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【漫画】アックス第147号【感想】


若草ヒヨスちゃんの「めだかのこ」が帰ってきて嬉しい。帰ってきたヒヨスちゃん、だ。
この人の描く目つきと表情、ちょっとした動きにある可愛げが好き。
魔女って何ですか、の答え。落ちこぼれだった自分、5時のチャイムといっしょに砕け散るガラスみたいな心は執着の成れの果てだったのか。
落ちこぼれだから、辛いのか。寂しいのか。疎外感に苛まれ、ぼんやりした心を抱えてもなお魔女で居続けていたのか。
感性(こころ)を無くしてもなお頂点に立ち続けることが辛く悲しいのか。どうしたらいいんだろう、どう生きたら…?

ムスカリ様とエーデルは、悲しい名コンビだなあ。
リラちゃんの寝起きの気だるそうな表情もかわいい。元気だったり元気じゃなかったりするのが当たり前で、いつも元気!感謝と美徳!SDGs!!みてえな奴のが異常なので、ヒヨスちゃんはヒヨスちゃんなりに生きて描いて笑っててくれればいいと思います。
最後の謎のアジアン美人が気になるところ…。


ドブリンさんの「アイスキャンデー屋さん」
私がガキの頃にも、もうこんなアイスキャンデー屋さんは来なくなってた。駄菓子屋さんの店先にあったエスキモーって書いてある冷凍庫にビックリするぐらい霜がついてて、そん中にアイスがあったのが最初の記憶だ。それよりさらに前は、田舎道をこんな風にアイス屋さんが来てたんだなあ。
ドブリンさんの描く子供たちがみんな元気で素直で、だからこそちょっと悪いこともしてしまうけど救いもあって。アイスキャンデーが食べたいから、食べれないとあんなこと言っちゃう。でも、どうしても食べたい……子供にとってアイスが食えないって一大事だもんな。
おじいちゃんのお布団の下に、どうして寛永通宝があったんだろう?
何か意味があるんだろうか。
あの「見るだけ、見るだけ……」から布団をめくって、そこへアイス屋さんが来て、サっとかっぱらって走る。あの息の詰まるようなシーンが絵柄の可愛さ、丸っこさと相まって凄くいい。アイス屋さんはふたっこがアイス買えないの知ってるから、古いお金を持って来たけど売り物にならなくなったアイスを一つくれて。
だけど、何かを察して諭してくれる。
この子たちは、コレでグレずに済むんだろうなあ。

高橋つねさんの「ベテラン」
雰囲気の悪いバイトの話。なんかもう、ほんと、なんでわざわざ漫画読んでまでこんなありきたりな愚痴みたいな話を浴びてるのか、ってぐらいリアルで、誰かから聞いた話を名前や部署だけ変えてそのまま描いたぐらい臨場感がある。
苛立ち、転嫁、悪意の無いハラスメント、世代差や立場の差が如実に出てて、なんというか
知らねえ田舎町の県道にある知らない店んなかで実際こんなことあるんだろうなー
っていう漫画。凄い。凄すぎて取り付く島もない。出て来る人がみんな綺麗でもカッコよくもないし、優しくも冷たくもない。みんなフツー。
ここまでなんの夢やファンタジーもなく、淡々とケツの座りの悪い日常を切り取って描けるってのは観察力とか表情を作るセンス、それに台詞回しの妙もあるんだと思う。
コレは凄い。凄いけど読む人を選ぶと言うか、このままTwitterやヤフーニュースに載せたらコメント欄が地獄みてえになりそう(大真面目にリアリティを絶賛しています)。

具伊井戸夫さんの「はネル飛蝗」
スネに傷持つ男たちが集う自立支援グループホームを舞台にした物語。治安の悪い(肥後ずいきの張り紙があるから九州なのかな?)街角に寄り集まって暮らすおじさんたち。
それ以外の人々が殆ど黒い影で描かれていると、味気ないながらもなんとなく施設っぽい臭いが漂ってそうな暮らしぶりとの陰影が際立つ気がする。馬川(職員)さんは若いけど修羅場潜ってそう。あと夜はクラブに居そう。
短い間にみんなが離れ離れになって、だけど一人だけ残ってしまった車いすのシャチ端さんが勉強の末、最後に叶えたい願いとは。そこだけ急にファンタジーで、だけどしんみりしちゃう終わり方がなんとも憎めない。
タピオカ屋にならんでる連中の影が、他の影と明らかに違うのも細かくていい。
コンビニとタピオカ屋の店員のお姉さんだけ描いてあるのも、なにか見え方を表しているのだろうか。

ツージーQさんの「ぶどう園物語第9話」
何気にアックスを買い始めて、何にも知らずに読んでいちばん気に入ったのはこの作品かもしれない。毎号楽しみにしております。くすぶってるバンドマンの懐かしくやり切れない日々。自分の時も、友達の後輩がやってるバンドの練習を見学がてら遊びに行ったらリーダー格のいい年こいたオッサンが超スパルタで、どう考えても狭いスタジオでひと暴れされたら後輩くんのが強いだろうに上下関係で喧嘩するタイプのイヤなオッサンだったなーとか。自分らは、絶対あんなバンドやらないようにしような、とその後みんなで密かに誓い合ったことを思い出す。後輩くんは和製マーク・ハントみたいな体格してて、聞いたらやっぱり総合格闘技をやっていた。私(少林寺拳法)とギターの丸山君(正道会館)は格闘技好きなんで嬉しくって、音楽より格闘技の話ばかりしていたな。
バンドマンって100人いたら95人ぐらいは良い人、明るい人、面白い人っていう属性に入る人たちなんだけど、残りが産廃レベルだからそういうのにあたると結構キツイ。才能とかセンスとは別。そうじゃなくても方向性が合わないとか、やり方が受け入れがたいとか、些細なことでも結構なストレスになるのは何をしてても同じか。

古いものは新しくなる、消滅するために新しくなる。
何でもいいから壊してしまえる、日常を非日常にする手段をみんな探してる。それが漫画の人も、音楽の人も、プロレスや小説の人もいる。私は小説の人になりたい。

杉作J太郎さんのコラム「ふんどしのはらわた」
怒りを何で解消するか、何に向かうか。買い物、暴飲暴食、はたまた犯罪…?
杉作さんは食欲だという。私も同じで、私も体重が100キロを超えている。怒りと言うかストレスが溜まると食っちゃうし、一度そうやって食っちゃうとしばらく食わないで抑えてた反動でまた食ってしまう悪循環。
杉作さんの年齢で100キロは確かに心配である。そこで蕎麦。
目標を持って、自分で努力と工夫をしているのに、横から口出しされると腹立つよなあ…。
毎回、タモリ俱楽部やFMWの解説席に居た杉作さんと違う一面が見られて楽しみな連載です。

今村風子さんの「ひがん」
読んで字のごとく、まさにそれを描いている静かな作品。セリフひとつなく、何が起こっているのか傍でじっと見つめているような。自分のばあ様の時もこんなだったらいいな、と思う。

今回大プッシュされているファミリーレストランさんという方のレーズンラムと申します、なる本。どっちが名前で、いやレイアウトを見るとどれの何処までが作者で作品名なのかもよくわからないのだが、内容がちょっと載っているのを見ればさらに何もかもわからなくなる。コレをイチオシでどーんと持ってくる豊かさ。
彫刻と漫画を行ったり来たりする器用貧乏の不器用版…というか何でも出来るようでベクトルが一つだからふり幅の中をウロウロしながらも辿り着くべき場所に向かっているということなのかも。その行き先が山奥のファミレスなのか(ここ好き)。
山奥にこのファミレスがあったら最初は安心するだろうし興味本位で入店もするが、帰って来られなくなりそうだ。
帰って来られないキッドさんである。

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