アサシンクリード シャドウズ 問題の根本はUbiの振る舞いにある

私はシャドウズの史実描写が正しいとか正しくないとか細かく指摘するつもりはない。
前提として、言語的にも文化的にも地理的にも離れている国の時代考証を正確に行えるはずがない。あえて言えば過去作と同等の品質を出せるはずがないと思っている。
その上で、私が最も批判しているのはUbisoftの無神経さである。

最大の落ち度は「弥助を主人公に据えた事への言い訳を考えていなかった」こと

日本が舞台のアサクリが出ると聞いて「主人公は日本人じゃないかも」と予想した者はいるだろうか?
弥助を肯定的に見るにしても否定的に見るにしても「どうして弥助を主人公にしたんだ?」と疑問を持ったはずだ。
Ubisoftは当然予想できるはずの疑問に対して回答を用意していなかった
いや、正確に言えば、回答は一時的にはあった。

弥助については、まず”私たちの侍”、つまり日本人ではない私たちの目になれる人物を探していました

https://www.famitsu.com/article/202405/5194
現在は該当部分を削除済み

この回答が炎上した後、いつのまにか該当部分が削除されていた。
理由の説明が全くないため、ファミ通の誤訳である可能性すらある。ひとまず重要なのはUbisoftは弥助の起用理由の説明を避けているということだ(別のインタビューでは「信長の側近の視点が欲しかった」といった回答をしているが、これは日本人武士でもいいので弥助でなくてはならない根本的な説明ではない)。
これによって「Ubisoftは日本人を軽視しているのではないか?」と疑惑をかけられたのは当然の流れだと思う。

インタビュー/声明に含まれる違和感

ゲームプレイをしっかりと見せて,私たちが目指すものをしっかり伝えられるように努力していきたいと思います。

https://www.4gamer.net/games/656/G065622/20240609039/

私たちがこの作品に注いだ情熱と努力と愛が皆さまに伝わり、引き続き弊社のゲームをご愛顧いただくことを願ってやみません。

https://x.com/ubisoft_japan/status/1815674629643719061?s=46

多くの人は気にしないかもしれないが、批判に対するスタンスが「私たちの努力が伝わっていない」で一貫している点が非常に気になった。
本心では「私たちはちゃんと作ってるけど誤解されて叩かれてる」と思っているのかもしれない。
ある国を題材にして、その国民から反発を受けたのなら、全面的に謝罪して改善に取り組むと言うべきではないだろうか? いっそ嘘でもいいから。

コンセプトアートに無断使用の資料が含まれていて権利者からの削除依頼を拒否した件とか
弥助の刀としてワンピースの刀を展示しておいて未だに何の説明もない件とか
ミスは誰にでもある。
前述したように日本の時代考証は難しいから仕方ないと思う部分もある。
だが、ミスを指摘されても説明せず押し通そうとするのは不誠実すぎるだろう。

たとえ時代考証の品質が低くても、できる限り文化を尊重しようという態度を見せることはできるはずだ。それがUbisoftの振る舞いからは感じられなかった。

悪意がなければ問題ないのか?

Ubisoftに悪意はないから問題ない」という擁護がある。
悪意が無いのであれば、これまで述べた通り、弥助の説明不足/不誠実な対応はどうして生まれたのだろうか。
こんなに反発があるとは思ってなかったから?
売上が大きくない日本に対応するのはコストが勿体無いから?
どう解釈しても、日本人に対して配慮が足りず、軽視しているという事実は覆らない。
そして、悪意なく、無意識的に特定の集団を軽視するという行為は何と呼ばれるだろうか。
私はそれが「差別」に他ならないと思っている。

余談:シャドウズに対する擁護が『アサシンクリード』シリーズ全体を貶めている

シャドウズの史実の再現性が低いという批判に対して以下のような擁護がある。

  • 『アサシンクリード』シリーズは史実を正確に扱ったことなんてない

  • 『アサシンクリード』シリーズはファンタジーだ

これらはあまりにもバカバカしい擁護だと思っている。私の意見を書いておく。

  • 『アサシンクリード』シリーズは史実とフィクションが共存しているゲームである(そもそも、史実を題材にしているゲーム全てがそうだ)

  • 史実の取り扱いには理解と尊重があるべきである

批判している人達は『アサシンクリード』シリーズがフィクションを含む作品であることは承知だろう。その上で、史実部分がおかしいと言っているに過ぎない。
まるで史実が全く存在しないかのような擁護は『アサシンクリード』のコンセプトを否定するだけでなく、シリーズ全体を貶めていることに気付くべきだろう。

ちなみに「史実に忠実かどうかじゃなく面白さで評価するべき」という意見も見たが、これは批判が起こっている動機を理解していないと思う。
前述したように「Ubisoftは日本人を軽視しているのではないか?」という疑惑があり、史実に注目しているのはその検証のためだ。面白さを評価するためにやっていることではない

なお、ゲームなんだから歴史や文化をどう扱ってもいいじゃんと言う人もいるだろうが、申し訳ないが根本的に価値観が合わないので、議論しようと思わない。私はゲームであっても尊重するべきポイントがあるというのが常識だと思う。

余談:パリ五輪開会式がシャドウズ炎上の答え合わせだった

パフォーマンスのためならどんな歴史でもネタにしていいっていうのがフランスにおける歴史の扱い方なんだなあと。
自国をネタにするだけなら構わないが、同様に他国をネタにすることは許されないだろう。
もしかしたら、Ubisoftは日本を軽視しているのではなくて、あらゆる歴史を軽視しているのかもしれない。その方が良いのかな?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?