが去ろうとするタクシーを叩いていた。
それをみて、他の3人が私たちの不安をなだめるように、「知り合いで冗談でやったんだよ」とか言っていた。が、そんな風には見えなかった。

ようやくタクシーをつかまえて、着いたのはShangri-La Hotel!
と思ったらそこから5分ほどモールを抜けて歩く。広い道路を渡るため階段を上り下り。おばさんがへばっていたので、私の夫が支えてあげる。他の人は無関心にみえて、あれ?という感じ。家族なのになあ。

セカンドラウンド ‐ ライブハウス

モールを抜けて着いたのはPADI’S POINTというライブハウス。50ペソ(120円)払って入場。あれ、席がある。クラブ的なダンスじゃないの?と思ったら、あとでみんな歌に合わせて踊るんだよ、と言われる。銀座で似たような店に行ったことがあったので、同じようなもんかと思った。

席に通され、またまたフライドチキンとフライドポテト、カクテルタワーを注文。
No acohole, just dance for an hour! と言っていたがローアルコールだからといってさらに飲ませようとしてくる。夫はもう飲みたくないのでマンゴージュースを頼む。

人気バンドですぐに席はいっぱいになるよ!と言われたが、まだまだ空いた席があるままLiveがはじまる。下着を敢えてみせているのかなんなのかな女性ボーカルが歌い始める。


誰も前に出ないな~、いつ踊り始めるのこれ、とぼんやり思いながら
チビチビ揚げ物とカクテル/マンゴージュースを飲む。カクテルにも氷が出てくるのがフィリピン風みたい。

後から考えると私たちがあまりにお酒を飲まないので焦れたのか、
おじさんが夫と私のカップから氷を取り除き、カクテルを追加してこのほうが美味しいよ、とやりはじめる。
Cheers!をやたらやり、飲ませようとする。夫がマンゴージュースで返そうとすると、おじさんは苦笑い。

夫は3回ほどしつこく煙草に誘われていた。
睡眠薬を仕込んだ煙草を吸わそうとしたのか。夫は煙草を吸わないので断った。
お酒も煙草もやらない夫に、とても焦れただろう。

おばさんが頻繁にスマホでチャットしたり、おばさんと赤服が席を外してどこかへ。トイレかなと思っていたけど、今後どうするか方針を決めていたのかと思う。

30~40分経った頃、今回のバンドは大したことないから行こう、と言われ、席を立つ際にフィリピンのチョコレートだよ、と口にチョコレートを押し込まれそうになった。
不安を感じ、四分の一をかじり、残りはポケットに入れた。

このあたりからだんだんぼんやりしている。
酒に激弱い夫も同様。

ファイナルラウンド - タクシーの中


本当にダンスできる場所に移動しよう、と再びタクシーに乗る。
今回はタクシーはスッと来た。恐らく事前に手配していた仲間だろう。

おじさんおばさんは前に座り、後ろ座席に左から赤服・私・夫・セリーヌディオン。

道すがら、クレジットカードのレシートを見せれば、ダンスチケットが半額になるSaturday PromotionだからATMでレシートを出そう!と言ってきた。
私はぼんやりとしつつも、クレジットは絶対見せたくないと思い、持っていないと言った。
夫は銀行カードとクレジットカードを持っているといいATMへ行ったが、何故か使えなくて戻ってきた。

ATMを使っている間におじさんがさっき食べさせられそうになったチョコレートが入った袋を持って、もぐもぐしている。彼の子供が好きだという。

その後マーキュリードラッグに寄り、おじさんおばさんが出ていく。
そこで買ったというマンゴーライチアイスクリームを口に突っ込んできて何口も食べさせてくる。普通は紙に入っていそうなところをプラスティックのケースに入っており、違和感あり。

さらにその後チョコレートを口に突っ込まれ、抵抗からか、飲み込まず、上歯の裏にくっつけてキレイキレイで拭ったのはぼんやり覚えている。

その後は、左に座る赤服が私の左ズボンポケットを触ってきている記憶、
Google Mapをみようとしたら、みなくていいからね、と言われた記憶、
泊っているホテルアパートメントの近くに降ろされ、併設されているモールの脇を歩いた記憶が断片的に残っている。

夫のGoogleのGPS履歴によるとホテルには深夜2時ごろ戻ってきていたらしい。

気付いたら床でそのまま寝ていた。夫はベッドに寝ていた。翌日の夕方まで2人とも起きなかった。フライトがもうすぐだ!と慌てて起きて準備して空港へダッシュ。しかしそのあたりの記憶も飛び飛び。恐らく睡眠薬の効果と思う。
記憶にあるのは、空港のカウンターのスタッフに「彼女は体調が悪そうだけど・・・?」と言われ、夫が「睡眠不足なんです」と返していたこと。
ホテルで緑のゲロを、マニラの空港で歩きながら黄色のゲロを吐いたこと。
(黄色のゲロは夫が渡してくれた袋がぎりぎり間に合わなかったけどマスクの中に収まったのである意味セーフ。マスク必須の時期だったので、マスクの予備があってよかった。)

被害確認

帰国して1日は意識が不明瞭、その翌日にようやく明瞭になってきてから確認した最終的な被害は、夫の銀行口座からデビットで24,000円とクレジットカードで50,000円の計74,000円ほど。ATMでレシート出させるときに、PIN番号を盗みみたようだ。

私の方は被害なし。
クレジットカードをみせなかったからかもしれないし、夫婦なら、夫の方がお金を持っている確率が高いのが通常なので、夫狙いで行ったのかもしれない。そしたら思ったよりお金持ってなかったというオチかもしれない。

また、夫のスマホも開けられ、撮っていた写真が削除されていた。
夫の携帯のパスコードもみていたのだと思う。
色々調べたが、復元不可能なようにかなり念入りに削除されていた。

盗まれた所有物は特になかった。

このため、最終被害額はデビットの24,000円分になる想定だ。

身体的には、右ふくらはぎの内・外側それぞれに直径2cmほどの何かにぶつかった痕ができていた。左眉尻あたりを押すと痛い。まるで記憶はないが、おそらくどこかで転んだかぶつかったかしたっぽい。

本当に、よく無事に帰ってこれたものだと思う。

寝ている間に起きていたこと

74,000円の使用先をみてみると、以下。

  • Jolibee(フィリピンでメジャーなファーストフード店)

  • Mercury Drug(ドラッグストア。何を買ったかは不明) 

  • ガソリンスタンド(タクシー用ガソリン代?)

移動ルートは、夫のGPSに残っていた。GPSのバグの可能性もあるが、空港敷地内にいる記録があるのが何気に恐ろしい。
記憶がないから恐怖の実感はないが、何か少しでも違っていればもっとひどいことになっていた可能性もあり、この程度で済んで運が良かったと思っている。

振り返り


後から考えれば、初めから不審な点はいくつもあった。

  • フィリピン人にとって誕生日は家族の一大イベントのはず。おばさんには3人の娘と20人の孫がおり、フィリピン中に住んでいるという。それにも関わらず4人だけの誕生日というのはおかしい。

  • 話を聞いていても4人の関係がはっきりしなかったり、変わったりする。家族構成もはっきりしない。

  • 自分の店に連れて行くといいながら、自分のお店はちょっと遠いので親戚の店に連れてきたと言っている。

  • 写真に写るときはなるべくマスク。

  • ダンスする場所に行くといいながらLive Houseに連れていく。

  • No Alcoholと言いながらアルコール飲ませようとしてくる。


さらに、プロの技が光っていたなと思うところ。しっかり油断してしまった。

1)安心感の醸成

  • 日本語を少しでも知っており、日本について関わりがあることを伝えて親しみ≒安心感を醸成。

  • さりげない会話から情報を集め、滞在しているホテルの近くだからとさらに安心させ誘いを受け入れやすくする。

  • 歌わせることで楽しい気分になり、一緒に歌うことでさらに警戒心が解けた。

2)不安を感じないようメンタルケアをする

おじさんのタクシーに対する暴力的な行動や、タクシー運転手との会話について今こういうことを話したんだよと言い、フォローを入れることで不安を和らげる。
(Live Houseでおじさんがアルコールを無理矢理飲ませようとは他3人よりも我慢できない性格だったとみる)

3)自分達も食べているところをみせる

睡眠薬が入っていたチョコレートやアイスクリームを、彼らも食べていたことでちょっと油断した。
おそらく睡眠薬入りと無しがあってわかるようになっていたのだと思う。


メンバーの役割は、以下だったのだろうと推測する。

セリーヌディオンは歌とかで盛り上げるガヤ要員、
おじさんは男性も安心できるようにする男性対応要員、
おばさんと赤服が計画・指示要員

最後のタクシー運転手もメンバー。

Nobu Jのオーナーが4人組の協力者だったのかはわからない。
「日本人を騙そうとするフィリピン人もいるから気を付けて。この人たちは良い人たちでよかったと思うけど」と言っていた。これが協力者として警戒を解くための言葉か、4人組を疑いつつの警告なのか。
シンガポールに帰ってきてからFacebookでコンタクトしてみた反応を見ると、私としては後者じゃないかと思っている。

ここまで振り返ってきての反省を込めて、睡眠薬強盗を見分けるためのポイント7か条。1~2つ以上当てはまったら要注意。

  1.   老若男女、どんな組み合わせもありえる

  2.   すぐに「店に食べに行こう!」と誘ってくる

  3.  「ジュースでいいよね」「No Aocohol」とか言っても結局強引にアルコールを飲ませようとする

  4.   相手がやたら飲み物・食べ物・タバコを「あげるよ」と押し付けてくる

  5.   アドレスを聞いても教えてくれない

  6.   写真を撮ろうとしても顔を全部出さない 

  7.   家族構成や、関係性を聞いてもはっきりしない

最後に

以上が私の初マニラ体験。考えてみるとどこかで殺されたりレイプされていてもおかしくない怖い体験だったが、
振り返って、それ以上に「怖い」と感情が動く体験が、地獄のデスロード(3歩行くとゴキブリがいる体験)。
睡眠薬強盗はその間のことが記憶にないので、そこまで「怖い」と感じない。頭では「怖い」とわかっているのだけど、心がそこまで動かない。人間の心理の不思議。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?