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−196℃のメモリー(記憶冷凍)【毎週ショートショートnote】

「青春のソルベ」と記載されたパッケージを手に私は悩んでいる。

今記憶を食べるのが巷で大ブームらしい。
そもそも記憶というのは時が経てば新鮮さを失い、段々朧げになっていく欠片を何度も反芻するものだが、フレッシュな記憶を摂取することで、アンチエイジングになるのだとか。

「幼少期のシャーベット」「初給料のアイス」「氷結誕生日」など他にも様々な製品がある。

ただ、新鮮なまま冷凍保存といったって、記憶をフリーザーにぶち込んでも、脳みそにドライアイスを入れた記憶もない。

自分の記憶が売っている恐怖より好奇心が勝り、「青春のソルベ」を一パック購入した。1ヶ月の食費が吹っ飛んだ。

夜、ソルベをひと切れ食べてみた。
忘れていた光景が手に取るように眼前に広がる。お弁当の卵焼き、半分も聞いていない午後の授業、密かに好意を寄せていた相手の横顔…。

確かに、これは、私の記憶だ。

結局後味が苦くてソルベは口にあわなかった。次は「氷結誕生日」を食べてみよう。


<所感>
アイスの美味しい気温になり始めました。練乳入りのアイスが好きです。
ヘッダー画像は一目惚れしました。

以下の企画に参加しました。
もうちょっと、近未来の洒落た世界を目指してたのですが…

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