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復本一郎『日野草城 俳句を変えた男』

この記事は、日本俳句教育研究会のJUGEMブログ(2021.05.15 Saturday)に掲載された内容を転載しています。by 事務局長・八塚秀美
参照元:http://info.e-nhkk.net/

色香のある魅力的な句を遺した日野草城は、私も大好きな俳人のひとりです。書籍のソデには次のような紹介文が書かれています。

昭和の初期、新興俳句運動の驍将として、官能俳句・フィクション俳句、無季俳句を取り入れ、既成の俳句概念から俳句を解放し、現代俳句への道を切り拓いたとされる俳人日野草城。
昭和十一年「ミヤコ・ホテル」の連作俳句による毀誉褒貶の嵐の中での「ホトトギス」除名。戦時中は新興俳句運動への弾圧により俳句界から退く。戦後、病臥しながらも、珠玉の境涯俳句を遺した。

本書は、没後五十年を控えて、草城を再評価しようとしたもので、知られざるエピソードなども加えながら、ソデに書かれている内容の全てを詳らかにしていく評伝でした。筆者・復本さんは、草城の純文学意識や芸術至上主義を取り上げ、彼の唯美的、官能的な作品群を評価する立場に立っているので、一般的に評価されている最後の句集『人生の午後』ではなく、処女句集『花氷』を間違いなく俳句を一変させたものとして代表作にあげているのが特徴的でした。

とは言いながら、「私は俳句はもろびとあけくれのうた(諸人旦暮の詩)であると考えてゐます。日常生活の中に見出されるよろこびや悲しみを誰かに聴いてもらひたくて口に出たものが俳句だと思ひます。」との病臥の草城の到達点までがきちんと描かれていきます。

個人的には、男性ゆえにとらえることのできる女性の艶やかさを詠んだ句群が好きでした。

春の夜やレモンに触るゝ鼻の先
春の灯や女は持たぬのどぼとけ
をみなとはかかるものかも春の闇
やはらかきものはくちびるさつきやみ
白々と女沈める柚子湯かな
冬ざれのくちびるを吸ふ別れかな
炎天に黒き喪章の蝶とべり
高熱の鶴青空に漂へり寒の闇
煩悩とろりとろりと燃ゆ
右眼には見えざる妻を左眼にて