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「白」と「黒」


「ぼくは、ぺぺ。ユミの前に現れたのには意味があるんだ。」


猫は、淡々と話し出した。

本当に、しゃべる猫らしい。

大きさは、腕におさまるくらいで

首になにかまいてある。首輪…にしては、邪魔そうだけど。

この眼鏡ちゃんの帽子は相変わらずバラエティーで、

でもかぶったままってことは、ちょっと気に入ってるのか…

そういえば、コーヒー牛乳そろそろかな。

こんなとこ、見られてもマズいなぁ。めんどくさいよなぁ。

ま、屋上から上じゃなくて下を見るヤツなんかアタシくらいか…。


「なんで私の名前…」

「ユミ、俺と戦うんだ。これを持って」


掌くらいの、キラキラしたブローチ。


「これを肌身離さず持っていて。きっと役に立つから。」



「アスカせんぱ〜〜〜〜〜〜〜〜い。どこぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!

待望のコーヒー牛乳ですよおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

「ゲッ。恥ずかしい。待望とかつけないでほしい。」


なんか、この眼鏡ちゃんと変な猫が現れて

すげぇ。この裏庭。意味わかんない。

眼鏡ちゃんはアタシのこと、すごい目で見てくるし

あの猫なんかは、アタシのこと気づいてんの?ってくらい

どうでもいいっぽい。

とにかく、眼鏡ちゃんと俺(オスなんだな)で戦いたいっぽい。

戦うってなに。ファイナルファンタジー的なあれ?

猫がしゃべるあたりで、ファンタジーだもんな。

あの掌サイズのブローチが変身ブローチとかで、パァァ!とか言って何?

変身すんの?


自分の世界と違う次元に触れてしまって

アタシは、ちょっと怖かった。

眼鏡ちゃんは、さっきからほとんどしゃべらなくなって

ずっと、猫の方を見てる。

もう、あれか。なんかフラれたから幻覚でもみてんのかな…みたいな

放心状態なのかもしれない。


うちの学校は、チャイムが鳴らない。

隣の学校のチャイムによると、お昼休みが終わったチャイムだ。

うちの学校にはさほど、関係ないが。

「戻らないと…」


眼鏡ちゃんは、走って学校へ戻って行った。

白っぽい、ボリュームが多い前髪に胸元くらいまである髪の毛。

あっちの学校の制服は、全体的に白色でブレザー。男女共通だ。

走ると、長いスカートが揺れた。

足下にいた、白い猫もユミを追いかけていなくなってしまった。


結構幸せ感じてた、午後の昼下がりにこんなファンタジー。

屋上にもどると、

午後の日差しでおちる影が、やたら黒く感じた。





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