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足骨日記54

皆様明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。

時が流れるのはとても早く、あれから一年です。

そう。

あのイナバウアーから一年です。

一年前に入れたチタンのプレートも入ったまんまです。

今年は忙しくなりそうなので、抜釘はいつになるかわからない〰。

早く機械の体から卒業したいなあ。

昨晩の事、娘からこれにお金いれてとA4サイズの封筒を手渡され、そこには彫刻刀のチラシが印刷されていた。学校の図工の授業で使うようだ。

僕が娘と同じ年の頃にも同じシチュエーションがあった。

当時の僕は10歳ながらも家計が厳しいことは理解していた。

友達よりお小遣いが少なかったし、長男なのに制服や体操服が近所の子供のお下がりだった。
そんなこと言っても野球部には入れてくれたし、大家族だったから家計も大変だったろうと思う。

僕もお母さんにその封筒を渡した。
お母さんからこの一番安いのでいいよね?と言われ、僕は悩むことなく、うん、それでいいよ。と答えた。本当は高い彫刻刀が欲しかったけど、僕がそれを選んでお母さんが辛い思いをするのが嫌だった。

一番安い彫刻刀は柄の部分が細い木製で、高いものは柄というよりグリップと呼べるようなシリコンゴムのような素材で太くてカラフルなものだった。

刃の部分も高いものはセラミック素材で、僕の彫刻刀は錆びるであろう鉄製だった。

彫刻刀が文具やさんから届き、初めての版画の授業のときに僕はとても驚いた。一便安い彫刻刀を持っていたのは僕と兄からのお下がりだという女の子の二人だけで、他の30数人は高い彫刻刀を買っていた。兄弟のお下がりを使う人も高い彫刻刀だった。

僕はとても恥ずかしかったが安い彫刻刀で自分なりの大作の版画を作った。

娘にはこんな思いさせたくないと値段を見てみると僕の持っていた安い彫刻刀は780円で高い彫刻刀は1880円だった。
僕はたったの千円しか変わらなかったのかと驚いた。けれどその千円が僕とお母さんにはたったの千円ではなかったんだろう。

娘はというと1780円の彫刻刀に○をつけていた。妻がこの一番高いやつじゃなくていいの?と聞くが娘的にはケースのデザイン的に1780円のものがいいらいしい。

僕が使っていた安い彫刻刀にはケースなんてついてなくて紙製の箱に入れられていて、その箱には土偶のような顔の木像の写真がプリントされていた。

高い彫刻刀は今風のデザインのケースに変わっていた。

もう二十年以上前の話だなあ。

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