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【ボラティリティ考察①】高ボラティリティ銘柄のプレミアム変化

以前、下記noteにて、ボラティリティの目安について書かせていただきました。ボラティリティの高い、低いの目安として、パーセンタイル・ランクを用いるのが有効ではないか?と。

今回は、その仮定が正しいかどうかを実際のボラティリティ、プレミアムの価格を1か月間記録して確認してみましたので、皆様にご報告させていただきたいと思います。

対象の銘柄

今回の調査では、IV % Rankの高い銘柄を5銘柄、低い銘柄を5銘柄、合計で10銘柄を選定させていただきました。選定した基準は下記となります。

  • ボラティリティは、Market Chameleonに掲載されているIV30のIV % Rankを利用。

  • 高ボラティリティは、IV % Rankが75%以上、低ボラティリティは、IV % Rankが10~20%を選択。

  • オプションの出来高が20K以上、かつ、上位5銘柄。

  • SPYの構成銘柄

こちらの条件で選択された銘柄と7/29時点での数値は下記のとおりとなります。

高ボラティリティ銘柄と7/29時点での数値
低ボラティリティ銘柄と7/29時点での数値

こうやって、IV30を見比べると、銘柄毎にIVの値が全く異なることがわかります。CCJよりIV30の値が小さいWMTの方が高ボラティリティになるのですから。

この10銘柄のATMストラドルのプレミアム価格、OTMストラングル価格が満期までにどのような変化を辿っていくかを調べます。

満期は9/2(金)のオプションチェーンを利用して、1か月間(25営業日)データを計測します。※但し、8/26(金)のデータを取り忘れてしまったので除いております。

それでは、今回は高ボラティリティ銘柄のご報告をさせていただきます。

①Caterpillar(NYSE:CAT)

最初の銘柄は、建設機器大手のキャタピラーになります。まず、CATがどのようなボラティリティの推移になったかを表で纏めてみました。

【CAT】株価・ボラティリティ・プレミアムの推移

こちらの表は、株価、IV、プレミアム価格が、初期、IV最小値、IV最大値、満期日にそれぞれどのような値になったかを纏めたものです。一番左の欄は、7/29の終値時点の数値であり、これを基準としております。

なお、ATMは、ATMストラドルを意味しており、今回は200P(8.72ドル)、200C(7.77ドル)のプレミアムの合計(16.49ドル)を表示しております。

OTMは、OTMストラングルを意味しており、目安として、ATMストラングルの半分くらいのプレミアムになる権利行使価格を選択しております。今回は、190P、210Cとなります。

満期日の数値を確認すると、IV % Rankは74.3%と依然高いボラティリティを示しておりますが、最初の数値より3.5%下落しております。ボラティリティが低下しているにも関わらず、ATM、OTMのプレミアムとも16.3%、5.4%と増加しておりますね。

IV最大値になったのは8/1であり、この時は、IV % Rnakの上昇に伴い、プレミアムも増加しておりますね。IV最小値になったのは、8/15であり、この時は、IV % Rnakが76.2%も下落しており、ATM、OTMのプレミアムもボラティリティの下落に伴い下落していると思われます。

【CAT】IV % Rankとプレミアムの推移

上記グラフは、CATのIV % RankとATM、OTMのプレミアムの変化の推移をグラフにしたものです。赤線がIV % Rankであり、左軸を利用しております。

2本の緑線(濃い、薄い)はプレミアムの推移であり、濃い緑線がATMプレミアム、薄い緑線がOTMプレミアムになります。右軸を利用してます。グラフエリアの緑色部分は、プレミアムが最初の数値より上昇しているエリアとなります。

このグラフを確認すると、高かったIVは次第に減少していき、それに伴ってプレミアムも下落していることがわかります。8月の後半では、株価が徐々に下落すると、IVも上昇に転じて、最終的にはマイナスであったプレミアムはプラスになって着地していることがわかります。

【CAT】株価とIV % Rankの推移

上記グラフは、CATの株価とIV % Rankの推移を表したものになります。IVが急激に上昇している20営業日から23営業日の株価を確認してみると、株価が大きく下落しているのがわかると思います。

23営業日の株価は186.94ドルであり、200PはすでにITMとなっております。満期が近くほぼ時間的価値がないことから、プレミアムは、現物株と同じ値動き(デルタ:-1)となり、どんどん上昇をしていったと思われます。

②Carnival(NYSE:CCL)

次の銘柄はカーニバルです。私はよく知らないのですが、クルーズ船を運航している会社らしいです。ATMストラドルは9Pと9C、OTMストラングルは8Pと10Cとしてます。

【CCL】株価・ボラティリティ・プレミアムの推移

こちらの銘柄は、先ほどのCATとは異なり、満期日には、IV % Rankが、13%上昇しているにも関わらず、ATM、OTMプレミアムは減少となってますね。

IV最大日は満期日の前日であるので満期日と同じ傾向となってます。また、IV最小日(8/16)には、IV % Rankが11.5%も減少しているにも関わらず、ATM、OTMプレミアムはプラスになってますね。

【CCL】IV % Rankとプレミアムの推移

このグラフを見ると、13営業日目がIV最小値の8/16なのですが、その時にプレミアムが最高値を出しているのですよね。そして、それ以降、IVが上昇しているにも関わらず、プレミアムはどんどん剥げていっております。

【CCL】株価とIV % Rankの推移

上記グラフでは、13営業日目に株価が高値を付けていることがわかります。この時の株価は11.19ドルとなっており、ATMストラドルの9CがITMです。9Cのプレミアムは2.29ドルとなっており、時間的価値が0.1ドルしかありませんので、DITMと言えると思います。

よって、CAT同様に、DITMとなったオプションは現物株と同様の値動きになりますので、デルタがプレミアムを押し上げる力が、ベガによるプレミアム減少を上回ったと言えそうです。

③Paypal Holdings(NASDAQ:PYPL)

次の銘柄はペイパルです。ペイパルは日本でも有名ですよね。電子決済サービスの先駆けのような会社ではないでしょうか。あのイーロンマスクも設立に参加していた会社で有名ですよね。ATMストラドルは86Pと86C、OTMストラングルは78Pと95Cとしてます。

【PYPL】株価・ボラティリティ・プレミアムの推移

こちらの銘柄は、満期日にはIV % Rankが31.2%も下落しており、ATM、OTMのプレミアムもそれに応じて減価してますね。8/16にはIVが最小を記録してますが、プレミアムはプラスです。原因はCCLと同じ要因かな?

【PYPL】IV % Rankとプレミアムの推移

大きな流れで見ると、IVの低下によりプレミアムが減価しているという見方もできそうですが、ところどころで興味深い部分がありますね。

3営業日から4営業日にかけてですが、IVが大きく減少しているにも関わらず、プレミアムは上昇に転じてます。株価を見ると89.63ドルから97.92ドルと1日で9.2%も増加してます。

【PYPL】株価とIV % Rankの推移

株価を確認してみると、3営業日から4営業日にかけて、大きく上昇しているのがわかります。株価は89.63ドルから97.92ドル(9.2%)も上昇しております。86CはDITMですので、CAT、CCL同様にデルタの押し上げが、ベガの下落に打ち勝った形と思われます。

④Starbucks(NASDAQ:SBUX)

次はスターバックを確認してみましょう。ATMストラドルは85Pと85C、OTMストラングルは79Pと89Cとしてます。

【SBUX】株価・ボラティリティ・プレミアムの推移

こちらは満期ではわずかにIVが上昇してますが、この程度の上昇であればセータによる減価の方が大きいので、当然、プレミアムは減価しますね。

8/12にはIVが最小値となり、プレミアムも順調に減価してます。計測開始して2日目にはIVは最大値をマークしてますが、プレミアムはそれほど上昇してません。

【SBUX】IV % Rankとプレミアムの推移

IVは最初にピークをつけたあと、徐々に減少し、最後は満期に向けて切り上げております。チャートの形だけ見るとCATと同じ形ですね。

CATでは、その後、プレミアムもIVの上昇に連動して上昇していきますが、SBUXは、反比例するかのように下げていってます。

CATは、IV % Rankが18.3%まで下げた後に74.3%(300%)まで上昇しておりますが、SBUXは、34.0%から77.5%(128%)の上昇となっておりますので、このあたりの差が表れているでしょうか。今回は、ベガの上昇より、セータの減価の方が大きかったということでしょう。

【SBUX】株価とIV % Rankの推移

SBUXの株価とIV %Rankの関係も確認しておきましょう。株価とIVは負の相関関係があるというのが一般的だと思うのですが、上図の黄色部分は株価が下落しているのに、IVも下落しております。同様の現象は、CATでも同日に起こってます。これはどうしてだろう?

IV自体は、プレミアム価格から算出した数値であるので、市場的には、株価の下落で、オプションをどんどん売却していったということかな?

⑤Walmart(NYSE:WMT)

最後の銘柄はウォルマートです!世界最大の小売企業ですね。日本では西友を運営していることで有名ですよ。ATMストラドルは132Pと132C、OTMストラングルは127Pと137Cとしてます。

【WMT】株価・ボラティリティ・プレミアムの推移

これはわかりやすいほど、IVとプレミアムの価格が連動してますね。IVが上昇すれば、プレミアムも上昇し、IVが減少すれば、プレミアムも減少という教科書的な値動きと言えそうです。

【WMT】IV % Rankとプレミアムの推移

グラフをみても、ほぼIV % Rankとプレミアムの値動きは連動していることが確認できますね。

【WMT】株価とIV % Rankの推移

株価は底をつけた後、徐々に回復しながら、13営業日に一気に高値を付けて、IVも下落に転じてます。

まとめ

最初、この検証を実施しようと思った時、高いIVを売っておけば利益は簡単にでる!という結果を期待してました。だから、日々のギリシャ文字の変化までは記録しようと思わなかったのです…

でも、こうやって数値を見比べてみると、ギリシャ文字をみないと要因がわからない事象が多く、プレミアムの値動きは単純ではありませんね💦

株価とIVはざっくり負の相関関係があることはグラフで確認ができますが、一部、正の相関関係がある部分もあります。

今回、5銘柄を結果だけを見ると、4銘柄でショートストラドル、ショートストラングルを売っておけば利益が出せるという結論がでました。

大きな流れでは、高いIVは平均値に回帰することはいえそうですので、高いプレミアムを売ることは合理的かなと思います。ただ、権利行使価格の選択は重要なファクターとなりそうです。

みなさんは、今回のデータを見てどのような印象をお持ちでしょうか。もし、よろしければコメントいただければ幸いです。

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。次回は、低IV銘柄の検証をご報告させていただきます!

ありがとうございました!