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赤松健参議院議員の講演

概要

本noteは2023年6月10日に早稲田大学小野記念講堂及びZOOM中継にて開催された、第1回「US-Asia Comparative Copyright Law Roundtable (June 10, 2023) / U.S.-Asia国際著作権シンポジウム[人工知能と著作権法]」
(https://rclip.jp/2023/04/08/20230610/)
にて、登壇者の赤松健参議院議員の講演内容を文字起こししたものです。
・強調的な口調の部分は太字で示しています。
・幅広い議論のためにコンテクストが必要と思われる用語などについて、(*コメント)の形でコメントを適宜挿入しています。
・その場で訂正された言い間違いやどもりについては一部省くあるいは補うなどしています。
・ご意見ご感想などSNS上で自由に発信してください。その際、このページのテキストの一部または全部を転載する、あるいはスクリーンショットで画像化する等の一切の行為を推奨します。
・翻訳はご自由に行なってください。

文字起こし本文

皆さんこんにちは 参議院議員の赤松健 と申します。
私ですね、元漫画家でありまして 『ラブひな』ですとかですね 『魔法先生ネギま!』 『UQ HOLDER!』 そういった漫画を主に週刊少年マガジン、 ジャンプじゃないですよ、マガジンで描いておりました。

それであの去年ですね、しかも参議院選挙に立候補しまして、当選して今あの参議院議員となっております。
さらにですね、公益社団法人日本漫画家協会常務理事、これの著作権部の担当もやっておりまして、今回はですね、クリエイター本人、そしてローメーカー(*lawmaker :立法権者)、そしてですね、権利者団体の常務理事としてお話しさせていただきたいと思います。

主に日本の この AI のこの主にね 画像生成AIですね、これのあの現状についてご報告いたします。
えっとですね、私の取り組みなんですけども、自民党のあのデジタル社会推進本部のAIPTプロジェクトチーム、これも事務局次長(*ネットメディア局次長を党HPで確認)、もう1個デジタルコンテンツ小委員会(*デジタルコンテンツ戦略小委員会)これね著作権法なんかの検討するところですね。これのどちらも役員やっておりまして、ここがいろんな各業界団体からも海外も含めてこれね呼んでヒアリングを行うということなんですよね。

それであのローメーカーとしてはAI開発者、OpenAI ですとか StabilityAI とか Microsoft 、そういった企業さんをお呼びしてですね、ヒアリングすると。さらにクリエイターとして、いろんなね、こうAIはこれ気に入らないこれ反対だ、という方々います。そういう方々から直接お話を聞くということもやってまいりました。

さらに、漫画家協会の理事として、著作権のね、管理事業法人とかからもヒアリングを行ったり意見交換を行ったりしているということがあります。
そして今ですね、ところであのEUではAIのね主にハイリスクAIですよね、これの規制案を中心に議論してます。そしてこの間G7、これ広島AIプロセスというので今年中にいろんな結論まとめるということは行われていました

日本ではですね、これ著作権法の議論も始まってるんですけど、実際のところですね、主に画像生成AIの苦情、これで日々口論が行われております。ゲーム業界ではですね、すでにこうすごい活用されてるんです。いろんな登場人物のセリフなんかをAIで作ったり、その色んなテクスチャもそうですけども、漫画の現場ではですね、AIで生成された絵を参考にして0から作画するような利用例が多いようです。

私はですね、漫画家協会、まあ権利者団体の常務理事なのでAIのトップ企業とですね主に経済的な見返りの話をしております。先ほどあの StabilityAI とかOpenAI、Microsoft ヒアリングすると先ほど私言いましたけど、ですね、そこで私は必ずですね、手を挙げて質問します。あなた方 AI を作ってる企業さん、我々クリエイター、著作者団体、権利者団体に経済的な見返りをする準備はありますか? 必ず聞く。その3社にも聞きました私。するとですね、必ず前向きな回答が来ます。是非そうしたいと。そういう準備があるというようなことがあるんですね。

特にしかしですね、特に初心者中級者までのイラストレーターからは毎日のように何十通DMきます。苦情が多く来ます。特にLoRA、Low Rank Adaption、特定の作家さんの画風を真似るみたいなこう手法があるんですね。これに関してですね、怪しげなビジネスがすでに色々起こっていて、非常に評判が悪いと。これ対応考えなくちゃいけないなと思います。

ただ私が例えばその絵だけじゃなくても、私がそのアシスタント、漫画のアシスタントの募集サイトやってるんですけども、そこにね、実際に絵をかけないけどAIに書かせるだけのアシスタント希望者、アシスタント代行出てくるに違いないです。そういうもの利用規約でですね 禁止せざるを得ないですよ

私はですね、その法規制とかね、ガイドライン考えていました。いましたが、結論から言うとなかなか難しいです。

ちょっとクリエイターが画像生成AIをどう思ってるのかっていうのはちょっとまとめますけども、ネガティブな意見はねこれ自分の絵柄、これ一番重要です。絵柄の要素が簡単に抽出されてお金儲けに使われる、これ悔しいと。これ絵描きとしては分かります。あとこういうね 非常にこう不安定なツールだからリーガルリスクがあって、コンテンツ産業とか使えないよと。残念だろうというようなことがあります。

いろいろね、絵の練習をする人が減るんじゃないかとかね、こう児ポ(*児童ポルノ)とかフェイクニュースに自分のイラストを悪用されるのは悔しいじゃないか、ネガティブな意見あります。

ポジティブなものだといろんな面倒くさい作業をAIに任せて自分のクリエイティブに集中できる。新しい表現が可能になってくる。こういうのすごいポジティブな意見ですよね。そして先ほど出ましたけどアイデア出しに使えますもういっぱいアイデアを絵柄もねポーズ とか色味とか、こういうものがいっぱい出して、あ、こういう発想があったんだ。どうしてもね、自分の得意な色味とか自分の得意なポーズしかね描かなくなってくるんですよ絵描きはね。それでアイデア出しに使える。さらに新しいビジネスが生まれるというようなことがあるかもしれないです。

そしてですね、私クリエイターとして反AI? まあ画像生成AIの規制派と言ってみましょうかね。これ求めていることをね、インタビューしてきました。1個1個ちょっと説明します。実際に聞いてきたものです。えっとですね、1番目、著作権法30条の4但書きを改正して学習禁止範囲を明確化してくれと。これものすごい多いです。みんな言ってきます。これですね、なんですけど、そもそもの但書きの解釈が今これ問題になってるんであって、解釈の明確化が先決ですよ。そこを飛ばして立法してくれってなかなか難しいです。法改正にはですね年単位の時間かかるんです。今からやるとすると来年の、え~来年審議して再来年ってことになるでしょうね。そういうようなことではなかなか苦情に対して対応できませんよね。

次、2行目、2つ目。これもすごく多いです。オプトインでの学習を法律で義務化してくれ。もうものすごい来ますこれ。なんですけどですね、これは学習の書き込み、あ、読み込みをですね、一部違法化しようってことですよね。学習をね。これ大変な法改正になりますよ。あのですね、画像だけオプトインにしてくれっていう、たぶんね、イラストレーターの方が思ってるんですが、テキストは OK なんですかと。テキストはいいですよ、と軽くおっしゃる。それはね、テキストもね、オプトイン必須ってことになりますよ。新聞社なんか求めてますよ一部ね。テキストも画像もオプトイン必須とかにでもなるとですね、学習ですね、日本は180度方針転換ですよこれ。大変なインパクトですよ。海外でもね、オプトイン必須にしようなんて法改正してるとこどこにもないですよこれ。あまりにも技術開発をあまりにもねこれ阻害してしまうので、オプトインをねこれ学習を法律で義務化するのは非常に厳しいと私は思っている。日本だけオプトインにしても海外で読み込ませ放題だったらこれ実効性に欠けますよね。あと画像化したテキストはどうなのとか、画像のバイナリデータをねテキスト化したらどうなる、色んな抜け道がありそうですよね。

3番目。これも非常に多いです。苦情としてはね、オプトアウトで学習済みデータから自分の絵をポコッと削除してほしいと。これもですね、オプトアウトの削除は非常に技術的には難しいです。先ほど LoRAファイルとかまあ基盤モデルもそうですけど中にはですね、絵が入ってないんですよね、これLoRA LowRankAdaptionですけど、特定の作家の画風を例えば中に記憶させたものだと思うんですけど、LoRAファイルの中にはですね画像は入ってないんですよね。変換器の中身はそのもの画像、そのものを記憶してるわけじゃなくて、ノイズの取り除き方を表す数値の塊、まあ行列ですよね、こういうものが入っててもし画像が入ってればこれ、訴えて勝てますよね。これ入ってないとこれ非常にこう裁判やったらどうなるのか、依拠性をどうやって立証するのか。これ30条の4の但書きの該当性を争うの? 色々考えてこれなかなか難しいというふうなことだと思います。

戻りまして4つ目、何を学習させたかの透明化をですね、法律で義務化せよ。ちょっと法律 でっていうのはちょっとあれですけども、これ結構いいと思います。何を学習させたかってのが分かってくれば ですね、そっから払う経済的なね、見返りなんか払う準備もできますしね。非常に納得の行きやすい。法律でってまた年単位でかかってしまうのでこれを ソフト ロー(*緩やかな非法的規範)まあガイドラインで検討すべきだと私は思います。

最後、学習に関してですね、補償金制度を創設しろ。これもすごく多いですね。法律でお金を払わないと学習できないっての強制すると30条の4の後退になって技術の発展に好ましくないと思います。あとですね学習について、あらゆる 学習について法律で補償金制度を創設するならしっかりね、権利者に分配しなくちゃいけないですよね。これなかなか難しいんです。このスキーム作るのはね。で後で出てくるんですけど法律じゃなくてもですね、利益還元ができれば権利者団体としてはまあまあ いいです。

対価還元スキームについてちょっと考えてみたんですけど。まずこれ Youtube なんかはですね、包括契約というものを例えば JASRAC と結んでます。YouTube の全ての収益の1.何パーセントですね、 JASRAC にあげてるんですよね。それをどう分配するかは JASRAC がちゃんと決めるわけですけど、YouTube はそれ知らないこと、どうでもいいことなんですよね YouTube にとってはね。

(*赤松議員の対応策1)
こういうようなことをやっているんですけど、これと同じようにですね、OpenAI だの StabilityAI だの Microsoft だの そういうものがもし収益があったときに権利者団体に支払って、それを各クリエイターに分配するのは不可能なので(*なお JASRAC は著作権信託契約を結んだ、著作権者あるいは著作権者と著作権譲渡契約を結んだ出版社 に対し一定料率で分配している)基金としてねこれ文化事業として、漫画、アニメ、イラスト、そういったものの発展に寄与するというようなことをして各クリエイターの産業をね、後押しすると。こういうようなもの、1個考えられると思います。 ただですねこれ問題点はクリエイターがこれ 全然納得しないということがありますね。

あとこれね現状、各社ですねAIの制作の作ってるところ、赤字です。全然黒字になってないので原資に乏しいです。解決金と書いてありますけどこれね、著作権に応じた分配じゃないので、解決金 っていう名目がこれ不明瞭ですよね。で漫画協会なんかもですね、大御所漫画家さんはみんな所属してますけど、若手は所属してないです。こういった権利者団体に属さないクリエイターの使いが非常に問題ですよね。
(*対応策1ここまで)

(*赤松議員の対応策2)
そしてこれにプラスして検討2。こちらも考えてみたんですけど、先ほどのLoRAって言いましたよね、特化モデルですよね。こちらだと例えば、ある特定の有名作家の絵柄ありますよね。これで有料でこの使ってもらうとこれはもちろん、特定のその人の作家さんの許諾を得てですね、そしてその使用料をに関して、かなり大きな金額がその元々の作家さんに行く というような契約になってるとすると、これ結構ありえますよね。許諾ベースで特定のクリエイターの著作物を学習させてクリエイター特化型のモデルを開発すると。そして正規版のLoRAとしてクリエイターに対価を支払う。

これでですね何がこれキモかというとですね、 今すでに特定の作家さんの絵柄を学習した追加学習のデータ LoRAが出回りまくってるんですね。これがものすごく問題になっている。ただ先ほど言ったようにこれ裁判でなかなか勝つのが難しいとするとどういう手法がありうるかというと、強い、便利な使いやすい、正規版でですね、非正規版が駆逐できる例がかなりあるんですよね。まあCDをリッピング(*CDやDVDからデータを取り出してコピーしファイル化すること)したり Winny ありましたね、昔ね。WinMX もそうですけど(* Winny と WinMX はともに00年代初頭に開発されたPeerToPeerファイル共有ソフト)それがですね iTunes とかね、あと今ではサブスクのね Spotify とかそういうので駆逐されて行きますよね。昔DVDをねこうリッピングしてこれずいぶん出回ってました。Torrent(*PeerToPeerファイル共有ソフト)とかでもね。これが ですね。今 Netflix とかで駆逐されてますね。今映画をですね、海賊版で見る人っていないですよね。こういう強い正規版を出すことによって、そうでない LoRAと区別していく。これがあるんじゃないかと。
(*対応策2ここまで)

そしてこういうものは私の知り合いなんかでこう、脳梗塞で右半身が動かなくなっちゃったとかね パーキンソン病でもう描けないという方々もですね、作家さんも今これから自分の絵柄で、また絵が描けるというような希望も出てくる。この1とですね 2を合わせてやっていって、正規版の普及を目指していくというのがいいのではないかと、私は今考えております。

今ですね、そして私の今の立場なんですけど、政府の方から画像生成AIに関する開発者向けのガイドライン、どういうものかと言うとちょうどAdobeからですね、Firefly 出ましたね。Fireflyすごいですよね。もし、これあの Fireflyエンタープライズ版で作った画像で訴訟されたらAdobeが全額保証すると。すごい自信 ですよね。こういうような透明性があって還元 もできるというようなものを作りなさいよ。なるべくってことね。政府のガイドラインとして出すと。

利用者に対してももちろんガイドライン出す。そのコンテンツ認証イニシアチブ (*CAI、Adobe主催の画像トレーサビリティシステム開発団体、およびその提供する枠組)じゃないですけどどういう風なものを使ってどういう風に作ってきたかのヒストリーがもちろん 載ってるとか、なるべく正規版は使おうねとかそういうようなことをね、ガイドラインとして2種類発表すべきだと私は思っています。
その後ですね、良質なデータセットを整備して信頼性の高い日本発の生成AIを作るべし。と思ってます。それはねもちろんクリエイターに適切な還元があって世界的に需要がある、こういった日本の漫画、アニメ、こういった ゲーム、こういったもののデザインをですね、世界にこう普及させて、席巻してですね、日本のね、日本語の、そして日本の文化のプレゼンスを高めていく、こういったものをね、私がやるべきだと思ってるんですよね。

もう1個最後にですね、今 Pixiv ですとかコンピュータの画像を投稿するサイトがえっとですね、AI 禁止の方向に流れてますが、私はそういった ゾーニング的なものっていうのは非常に肯定的に見てます。一方はこう、エッジの効いたすごいCG、最先端の絵が、あのCGが できる。もう1個は経営者が嫌がるようなことやらない。コピーできなくしていく。みたいなことってのゾーニングしていく。それによって安心するって非常にでかいと思います。反AIだからといってAI 使わないで閉じこもってるっていう風なネガティブな見方もあるかもしれないですけど、ウォーターマークの研究、進むかもしれないですよ。あとAIが作ったのか、そうじゃないのかっていう研究が進むかもしれないですよ。 その後コピーをなるべくさせないとかね、NFT を使って何かそういうものをとれさせるとか(*発言ママ)って技術が進むかもしれない。

私はその AI が嫌だ そういうものをコピーしないでくれ 私の我々のものを使わないでくれっていう人たちの立場もね 十分に踏まえた(*踏みつけたの誤り?)上でこれから施策やっていくと、良いと思っています。私からは以上です。ありがとうございました。

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