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アンフェアとは何か。

私の好きな映画の一つに 「アンフェア the end」がある。

2006年ドラマシリーズが大ヒットし、スピンオフ作品や映画もヒットして約10年、シリーズの完結編として2015年に公開された映画だ。

当時、世間は「主人公である雪平夏美の父親を殺した人物は誰だったのか、そして最後の黒幕は誰なのか?」に注目をしていたように感じた。完結編だということで、その人物も明かされ、そこを期待していた分、「なんかガッカリした」とか「つまらなかった」とかいう評価の声を目にすることもあった。

でも、私は見終わったときに全てのことが分かった気がしていたのだ。それは、「全ての点がつながっていくような感じ」というよりは、「霧が取れて視界が晴れていくような感じ」だったし、「空から啓示が降り注いできた感じ」でもあった。とにかく、なんかもう「悟り」に近い感じで「全てが分かった」と感じた。

そう、アンフェアという映画は、「犯人が誰か」とか「黒幕がなんだったのか」とか、そういう類のことだけを楽しむ映画ではなかったんだ。そして、当時、私はネタバレしないように注意しながら Twitter でこう呟いたのです。

アンフェアって、最後まで信じることをやめなかった雪平を愛してしまった男たちの話なんだと思う。エンディングの Unfair World の歌詞に出てくるその男も、僕ら視聴者も、きっとその一人。そして、雪平を愛してしまった僕らは言われるのです、「バカか、お前は」、と。

人は誰しも、大人になっていくにつれて、他人の汚い部分だったり、醜い部分だったりに触れていくことになる。そして、それに順応するように、自分自身も汚れていく。嘘をついたり、見栄をはったり、欲望に負けてしまったり。

それでもなお、純粋に「他人を信じていたい」と願っている自分もいる。それはまるで無垢な子供のように。

この葛藤を、エンドロールで流れる三代目 J Soul Brothers の「Unfair World」ではこう表現をしている。

人は誰しも 光と影が交差する世界の果ての迷える旅人

自分自身が嘘をつきながらも、信じることをやめない雪平のことを、眩しく羨ましく思ってしまった。そして、「雪平夏美」という光が強ければ強いほどに、自分自身の影の部分がより色濃く映し出されてしまったのだと思う。

たぶん、このドラマや映画に出てくる男たちは、雪平夏美に出会えたことで救われた部分もあったはずだが、彼女と出会わなければ目を背けて気付かないふりをすることができた自分の汚い部分と、彼女と出会ったことで向き合わざるえなくなってしまったのではないか。

そういう意味で、この映画の悲劇の元凶は、やはり「雪平夏美」という存在だったとも言えるのかもしれない。

そして、映画を見た私自身もこの映画と出会ってしまったことで自分の汚い部分と向き合わざるを得なくなってしまった。だから私はエンドロールで涙を流していたのかもしれない。


映画の世界は、エンドロールを持って完結をしている。しかし、私の世界は当然これからも続いていく。だから、私はこれからも自分自身の光と影に向き合い続けなければならないのだ。

そんな突き放し方、やっぱりこの映画は、

「アンフェア」

だと思う。

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