見出し画像

【LEAPS戦略②】コールオプションを用いた戦略

みなさん、こんにちは!いつも、こちらのnoteをご覧いただきましてありがとうございます。

前回はLEAPSの特徴をグリークスを見ることで確認をしてきました。今回は、LEAPSを使った具体的な戦略について説明をさせていただきたいと思います。

1)LEAPSを用いた戦略

LEAPSなどと特別な名前がついているとは言え、オプションであることには変わりがないので、結局は下記4種類の戦略があるわけです。

  • LEAPSロング・コール(コール買い)

  • LEAPSショート・コール(コール売り)

  • LEAPSロング・プット(プット買い)

  • LEAPSショート・プット(プット売り)

今回は、LEAPSコールオプションを用いた取引をご紹介したいと思います。

2)LEAPSロング・コール(コール買い)

オプション取引は現物株取引より効率が良い

以前「米国株オプション取引入門」の第8回において、現物株を取引きするより、オプションを売買する方が資金効率がよいと説明をしました。

ウォルトディズニー(DIS)の株を例に、現物株を95.2ドルで購入するより、コールオプションを1.3ドルで購入して、思惑どおりに株価が上昇した場合には、反対売買して利益確定した方が、利益率も高く、資金効率も良いですよというお話でした。

LEAPSもオプションであるので、当然、同じ理屈を適用することが可能です。しかも、前回お伝えしたとおり、タイムディケイによるプレミアムの減価が少ないので、より有利に利用することが可能なわけです。

現物株の代わりにLEAPSロング・コール

単にLEAPSコールオプションを買っても資金効率は良いのですが、ここでは、より現物株に近い状態で買う方法を検討してみましょう。

ここで皆さんに質問ですが「現物株のデルタ(δ)はいくつになるでしょうか?」皆さん、わかりますか?正解は1.0です。なぜなら、株価が100円動いた場合、同じ株を1株持っていた場合、利益も100円増えてますよね?

そして、現物株には、ガンマ(γ)、ベガ(V)、セータ(Θ)もありません、つまり、0になります。(株価が変動していないのに、1年後にセータにより0円になっていたら嫌ですよね。)

一方、LEAPSコールオプションのグリークを確認してみましょう。これは、前回の記事で、SPY(ATM)の満期別のグリークスを紹介しましたが、今回は2年満期ものを確認してみましょう。

前回お伝えしましたが、LEAPSの特徴はガンマ(γ)とセータ(Θ)が小さいことですので、上記の数値をみても0に近い感じはありますね。ベガ(V)はどうしても期先の方が値大きくなりますので、これは現物株と異なるのですが、あとはデルタ(δ)を1に近づけることができれば、疑似的な現物株をコールオプションで作ることができませんかね?

では、コールオプションのデルタ(δ)を1に近づけれるにはどうしたらよいでしょうか?(デルタの章で説明しましたが覚えてますか~?)下図のデルタ(δ)と株価の関係を表すグラフをご覧ください。

そう、DITMとなるコールオプションを購入すればデルタ≒1.0にすることができるわけです。

それでは、SPYを例にDITMのコールオプションのグリークスを確認してみましょう。現在、SPYの株価は396ドルです。SPYのオプションチェーンでデルタ1.0となっているオプションを確認してみましょう(満期2年)。

下図は、SPYの2年後満期のオプションチェーンになります。デルタ(δ)が1.0となる権利行使価格を確認してみると、現在取引可能な一番下限の180ドルのコールオプションがデルタ0.92となります(下図赤枠部分)。今回は180ドルより下の権利行使価格がない状態ですので、こちらを選択することにしましょう。

赤枠部分のBidとAskの数値を確認すると、222.5と227.5となってますので、中値の225ドルくらいを指値すれば約定することができるでしょう。では、この180Cのグリークスを確認してみましょう。

先ほどのATMのオプションと比較して、デルタを1.0に近づけることができました。また、ガンマ(γ)とベガ(V)はATMで最大となりますので、今回の180CはDITMとなりますので、数値を下げることができました。また、セータ(Θ)も下げることができましたので、ほぼ現物株と同じ値動きとなるコールオプションが作ることができました。

ただ、このトレードオフとして、プレミアムの価格が高くなります。先ほどのSPYのATMのプレミアムであれば61ドルで購入できたのですが、今回の180Cは225ドルと約3.7倍の価格となります。(ただ、現物株は396ドルですので、現物株より安く買うことはできます。)

しかし、ATMのプレミアムはすべて時間的価値であるので61ドルすべてが減価しますが、180Cの場合は225ドルの内216ドル(現在の株価−権利行使価格)が本質的価値となりますので、180Cを買った瞬間に権利行使して株を取得しても216ドルの含み益が残ることになります。(ATMの場合は0になります。)

つまり、時間的価値が9ドルしかないので、グリークスの値も現物株に近づいたというわけです。

もし、225ドルが高いなと考えるのであれば、デルタが0.8、0.7と低めの株価を選択するのもいいですね。プレミアムは安くなりますが、その分、グリークスの値は現物株のものより遠ざかる結果となります。

3)LEAPSダイアゴナル・スプレッド

さて、LEAPSコールオプションを利用して、疑似的に現物株を作る方法について説明をしてきましたが、この疑似的現物株を取得した場合、次はどうしましょうか?このまま放置して上昇をお祈りしますか?

こちらの「米国株オプション取引入門」を読んでいる方であれば、そんなことしませんよね?現物株があるのであれば、カバード・コールを仕掛けたらいかがでしょうか?つまり、LEAPSロング・コールに、コール売りを合わせるわけです。そうすれば、ある程度の下落ヘッジも可能になりますよね。

それでは、先ほど購入したSPYの180CのLEAPSロング・コールにコール売りを合わせてみましょう。満期が1年後の10%OTM(435C)のコールのプレミアムを確認してみたところ下記のとおり、17.39~18.6あたりで売買されているようです。中値は約18ドルとなります。

435Cを売りますと、現状の建玉は下記のとおりとなります。

180C@225(1枚)※満期2年後
435C@18(-1枚)※満期1年後

満期日が異なるオプションを損益図で表わすことは難しいので、1年後(コール売りの満期日)の損益を確認してみましょう。

下記は、1年後の収益を纏めた表になります。赤色部分は180Cのプレミアムの価格とその時の収益、青色部分は435Cのプレミアムの価格とその時の収益になります。一番右がその時点の収益となります。

1年後の株価が396ドルと変化がない場合、180Cのプレミアムは220ドルとなり、▲5ドルの損失となります。一方、435CのプレミアムはOTMとなりますので最初に受け取った18ドルが利益となり、合計で13ドルの利益となります。

こちらは疑似的なカバード・コールになりますので、1年後の株価が435ドル(コール売りの権利行使価格)以上になると収益は一定(51ドル)となっていることがわかります。

一方、カバード・コールの効果により、損益分岐点が下がっておりますので、株価が396ドルで変化がなくても13ドルの利益がでているわけです。

また、435CがITMとなった場合は、ローリングを実施することにより、さらに時間的価値を獲得して、疑似的カバード・コールを継続することも可能です。

ちなみに、今回のような満期が異なるオプションの買いと売りを組合わせるスプレッドの事をダイアゴナル・スプレッド(別名タイム・スプレッド)と呼んでおります。特に、オプションにLEAPSを利用したものをLEAPSダイアゴナル・スプレッド(LDS)と呼ぶことがあります。

※ちなみに、ダイアゴナル・スプレッドの内、同じ権利行使価格を利用するものをカレンダー・スプレッドと呼びます。色々な名前があって混乱しますよね。ただ、名前なんてどうでもいい(いずれ覚える)ので、理屈をしっかり覚えておいてくださいね。

4)カバード・コールとダイアゴナル・スプレッドの違い

配当が取得できない

疑似的カバード・コール(ダイアゴナル・スプレッド)は、カバード・コールと似た性質を持ちますが、決定的に異なる部分もあります。それは、ダイアゴナル・スプレッドでは配当を取得できないということです。

カバード・コールの場合は、配当取得+プレミアムで配当利回りをアップさせようというのが趣旨でしたが、ダイアゴナル・スプレッドでは、当然、配当を得ることができません。

戦略的には、LEAPSロング・コールだけでは、株価下落のヘッジがないので、コール売りを組合わせて、株価下落をヘッジしつつ、株価の上昇による利益を狙うという戦略になります。

もし、上昇利益を固定してもよいのであれば、LEAPSロング・コールと満期が同じ(2年後)コールを売ることで、利益、損失を固定するブルコール・スプレッドを組むというのも手段の一つです。

※ブルコール・スプレッドについて下記講座で説明しておりますので、必要に応じて確認下さい。

税の取り扱いが異なる

カバード・コールで利益を確定した場合は、現物株取引として譲渡所得で確定申告をする必要がありますが、ダイアゴナル・スプレッドの場合は、オプション取引であるので雑所得として申告を行うことになります。

オプション取引をメインでしていると、現物株取引扱いとなるカバード・コールは、オプション取引の収益と損益通算ができなくて不利なケースが多いのですが、ダイアゴナル・スプレッドでれば、他のオプションの収益と損益通算可能となりますので、この点においてはメリットが大きいです。

5)まとめ

今回は、LEAPSのコールオプションを利用した取引をご紹介させていただきました。LEAPSコール・ロングは単体でも株と同じように運用することもできますが、LEAPSショート・コールはあまり単体で取引きすることはおすすめしません。今回のように、LEAPSロング・コールと組みあわせてダイアゴナル・スプレッドとして利用してくださいね。

次回はLEAPSプットオプションを利用した取引をご紹介したいと思います。

本日も最後まで御覧いただきましてありがとうございました。次回の記事も御覧いただければ幸いでございます!

【免責事項】
※内容の正確性については万全を期しておりますが、私の個人的な視点、理解を示したものであり、完全性、正確性、適用性、有用性等いかなる保証も行っておりません。
※内容に基づく判断については、利用者の責任のもとに行うこととし、一切の責任を負いません。
※内容に関しては、将来、予告なしに変更する場合がございます。

ありがとうございました!