私は歪んでいます
ここ二、三週の週末とか隙間時間に読んだ本について書きたい。
先日、『精神科医に、ご用心!心の問題に向き合うヒント』(2022年12月第1版)という本を読み終わった。この本には2008年1月に刊行された『精神科医はなぜ心を病むのか』を改題、大幅に加筆・修正したものである、と巻末に記されている。
同時並行で読んでいた三宅香帆さんの新刊に逆らうようだが、ついつい『精神科医に、ご用心!心の問題に向き合うヒント』と『精神科医はなぜ心を病むのか』のアマゾンレビューをここに文章化する前に読んでしまった。
そこには著者の西城有朋さんが精神医学の界隈でおそらくあの先生のペンネームだろうと気づいたというようなことが書かれていたのだ。レビューによると認知行動療法がキーワードらしい。私にはさっぱりわからなかった。ただこの本の著者はなぜこんな暴露本を書くことができるのだろうか、書いても今後の仕事に影響が出ないくらいの権力がある人なのかな、そもそも、この著者はなぜこの本を書いたのか、この本を書く目的がいまいちピンとこなかったのだ。
この本をどうとらえるべきか、私自身が解せず、周囲のレビューを欲してしまった。私はこの著者がどなたか全くわからないし、この著者がどこの属性なのかなどについて特別に関心を持たなかった。
認知行動療法がキーワード
私がここで記したいのは認知行動療法についてだ。私は素人なので認知行動療法について多くを語ることができないが、どのようなものか、さらに理解を深められれば今後の患者さんの診療に役立つのではと思った。
最近、端的言えば、私の中で精神科再学習のマイブームがきているのだ。精神科領域を勉強中である。臨床経験を積んで改めて精神医学を勉強しなおすと新たな発見が多い。
そこで、ここ数週間にちょこちょこ参照しており、通し読みも終えた本が『精神科の薬がわかる本』だ。大きな書店の医学書コーナーには平積みしてあることが多い、かなりの人気本だ。
その本の中に、認知行動療法が「うつ」の非薬物療法の一つとして以下のように解説されている。
この認知行動療法の定義はアメリカの医師国家試験アンチョコ本でも共有されており、世界の医学生にとって基本的事項となっているといっていいだろう。
CBT(認知行動療法)はUSMLE上はPanic disorder, Social anxiety disorder, Agoraphobia, Generalized anxiety disorder, Obsessive anxiety disorder, Body dysmorphic disorder, Adjustment disorder, PTSD, Major depressive disorder等の疾患に対して治療法の一つとして提示されている。
歪みって日本語にプラスのニュアンスはあるか否や
このCBTに対する解説をお読みになって、どのように思われるだろうか。なんだか私は胸が苦しくなりました。CBTが奏功するケースも多いでしょう。しかし、このようなCBTが必要な「うつ」だと、もし自分が解釈されたなら、とてもつらい気持ちになるでしょう。「うつ」の患者さんは自分が悪いとただでさえ自分自身を責めてしまう患者さんが多いような気がします。そこに、さらに医者から「認知の歪み」だからと、そのような解釈をされていたとしたら、その歪みを訂正して考え方を変えろとteachされたらどんな気持ちになるでしょうか。あからさまにそのような態度で患者に接してくる医者は少ないかもしれません。ただ、「うつ」の多くのケースが認知の歪みからきていると思われているとしたら悲しくてたまりません。
歪みなく、偏りなく、ものを認知できる人が果たしてどのくらいいるのでしょうか。私は性格も顔も、骨格も、頭も、そしてもちろん「認知」も歪んでいる自信があります。
姫井先生の本のアマゾンレビューが星5つなのは納得です。とても勉強になりました。しかし、ただちょっと私は悲しくなりました。
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