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噛ませ犬ごはん

私の母は料理が苦手だ。
生焼け、焦げすぎ、味がしない…
物心がつくまではそれが当たり前だと思っていた。

小学生になり、「給食」に出会うまでは…

給食のご飯は、びちゃびちゃしていない。
味が染みている。
固すぎて食べられない食材なんかない。

同じメニューでもこんなにも違うのかと子供ながらに衝撃を受けたのを、今でも鮮明に覚えている。

そしてどのような調理方法があるのか、どうしたら給食のようなご飯が、家でも食べられるのか気になった。
そこから徐々に「食」に興味を持ち、自分なりに調べるようになった。
中学生の頃には、ほぼ毎日私が家族の晩御飯を作るようになっていた。

両親は私が幼い頃から共働きで、夜遅くに帰ってくる日も多かった。
しかし、私が作ったご飯を笑顔で「美味しい、美味しい」と何度も言ってくれるのが、この上ない喜びだった。

専門学校卒業後、調理師となった私は、今年ついに自分の店をオープンすることができた。

「私がここまで来れたのは、母の作った噛ませ犬ごはんのおかげだなぁ…」


田原にかさんの毎週ショートショートnoteに参加させていただきました!
うーん、今回もかなり難しかったです…

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