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マジシャン人生最大の失敗

マジックを続けていると、よく聞かれる事があります。
「マジックって失敗するの?」
そりゃ失敗します。
でも、失敗したように見せないように、いくつも予防策を用意しております。

そんな失敗談の中でも、今まで誰にも語ってこなかったとびっきりのヤツをご紹介。

まだ駆け出しマジシャンだった頃、子供会のクリスマス会に呼ばれました。
家から徒歩3分。
と言うか、家から頑張れば見える距離。
お客様のほとんどが未就学児とそのお母さん。

子供達の出し物の後に僕がマジックをする流れでした。
子供達が繰り広げる微笑ましいダンスや歌、そしてマジック。
おそらく児童書や動画から学んだものではない、オリジナルで奇想天外なマジックを微笑ましくも興味深く鑑賞する僕。

いよいよ僕の出番です。
当時元々専門外だったステージマジック。
不慣れながらも順調に進んでいました。

「じゃあ1枚のカードを選んでね」
小さな男の子の前にしゃがんだ瞬間でした。

「ぶちっ!」

謎の衝撃がおへそのすぐ下、人体の要所の一つである丹田を襲います。
そして続け様に下半身を襲う不安感とちょっぴりの解放感。

そう、ベルトが引きちぎれました。

お客様に気取られぬよう、そしてズボンがずり落ちて別のマジックが始まらないように最新の注意をはらいマジックを進行する僕。
もちろん演技に全力投球は出来ようはずもありません。

最後の演技が終わり、深いお辞儀に紛らわせてズボンをずり上げる僕。

「この後ご一緒にお食事いかがですか?」

とどめの一言でした。
いつもなら喜んでご一緒するのですが、静かに首を横に振り、そそくさとベルトを押さえながら荷物をまとめ、徒歩3分の帰路をズボンが落ちないように大股で帰りました。

それ以来、ベルトは引きちぎれないぶ厚いものを使っております、はい。

昨年末、またベルトにまつわる失敗があったのはまた別のお話……。

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