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長崎大学全学乗船実習2024 体験記


1. 長崎大学全学乗船実習とは

 全学乗船実習は、長崎大学が保有する附属練習船「長崎丸」で長崎から鹿児島を5日間かけて航海し、海洋観測や魚捌き・ロープワーク・機関室見学などの海上ならではの学習を実践的に行うプログラムである。
 長崎大学は旧官立大(旧六医大)の1つであり、他の千葉大・新潟大・金沢大・岡山大・熊本大と連携し、国立六大学連携事業「国内留学プログラム」の一環として、長崎大学から全学乗船実習を提供している。
(参考:令和4年度国立六大学連携事業「国内留学プログラム」実施要項)

2. 履修のきっかけ

「長崎にいる間に、長崎でしかできないことをしよう」
全ては入学時から掲げていたこのテーマがきっかけだった。
私は埼玉県出身で海に触れる経験が他県出身者より少なく、乗船には以前から憧れがあった。また、大学では他の学生と共同して活動する機会が高校に比べて少ない。同じ船の上で、同じ釜の飯を食べ、たくさんの友達に出会いたかった。
(あわよくば優しくて可愛い女の子にも出i…(殴))
加えて、船を保有する大学は片手で数えられるほど少ない。(国内の国立大では、北海道大・東京海洋大・神戸大・長崎大・鹿児島大のみ)
これは乗船後に知ったことだが、長崎大学の長崎丸は国内の大学練習船の中で最も竣工年が浅く、最新機器を搭載した国内有数の練習船なのである。
そんな船に乗船できるなら行くしかない。覚悟を決め、案内が来たその当日に応募フォームを送信していた。

3. 受講体験記

ここからは、1日ごとの体験記を報告する。(少々ネタバレになる可能性はあるが、実習中の撮影掲載許可がされた部分しか掲載ができないため、是非あなたの目でその光景を確かめて欲しい。)

3-1 Day1 

午前9時前。男女35名ほどが中部講堂前に集結していた。
受付を済ませ、チャーターされた長崎遊覧バスに乗り込む。
水辺の森公園方面に正門を左折し長崎港へと向かうと思っていたら、バスが正門から右折し始める。「ん!?」驚きが止まらない。僕らはどこへ向かうのか。
バスに揺られること30分。到着したのは長崎市京泊にある長崎漁港。
巨大な練習船が見えてきた瞬間、学生一同から歓声が上がる。
僕らはこれに乗って5日間海の上…。少し不安な気持ちと楽しみな気持ちが入り混じる。

大学の仲間と乗船前にパシャリ。

乗船した後、展望台へ集合し出港の様子を見学した。
長崎漁港と綺麗な海を一望。その景色に、思わず一同息を呑む。
警笛の爆音が鳴り響き、いよいよ出港。漁港の皆さんに手を振りながら港を後にする。

出港の様子

学生室で諸注意や概要説明を受けた後、船内最初の昼食。
事務部のおじさんが見守る中、食事当番(通称 食当)が分担して机上消毒・盛り分け・配膳を行う。(この食当が2日目以降のネタになるとは知る由もなかった)
これがまた美味しい。長崎丸のご飯は美味しいと噂では聞いていたが、本当だった。

1日目の昼食

昼食を済ませた後、CTDという機械を使用した海洋観測実習を行った。
CTDのCは濃度(Concentration)ではなく、伝導度(Conductivity)である。
イオン伝導度や温度(Temperature)、水深(Depth)を測りながら、それぞれの水深での海水特性や潮の流れを解析する。
CTDの機械に駄菓子のブタメンの箱をつけて、水圧による容器の変化も検証。
実際にCTDの機械投入の様子は翌日の見学で行ったが、ブタメンの箱の結果はDay1に見ることができた。

左:水深750mで沈めた容器 右:販売時の容器

すごい水圧である。変わり果てた容器に驚きを隠せなかった。実際にどれくらいの倍率で小さくなるかは、実際に参加して検証してほしい。

午後16:15から夕食の時間であった。船内のスタッフたちは4交代(24時間を4つの時間帯で分けて交代で勤務)であるため、1日4食が基本である。よって、3食目の時間が夕方と少し早い時間なのである。夕食もまた美味しい。魚料理万歳。

1日目の夕食

正直、Day1は船内での生活に慣れることで精一杯だった。夜は若干揺れが強く、ダウンする学生もしばしば。酔い止めを事前に飲んでいたからか、私はどうにか耐えることができた。
22:00就寝。翌朝の起床に向けて大人しく寝床に着いた。

3-2 Day2


朝6:00。乗組員に叩き起こされ、眠い目を擦りながら作業着へ着替える。
船首に集合し、点呼を行う。震える寒さの中、元気にラジオ体操。
終了後、食当だった私はダッシュで学生室へ向かい、ご飯の準備。
2日目の朝食も美味しい。ありがとう、事務部の皆さん。

2日目の朝食

朝食後はCTDの海上投入の見学・トロール実習であった。
CTDを投入する機械が動き出し、いよいよ投入。

CTDを海上投入する様子

この実習では、トロール漁法と呼ばれる方法で魚を漁獲する。回収の様子は本当にあまりにダイナミックすぎて、ワクワクが止まらなかった。是非一度参加して見学して欲しい。

トロール漁法の様子
漁獲された魚たち

漁獲された魚は学生たち自身で種類別に分け、体長や重さを計測していく。
魚によって個体差が激しく、自然を肌身で感じられた。

作業終了後、お楽しみの昼食の時間。献立はなんとカレー!男子一同、おかわり合戦に向けて爆速でかき込む。これまた最高に美味しい。

2日目の昼食

昼食後は、魚捌き実習と機関室見学をした。
魚のヒレが思ったより鋭く痛い。手を切ったり苦戦しながらもどうにか3匹捌き切った。

捌く前のキダイ
3枚おろしで捌いた後のキダイ

機関室・機器見学もなかなか良かった。写真は掲載できないが、すごい熱や音を出す機械だらけで、理系男子達の好奇心をくすぐる。こりゃ熱効率が凄そうだ…。

実習を終え、いつも通り夕食会場に向かう。なんと出てきたのは、カツ煮に加えて自分達が捌いた魚たち。これまた美味しい。

2日目の夕食 その1
2日目の夕食 その2

Day2の夜からみんな生活に慣れてきて、22:00の消灯時間後も学生教室に集まる。恒例のUNO対戦がスタート。
事務部のおじさん(通称:食当二キ)と目が合うと「お前、食当か?」と言われ、台所につまみ出される様子が面白く、そこから始まったのが自主食当ゲーム(?)。
夜食で出した器をUNOで負けた2人が自主食当として洗わなければならない。
これがまためちゃくちゃ盛り上がる笑
UNOで早くアガった人間がここぞとばかりに器をわざわざ増やす。
UNO終了後、食当ニキのモノマネをする学生が負けた食当を代わりに台所までつまみ出すまでがオチ。
船内では娯楽が本当にないため、こんなにしょうもないゲームでも盛り上がるのである。自主食当ゲームで繋がった絆は一生忘れない。食当ニキ、ありがとう。

地獄の自主食当ゲーム

3-3 Day3 

いつものように6:00に起床。ラジオ体操を済ませた後、朝食会場へ。

3日目の朝食

9:00に鹿児島港へ入港し、すぐに鹿児島水族館へ。
ただお客さんが通る経路で見学するだけではなく、なんと大水槽のバックヤードが特別に見学できる。
お客さんにバックヤードが見えないようにする工夫や、模型・実物の展示を通して大水槽へ展示する魚たちをどのように輸送しているかなどを教えてもらえる。
カップルが水族館デートをしている裏では、こんなにも苦労があるのか…としみじみ。

鹿児島水族館のバックヤード

水族館の見学を終えた後は自由行動。船への門限は21:00。授業とは思えないほどの自由時間の長さである。
せっかくなので、船上で出来た千葉大の友人と共に桜島へ向かうことにした。
桜島フェリーに揺られること15分。着いてみると、桜島の山から煙がモクモク。
船のあちらこちらにある火山灰の原因はこいつか…。理科教育法の先生が「火山灰がひどいから、鹿児島には2度と行かない。」と仰っていた小ネタを思い出した。

桜島の風景

散策後、友人たちと桜島のマグマ温泉を堪能。めちゃくちゃ気持ちいい。
桜島の景色を一望しながら、足を伸ばして素晴らしいお湯に浸かることができる。
お互いの大学での流行や進路の話まで、ざっくばらんに裸同士で語り合う。
大盛り上がりで、終始笑いが絶えなかった。これだから銭湯はやめられない。

市電に乗ったり散策をしたりして鹿児島観光を楽しんだ後は、急遽実施が決まった学生全体呑み。(船内にお酒の持ち込みは禁止されているが、体内持ち込みは常識の範囲内で許可されていた。)男女みんなでワイワイ酒を入れる。顔を真っ赤にしたメンバーが可笑しすぎて腹筋崩壊寸前だった。今年の実習メンバーは本当にアタリすぎた。

全体呑みで食べたモツ鍋

酔った同期を誘導しつつ、ワイワイ船へと戻る。そろそろ旅も折り返しで、寂しさが込み上げてくる。最初の不安な気持ちはどこへやら。

3-4 Day4

翌日も13:00まで鹿児島上陸が許可された。朝食を済ませ、船外へ。
長崎大・金沢大の友人たちと「黒豚と白熊が食べたい!」と一致したので、早速鹿児島中央駅へ。
これまたご飯が進む。せっかくの機会なので、みんなで昼から鹿児島の焼酎「森伊蔵」を頂くことに。森伊蔵は日本航空(JAL)のファーストクラスで提供されるほど、人気が高く入手が難しいお酒だそう。喉通りが良く、非常に呑みやすい。

4日目の昼食

黒豚を食べ終わった後は、お楽しみの白熊。レギュラーサイズはまったくレギュラーではない。ひと回り小さいベビーサイズがレギュラーまである。
提供されたのが12:00過ぎ。さすがにまずい。集合まで残り1時間を切っている。
慌ててみんなで冷える頭を抱えながら、食べ切ると決めたレギュラーサイズを全員でかきこむ。

おやつの白熊(レギュラーサイズ)

鹿児島中央駅を市電で出発したのが12:30すぎ。船の乗り場までは普通に行けば30分はかかるので絶望的である。5分前集合が船内では基本なので、尚更である。
港の最寄駅も港から徒歩10分ほどあり、タクシー案も出た。
しかし僕らの班が導き出した結論、それは「最寄ダッシュ」である。白熊がたんまり腹に入った状態で駅から全力で走る。もうきつい。先に着いた同期から煽りLINEが届く。「絶対間に合ってやる。見てろよ。」と思いながら、体に鞭を打つ。
班員全員の努力が身を結び、奇跡的に12:53に船へ到着。作業着に着替えて12:55に学生室へ到着。
煽りLINEを送ってきた同期が面白くなさそうに出迎えてくれた。ほれみたことか。(誉められたことではないが、やりたいミッションは全て達成したため達成感がすごかった。)

使ったカッパや長靴の洗浄作業と船内清掃を終えた後、夕食会場へ。

4日目の夕食

夕食を終えた後、ワッチ(海上監視の仕事)へ。ワッチでは、船の進行方向角度の微調整を実際に体験させてもらえる。私はそれに加えて、航海士さんのご厚意で鹿児島湾付近での大きな角度切り替え業務も体験させてもらえた。
「操舵、交代します。」「コース320度、サー!」
機関士さん監督の下、ハンドルを切っていく。大きく右に旋回していく。
「本当に曲がってる!!!」思わず叫んでしまった。
「そりゃあ、あなたがハンドル切ったからねぇ」と笑いながら機関士さんたちが頷いてくれた。仲間と航海士さんといたあの温かい空間が本当に大好きだった。

操舵体験の様子

ワッチ・操舵業務を無事終えた後、学生教室の恒例UNO・大富豪対戦に参加。
いつも通り大盛り上がりで、UNO対戦後も千葉大の友達と話が盛り上がりすぎて深夜2時まで話し込んでしまった。

3-5 Day5

翌朝6:00。急いで着替えを済ませ、眠い目を擦りながら実習最後のラジオ体操会場へ。ラジオ体操を終えると、地獄のデッキブラシ掛けが待っていた。そう、なんと極寒の寒さの中、裸足でデッキをブラシで磨くのだ。寒すぎて感覚が麻痺してきていたが、なんとか乗り切った。5日間過ごした仲間とだったからこそやれたと思う。
最後の朝食。今日も最高に美味しい。

5日目の朝食

入港直前に今までお世話になった、実習中毎日通い詰めた研究室の筒井先生(長崎大学水産学部の特任研究員)やブリッジの航海士さん達、美味しい食事を日々作ってくれた事務員の食当二キのところへ同じ部屋の仲間とお礼の挨拶へ。
「次の航海は4/2にあるから、忘れずにな。」と食当二キらしい、かっこいい最後の言葉を頂いた。本当に次の長崎丸の実習にも参加したいくらいだ。

なんと、参加した学生全員に事務部の皆様から実習中に獲った魚のお土産が。
長崎丸の船内で真空パックへ加工し、配布して下さった。なんというサービス精神。感謝しかない。後日塩で臭み抜きをして焼いて食べました。実がすごくふわふわで美味しい!!

頂いたお土産

9:00に長崎港へ到着。入港の様子を見学した後、船長先生からお言葉を頂き下船した。
集合写真を撮影後、バスへ乗り込み長大へ。レポートを仕上げて解散。
みんな名残惜しいので、せっかくだしみんなで昼ごはんを食べに行こうという話に。長大や他大学のみんなと共に、私の行きつけの街中華屋さんへ。

行きつけの街中華屋「白水楼」の天津飯

まだまだ長崎を堪能したいとの金沢大の友人のリクエストで、急遽雲仙へドライブすることに。
千々岩のじゃがちゃん、雲仙のジェラート・足湯・温泉を堪能。

雲仙地獄
温泉「青雲荘」

友人から「最初は長崎をすぐ出発するつもりだった。こんなにも長崎大学のみんなが温かくて、長崎の観光も最高とは思わなかった。」と言ってもらった。
思わず僕と、同じ長大工学部の友人でニッコリ。
埼玉から来て早3年。長崎を案内する側に立ち、長崎大学や長崎の魅力を発信する当初の目標がしっかりと達成できていることを心から実感した。

21:00すぎにみんなで長崎駅のアミュプラザで夜ごはんを済ませ、金沢大の2人を改札まで見送りへ。「今度会った時に本当にお返しします」と言われた。けれど、僕たちも長大の先輩達から色々お世話になったし、長崎の魅力を僕たちならではのアプローチで伝えられたことが1番の「お返し」なのである。
「金大(金沢大)の後輩達に是非還元してあげてね。」と長大生2人で返した。
無事2人を見送った後、バスで帰路についた。

乗船実習で仲良くしてくれた、長崎大・熊本大・千葉大・金沢大のみんな、本当にありがとう!一生心に残る思い出です。また長崎に遊びにきてね!!

4. 受講を検討している方へ

船に長時間乗った経験がないから不安なあなた。
大丈夫です。みんなそんな経験ないです。
船酔いや単位なんかより、もっと大きいものが手に入ります。
長崎大学生だけの実習かと思いきや、他大のみんなとも出逢えたし、本当に参加してよかったと思ってます。
単位が出なくても行っていたと思うくらい、良いプログラムでした。
長崎大学に改めて誇りが持てます。さすが旧六医大。ただの地方国立大ではないことを痛感しました。
この記事を読んだ方の中で、少しでも多くの方が参加してくれたらと思います。

5. 履修予定の方へアドバイス(実習前準備)

実習前にこの記事を読んで下さっている皆様向けに、準備してよかったもの・あればよかったものなどを紹介します。

【準備してよかったもの・あればよかったものリスト】
・シャンプー、リンス、ボディーソープ
船には備え付けの洗顔料やシャワー道具がありません。持っていきましょう。

・酔い止め
アネロンがおすすめ。微積サークルの薬学部の後輩に選んでもらいました。
1日1錠なので、1箱買っておけば安心。買ってよかった。嘔吐せずに済みました。
(かなり1日目からダウンしている人もいたので、要注意)

・現金
鹿児島市電は特に現金とクレジットしか使えません。
ICカード(Suica・パスモなど)は使用できません。
桜島のフェリーは今年からICカードも使えるようになっていました。
呑みや観光で案外飛ぶので、多めに持っていきましょう。(鹿児島市内で下ろすでもOK)
ちなみに、鹿児島観光ではレンタカーなどの免許が必要になるものは禁止です。
電車かバス移動が基本になります。

・防寒具
ジャンバーなどの厚手のものはライフジャケットの上からだと苦しいです。
ユニクロのヒートテックやズボン下の防寒用品を用意しておこう。

・タオルや服
多めに持っていくと良いです。船内に乾燥機・洗濯機はありますが、乾燥機がなかなか乾きません。しかも船内みんなで使うので、自分の番が回ってこない可能性も全然あります。

・お菓子と飲料
船上では買い出しはできません。
酔い止めより効くのは「空腹状態を作らないこと」。アメやチョコなどで気分を紛らわすことができます。上記と同様、多めに持っていくことをお勧めします。(船内で飲料水の水分補給はできます。)
船内では「命とお金の次に大事なものは食料」と言われるくらい大事です。
学生室でおかしを物々交換するのもまた楽しいです。

・UNOなどのカードゲーム
船上では娯楽がほぼありません。学生室でみんなで楽しむ用にあると良いです。

この程度でしょうか。事前授業の際にその他の物品は案内されますので、聞き逃しのないように。
なにかご質問等あれば、私にLINE・DMを送って頂ければ随時対応できますのでお気軽に。是非良い航海にしてください!Bon Voyage!

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