誰かのために生きるなんてただの言い訳
できるかぎり相手には優しくしたいと思う。
でも、なんか合わないなぁって人とは、もう合わないと思う。
嫌なことをされても好きになる人がいる。
アタシは、誰かによりかかって生きているだけなのかもしれない。
流れてたどり着いた先が、ここならばラッキーだ。
自分とかけはなれたまさにファンタジー。
しゃべる猫と変身ができる優等生めがねちゃん。
アタシは、ただの女子高生。
「ちょっと〜〜、アスカ先輩最近どこにいるんすかああああああ」
もこもこのダウンを着た、かわいい後輩が屋上へやってきた。
「いやさ〜、それがアタシなんかファンタジーの世界に迷い込んじゃってて…」
最近、アサミが帰ってこなくなった。
ラインも既読にはなるが、返信はなかった。
帰らないことはしばしばあるが、ここ数年はなかった。
アサミとアタシは、あまりお互いのことをしらない。
実の親子なのは本当だ。
アサミは自由だし、それをすばらしいことだとアタシも思っている。
家に帰ると、寒かった。
人がいないと家は暖まらない。
いつもアサミとは入れ違いだったから家は暖かかった。
あまりにもリビングは寒いから
自分の部屋で布団にくるまった。
コルクボードには、小さい頃の写真やプリクラを貼ってシールを貼っている。
壁には、小学校から中学校までやっていた吹奏楽部の演奏会のポスターを貼っていた。
いつも夜21時からはじまるFM局のラジオを楽しみに聞いていた頃があった。
そこでは、リスナーからのメッセージが読まれたり
リクエスト曲をかけてもらったり
DJがおもしろおかしく進行していく明るい番組で
十代の学生には絶大な人気だった。
アタシは、毎日のようにファックスを送り
いつ読まれるかドキドキしながら、机にすわり
漫画を書いていた。
昔書いたファックスは、バインダーにはさめてとってあった。
300枚近くあり分厚くはさみきれないほどだった。
久しぶりに机の引き出しからとりだして
ファックスをパラパラとめくる。
コピー用紙が、少し黄ばんでいた。
DJ RINKOさんへ
ウチは、今日学校で牛乳早飲み対決をしたよ〜ッ!
途中で、ともだちが吹き出して床は牛乳まみれ〜泣
でも、チョーーーおもしろかったッ!
明日も学校で対決するので
結果を教えるね〜!!!!!
P.N ASUKA
右下には、アタシに似ているキャラクターが
ニコニコ牛乳をのんでいるイラストが描かれていた。
「…くだらな」
ふと窓を見ると、黒煙がたちこめていた。
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