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不安定な




中野くんはGPSを付けられて行動が制限されている。全てのメール、LINEもチェックされていて、私たちの連絡手段は通話のみになってしまっている。



別れてもらえない上に束縛され続けていることについて「彼女に逆らえば何をされるかわからない。おとなしく従っていればそのうち自由になれると思う」と中野くんは言う。本当にそうなるのかはわからない。そしてそうなる前に私と中野くんのこの関係が終わっているかもしれない。どちらにせよ、自然な流れでなるようになると思う。 




日々の連絡が取れないので、ほんの数分でも中野くんと通話ができたときは私の機嫌が爆上がりする。気付くと歌を歌っていたりして、はっと我に帰る。
LINEもメールもできない関係なんて‥と考えることはあるけれど、嫌いにはなれない。何日間も連絡が取れなくても毎日毎時間想っているし、好きな笑顔を思い出してニンマリしてしまったりする。
好きな気持ちは変わらない。



恋しくて涙がでるほどの人なのに、その気持ちは本物かと試されているかのように距離をおかれている。どんな試練でも向かってきてほしい。自分でもなぜこんなに好きなのかよく分からずにいるのだから、試練を受けてはっきりするのがいいとも思う。



いちばん望む試練は、中野くんからの「本当に愛しているのはやっぱり彼女だけです。もう連絡をしてこないで下さい」というひと言かもしれない。



離れたい、離れられない、と悩む私の気持ちを文字にして改めて気付く。とても不安定で情けない。不安定な関係だから、不安定な心。





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