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がんリスクを唾液で判定 各社の技術で自動化を実現

 医工連携団体のTOLICに所属するスタートアップ5社(岩手県盛岡市)の共同事業体が、唾液だけでがんリスクの検査ができる新手法を開発しました。各社の技術で検査を自動化しているため、手間が少なく、ユーザーの身体への負担が手術や採血に比べて軽いことが特徴です。がん細胞が出すマイクロRNAの有無でがんリスクの判定をします。

 今回採用した検査方法はリキッドバイオプシーの一種です。マイクロRNAを次世代シーケンサー解析にかけて遺伝子情報を高速で読み取り、13種類のがんのリスクを調べます。 
 この装置は24人分の検体(唾液)を一斉に処理できます。通常、この数量の検体の分注作業を人の手によって行う場合、3時間程度かかりますが、分注機を用いて自動化するための専用カートリッジを作ることで作業時間を50分に縮めました。

 今後は装置を改良して、2025年4月から検査サービスを始めます。検査料は1検体10万~15万円を見込んでいますが、将来的には3万~5万円程度まで価格を引き下げる予定です。

 がんリスク検査はセルスペクトが受け持ち、専用カートリッジ製作はザ・アイティラボ、自動化システム開発はアイ・モーションテクノロジーが担当します。開発全体はアイカムス・ラボが調整し、TOLIMSは海外向けて事業展開しています。検査サービスは国内で始めますが、海外企業からも確かな手応えを得ているようです。

 厚生労働省が2023年9月に公表した「2022年の人口動態統計」によると、がんによる死亡は38万5,797人で、全体の死亡数の24.6%を占めているそうです。
 唾液によるがんリスク検査は既にありますが、ユーザーとがん患者の唾液の成分組成をAIで解析し似ているか否かを判定するもので、肺がん、膵臓がん、胃がん、大腸がん、口腔がん、乳がん(女性のみ)の6つのリスクを調べます。
 新手法により更に検査がスムーズになり、判定できるがんリスクの種類が増えれば、医療従事者の勤務環境の改善、ひいてはユーザーの健康促進にも繋がるのではないかと思いました。(H. S)
                                                                                                                                    
参照:日本経済新聞(2024年5月14日付)
日経電子版(2024年5月14日付)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO80628550T10C24A5TB1000/
独立行政法人 国立がん研究センター:マイクロRNAとがん
https://www.ncc.go.jp/jp/information/event/50th_event/science_cafe/panel_10.pdf
公益財団法人 日本対がん協会:がんの部位別統計
https://www.jcancer.jp/about_cancer_and_knowledge/%E3%81%8C%E3%82%93%E3%81%AE%E9%83%A8%E4%BD%8D%E5%88%A5%E7%B5%B1%E8%A8%88