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昭和30年代男 日本経済を愚痴る(番外コラム)

 2009年10月から定期放送が始まったNHKの人気番組「ブラタモリ」が今年(2024年)3月に終了し、その後継番組として「新・プロジェクトX」が始まりました。この番組、言うまでもなく2000年3月から2005年12月まで放送されていた「プロジェクトX」の第2シーズン的なもので、私は楽しみにしていましたが、東京スカイツリーを扱った第1回目は見逃し、第2回目はビデオに録画して後日視聴しました。
 第2回目のテーマは「弱小タッグが世界を変えた ~カメラ付き携帯 反骨の逆転劇~」と題し、今や世界中で暮らしに欠かせない存在となった「カメラ付き携帯電話」開発物語・・・と、ホームページで紹介されています。今でもある一定の年齢以上の方はスマホで写真を送ることを「写メする」とか「写メで送って」とか言いますが、この写メというのは「写メール」の略で、文字どおりカメラ付き携帯電話で撮影した写真をメールで送信できることをアピールするキャッチフレーズです。番組でも紹介されていますが、このサービスは通信事業者のJ-PHONEと端末メーカーのシャープがタッグを組んで世に出したもので、番組ではその開発における関係者の血のにじむ労苦が紹介されており、番組そのものは旧来の「プロジェクトX」に劣らず見ごたえがありました。
 しかし、番組が進んで担当者の労苦が実を結ぼうとするとき、私はなぜか言いようもない虚無感に苛まれました。だって、この偉業を成し遂げた通信事業者も端末メーカーも、現在につながっていないのですから・・・。
 世界初のカメラ付き携帯電話「J-SH04」が発売されたのは2000年11月ですが、早くもその一年後の2001年10月にはJ-PHONEの筆頭株主である日本テレコムがイギリスのボーダフォン傘下の会社になったことで「J-PHONE」の名が消滅し、このボーダフォン本社がJ-PHONEの流れをくむ日本法人をソフトバンクに身売りされて今に至っています。一方のシャープも経営不振から2016年に台湾企業に買収されてしまいました。私は勤務していた会社が身売りされた経験があるだけに、会社は存続していても株主が大幅に変われば、もはや同じ会社ではないと考えています。したがって、法人としては存続していても、経営体制が大きく変われば糸は途中でぷつりと切れ、現在までつながっていないと考えてしまうのです。
 このカメラ付き携帯電話端末の開発に関係した方々の処遇については、詳しく知りません。番組では最後にJ-PHONEの担当だった方が現在ではお酒づくりをされていると紹介されていましたが、いつの時点で会社を離れたのかは不明です。一方、シャープのご担当は定年まで在籍されていたようですが、なにせ会社は存続しても経営者の顔ぶれはガラッと変わっているわけですから、果たしてどこまで買収前の給与体系を維持できていたのか・・・。
 現実には私のように愚痴ってばかりいる人間の想像をはるかに超える有意義なサラリーマン人生を送られたのかもしれませんが、とてもじゃないけど番組が終わってビデオを消去するときに「めでたし、めでたし・・・」とは思えませんでした。むしろ、より一層愚痴りたくなったものです。

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