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PMBOKガイド第7版を意味分節理論で読む(4)

プロジェクト世界の対立と両義的媒介項との出会いを求めて、
躓き(つまづき)ながら創造的に誤読していく。
横文字の美術館で、平凡に見えて奥深い絵画を探す。
鑑賞の中で集団・労働・価値の意味を問う。

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前回の記事

価値実現システム

価値実現の構成要素

組織の戦略と整合した価値実現システムを構成する。

プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOKガイド)第7版
+プロジェクトマネジメント標準

組織の戦略 =/= 価値実現システム

この2つの対立は意味の関係になる。組織の戦略を言い換えると、価値実現システムになり、価値実現システムを言い換えると組織の戦略になる。

成果は、組織によって実現される利得であるベネフィットを生み出す。次にベネフィットは価値を生み出す。

プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOKガイド)第7版
+プロジェクトマネジメント標準

成果 / ベネフィット(=利益・恩恵)
ベネフィット / 価値

成果が直接的に価値を生み出すのではなく、ベネフィットを介する。
価値は社会的である。成果は意識的にまたは無意識的にさまざまなものと比較(対比)され、同じところは見えなくなり、異なるところが際立つ。
一度、ベネフィットという比較を介して、価値を測っている。

情報の流れ

価値実現システムが最も効果的に機能するのは、すべての構成要素間で情報やフィードバックが常に共有され、このシステムが戦略に整合し環境に適応し続けているときである。

プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOKガイド)第7版
+プロジェクトマネジメント標準

情報 / 適応

「情報」もまた現代社会では平凡な言葉である。

情報理論に依って、意味との対応付けを完全に外部化し、シンボルを並べたであり[4]情報量として量られるものが情報である。と、捨象してしまう考え方もまたある。

情報 - Wikipedia

普段、情報と聞いてイメージするのはシンボル(言葉)を並べた列(…Δ-Δ-Δ-…)である。その情報を受取、何らかの処理を行う。
「適応」と「情報を受け取って行う処理」はイコールなのだだろうか?手続きを行うだけで、環境変化に適応ができるのか。環境に適応する手続きを定義しておけば可能なだろうが、それは予測し準備しておいたときだ。環境の変化は突然起こる、すべてに準備することは不可能だ。
適応するためには、「文字通り」の意味だけではなく、「文字に書かれていない」意味を読み解く必要がある。文字に書かれていない(書かれているけど見過ごしている)普通ではななにかをすくい上げ、適応する必要がある。
戦略を通して、活動における「ものさし」を見出し、情報と照らし合わせ、普通だけど異常なことに気づき、活動し続けることが「環境に適応し続ける」ことではないか。

"プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOKガイド)第7版
+プロジェクトマネジメント標準"から引用

この図はやたらと心に引っかかる。
フィードバックが差分調整のために利用される。上級管理職が作る戦略が正しいこと前提に情報が流れる。

戦略 / 正しい

強い執着がある。(上級管理職は不安かもしれないが。)
価値のパフォーマンス分析の結果、戦略が間違っているのか、やり方がまちがっているのか?急に現れた上級管理職は何者か?戦略と全体の整合性はどこへいったのか?謎が多い図である。

謎の一つが戦略の整合性で定常業務に戦略が渡されないのが不自然である。
定常業務でサポートとメンテンナンスの情報しか渡していないので、成果、ベネフィット、価値の分析はできず、ポートフォリオ・プログラム・プロジェクトを分析するのも不自然で、活動の結果の分析の責任は各々にある。戦略の分析は戦略立案でしか行えない。戦略立案、定常業務、ポートフォリオの要素で考えると三角の形であれば整合性を保てるのではないか?ということで図を再考してみました。


情報の流れの図を再考

組織のガバナンス・システム

ガバナンス・システムは、環境や価値実現システムのあらゆる構成要素に関連した変更、課題、リスクを評価するための統合的な構造を提供する。

プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOKガイド)第7版
+プロジェクトマネジメント標準

ガバナンス・システム / 統合的な構造

サービスでもなく、情報でもなく構造を提供する。
要素が入れ替わっても機能する構造を提供する。

プロジェクトに関連した職務

集団としての作業を調整することが、どのプロジェクトの成功にとっても極めて重要である。

プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOKガイド)第7版
+プロジェクトマネジメント標準

集団の労働を凝縮し、価値に変えていくことが重要である。

プロジェクトによっては、プロジェクト・チームが自己組織化し自己管理する分権的な調整が向いている。[…]集権的な調整が向いているプロジェクトもある。

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+プロジェクトマネジメント標準

分権的 / 集権的

プロジェクトマネジメントにとって分権的、集権的は要素であって構造ではない。集権と分権のグラデーションがあり、どちらかを選ばないといけないというものでもない。

管理と調整

この職務には、プロジェクト・チーム・メンバーの健康、安全、および全体的な福祉を向上させるための監視と作業が含まれる。

プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOKガイド)第7版
+プロジェクトマネジメント標準

健康、安全、福祉 / 監視
||
守るもの / 束縛するもの

通常、両者は置き換わる関係にない。監視という言葉が生活を脅かす文脈でつかわれるからだ。日常感覚では「観察」の意味合いが近い。事細かに確認するという意味では「監視」なのかもしれない。

監視 =/= 観察

ファシリテーションとサポート

ファシリテーションは、プロジェクト・チームがソリューションに関する合意を形成し、コンフリクトを解消し、意思決定できるよう支援する。

プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOKガイド)第7版
+プロジェクトマネジメント標準

コンフリクト / 解消
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対立 / 異なるが同じ

メンバー間の対立から両義的な事柄を発見する。
対立(相違)に対して見落とされる同じを見つける。

事業の方向性と洞察の提供

この職務には、プロダクトの方向性を決めるために、他のステークホルダーや顧客、プロジェクト・チームと対話することが含まれる。その目的は、プロジェクトの成果物の価値を最大化することである。

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+プロジェクトマネジメント標準

対話 / 価値

対話という社会的な振る舞いによって、社会的な産物である価値を知る。
何が価値があって、何が価値がないかを知る。価値を定義できれば、プロダクトの方向性は決まる。

資源と方向性の提供

意図したビジネス上のベネフィットを確実に実現させるために、プロジェクト終結後にプロジェクトの成果を監視することがある。

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実現 / 終結
||
終わった後 / 実現していない

実現は終わった後に現れ、終わったからといって実現したとは限らない。
訳がわらないが、プロジェクトの終わりが本当の終わりとは言えず、終わったと思い込みたいだけで、そもそも終わりなどないのかもしれない。

外部環境

社会的、文化的な影響と事柄これらの要素には、政治情勢、地域の習慣と伝統、祝祭日やイベント、行動規範、倫理、および認知が含まれる。

プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOKガイド)第7版
+プロジェクトマネジメント標準

外部環境 / 内部環境
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外 / 内
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(文化がある / 文化がある)

外部環境でもあるが内部環境でもあることが書かれている。

プロダクトマネジメントの考慮事項

ポートフォリオマネジメント、プログラムマネジメント、およびプロダクトマネジメントは、本標準のスコープ外であるが、各専門分野およびそれらの関係を理解することは、成果物がプロダクトであるプロジェクトにとって有用な背景情報を提供する。

プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOKガイド)第7版
+プロジェクトマネジメント標準

ポートフォリオマネジメント、プログラムマネジメント、およびプロダクトマネジメント、そしてプロジェクトマネジメント。異なるが同じものたちである。

労働を凝縮し、価値にかえる営みを如何にして構築するか。
職務という形で登場人物が現れるが、凝縮の構造自体にはたどり着かない。
価値→戦略→職務・支援として設計していく、まるで電子ではなく人間が動くロジック(ソフトウェア)を組み上げていくような活動でもある。
適応の振る舞いはソフトウェアのリファクタリングのようでもある。ソフトウェアエンジニアはプロジェクトマネージャーと似ている気がするものの、人間が持ついい加減さが、似ているところを隠しているのかもしれない。

つづく


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