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俳句津々浦々(5)

副会長夏井いつきのライフワークである「俳句の種蒔き」活動。その中で出合った俳句をご紹介します。


缶潰すだけの内職聖樹の灯

上五中七の言葉ひとつひとつを押さえるような句の歩みが「缶を潰す」手の動作のひとつひとつと重なるように展開する。そんな光景と取り合わされる季語が「聖樹」。クリスマスのその日にも黙々と内職に励むのだろうか。「内職」という言葉からは少し前の時代の在宅ワークが浮かぶが、この句はクリスマスの喧騒の中、街頭で、黙々と缶を潰す人の姿が浮かび上がり、現代の厳しい社会状況も透けてくる。「聖樹の灯」へとさらにアップの映像に収斂することで、クリスマスの街の耀きと缶を潰す行為の対比もさらに強調されてゆく。缶を潰すだけの行為が、イエスがゴルゴダの丘を一歩一歩踏みしめながら上ってゆく歩みにも見え、缶を潰すことの重みを知らされるようだ。

~2023年12月16日 埼玉 夏井いつき 句会ライブ in 上尾~(加根兼光:nhkk協賛サポーター)


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「俳句津々浦々」が、市井の俳句や、身近な場面が詩になっていく俳句の楽しさに触れ合うぺージになればと思っています。
17音で詠んで読む俳句は、気軽に取り組むことができる可能性に満ちた魅力的な教材(文芸)です。学校現場で俳句に取り組まれている先生方からの具体的なご報告もお待ちしています。

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