PMBOKガイド第7版を意味分節理論で読む(4)
プロジェクト世界の対立と両義的媒介項との出会いを求めて、
躓き(つまづき)ながら創造的に誤読していく。
横文字の美術館で、平凡に見えて奥深い絵画を探す。
鑑賞の中で集団・労働・価値の意味を問う。
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前回の記事
価値実現システム
価値実現の構成要素
組織の戦略 =/= 価値実現システム
この2つの対立は意味の関係になる。組織の戦略を言い換えると、価値実現システムになり、価値実現システムを言い換えると組織の戦略になる。
成果 / ベネフィット(=利益・恩恵)
ベネフィット / 価値
成果が直接的に価値を生み出すのではなく、ベネフィットを介する。
価値は社会的である。成果は意識的にまたは無意識的にさまざまなものと比較(対比)され、同じところは見えなくなり、異なるところが際立つ。
一度、ベネフィットという比較を介して、価値を測っている。
情報の流れ
情報 / 適応
「情報」もまた現代社会では平凡な言葉である。
普段、情報と聞いてイメージするのはシンボル(言葉)を並べた列(…Δ-Δ-Δ-…)である。その情報を受取、何らかの処理を行う。
「適応」と「情報を受け取って行う処理」はイコールなのだだろうか?手続きを行うだけで、環境変化に適応ができるのか。環境に適応する手続きを定義しておけば可能なだろうが、それは予測し準備しておいたときだ。環境の変化は突然起こる、すべてに準備することは不可能だ。
適応するためには、「文字通り」の意味だけではなく、「文字に書かれていない」意味を読み解く必要がある。文字に書かれていない(書かれているけど見過ごしている)普通ではななにかをすくい上げ、適応する必要がある。
戦略を通して、活動における「ものさし」を見出し、情報と照らし合わせ、普通だけど異常なことに気づき、活動し続けることが「環境に適応し続ける」ことではないか。
この図はやたらと心に引っかかる。
フィードバックが差分調整のために利用される。上級管理職が作る戦略が正しいこと前提に情報が流れる。
戦略 / 正しい
強い執着がある。(上級管理職は不安かもしれないが。)
価値のパフォーマンス分析の結果、戦略が間違っているのか、やり方がまちがっているのか?急に現れた上級管理職は何者か?戦略と全体の整合性はどこへいったのか?謎が多い図である。
謎の一つが戦略の整合性で定常業務に戦略が渡されないのが不自然である。
定常業務でサポートとメンテンナンスの情報しか渡していないので、成果、ベネフィット、価値の分析はできず、ポートフォリオ・プログラム・プロジェクトを分析するのも不自然で、活動の結果の分析の責任は各々にある。戦略の分析は戦略立案でしか行えない。戦略立案、定常業務、ポートフォリオの要素で考えると三角の形であれば整合性を保てるのではないか?ということで図を再考してみました。
組織のガバナンス・システム
ガバナンス・システム / 統合的な構造
サービスでもなく、情報でもなく構造を提供する。
要素が入れ替わっても機能する構造を提供する。
プロジェクトに関連した職務
集団の労働を凝縮し、価値に変えていくことが重要である。
分権的 / 集権的
プロジェクトマネジメントにとって分権的、集権的は要素であって構造ではない。集権と分権のグラデーションがあり、どちらかを選ばないといけないというものでもない。
管理と調整
健康、安全、福祉 / 監視
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守るもの / 束縛するもの
通常、両者は置き換わる関係にない。監視という言葉が生活を脅かす文脈でつかわれるからだ。日常感覚では「観察」の意味合いが近い。事細かに確認するという意味では「監視」なのかもしれない。
監視 =/= 観察
ファシリテーションとサポート
コンフリクト / 解消
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対立 / 異なるが同じ
メンバー間の対立から両義的な事柄を発見する。
対立(相違)に対して見落とされる同じを見つける。
事業の方向性と洞察の提供
対話 / 価値
対話という社会的な振る舞いによって、社会的な産物である価値を知る。
何が価値があって、何が価値がないかを知る。価値を定義できれば、プロダクトの方向性は決まる。
資源と方向性の提供
実現 / 終結
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終わった後 / 実現していない
実現は終わった後に現れ、終わったからといって実現したとは限らない。
訳がわらないが、プロジェクトの終わりが本当の終わりとは言えず、終わったと思い込みたいだけで、そもそも終わりなどないのかもしれない。
外部環境
外部環境 / 内部環境
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外 / 内
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(文化がある / 文化がある)
外部環境でもあるが内部環境でもあることが書かれている。
プロダクトマネジメントの考慮事項
ポートフォリオマネジメント、プログラムマネジメント、およびプロダクトマネジメント、そしてプロジェクトマネジメント。異なるが同じものたちである。
労働を凝縮し、価値にかえる営みを如何にして構築するか。
職務という形で登場人物が現れるが、凝縮の構造自体にはたどり着かない。
価値→戦略→職務・支援として設計していく、まるで電子ではなく人間が動くロジック(ソフトウェア)を組み上げていくような活動でもある。
適応の振る舞いはソフトウェアのリファクタリングのようでもある。ソフトウェアエンジニアはプロジェクトマネージャーと似ている気がするものの、人間が持ついい加減さが、似ているところを隠しているのかもしれない。
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