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小窓の住人


異様なオーラが漂っていた。

私が、拒絶しているだけではない。

いつもと明らかに違う。

私の大切な場所に踏み入られているのも嫌悪感だし

私の心にずかずか入ってこられているような。

あんなことを言ったことを、後悔した。


逃げ場所はない。

こちら側には小さな窓しかない。

人間が通れる大きさではない。


小窓が少し陰る。

誰かに呼ばれている気がした。

小窓に目をやると、小さなシルエットが見えた。

「ユミ。ユミ。」


「ユミちゃん。選ばれたんだね。」

白い帽子の下から。のっぺりした口が動いている。

空気が淀む。

ここにくることは、難しいはずだ。

学校の図書室に入ってカウンター側に、ドアがある。

そのドアをあけると、もう必要のない本が置かれている倉庫になっていて

文房具や図書館カードがしまわれている棚がある。

そこをあけると、下部にもうひとつ扉があり

鍵がかかっている。

そこを鍵であけると、地下につながる簡易的な階段がある。


全く気づかなかった。


白い帽子の、ほこりをフッと息をはきほろうと

ゆっくりとこちらへ近づいてきた。

「来ないで」


「ユミ。ユミ。願うんだ。」

窓越しに、曇った声が聞こえる。

ペペの声は、私にしか聞こえないのだろうか。

でも、あのヤンキーにも聞こえてたっけ…。


震える足で、後方に離れるが壁でもう進めない。

床に落ちた本に目をやる

”DYSTOPIA OF COLOR"


「きみに色は似合わないよ」

私の目に、見た事も無いコントラストが写ったその瞬間

胸のブローチが強く光った。

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