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【米国株OP】ターバイ&カバコのフォローアップ(ローリング)について

これまで、米国株オプショントレードの3本の柱について説明させていただきました。

今回は、この戦略を実施する上で欠かせないローリングについて説明していきたいと思います。

ローリングとは

ローリングとは、現在建てている売り玉を決済して、新たに異なる権利行使価格のオプションを売りだてることを言います。ローリングは次の3つに分類されます。

ローリングアップ(RU):現在の権利行使価格より高い権利行使価格のオプションを売り建てること。
ローリングダウン(RD):現在の権利行使価格より低い権利行使価格のオプションを売り建てること。
ローリングアウト(RO):現在と同じ権利行使価格のオプションを期先の満期のもので売り建てること。

上記はそれぞれ単独でも行われることもありますが、①と③を組み合わせたローリングアップ&アウト(今より高い権利行使価格の期先のオプションを売る)や②と③を組み合わせたローリングダウン&アウト(今より低い権利行使価格の期先のオプションを売る)として実施されることもあります。

本質的価値と時間的価値

前回のカバコの記事で、ローリングの目的はより大きな時間的価値を得ることと説明しました。まずは、本質的価値と時間的価値の復習から。

オプションのプレミアムは大きくITM(In the Money:イン・ザ・マネー)とOTM(Out of the Money:アウト・オブ・ザ・マネー)に分けることができます。これまで説明もなくITM、OTMなんて使ってきましたが、言葉の意味は下記となります。

①ITM:権利行使をした場合に利益が生じている状態。
    例)コールの場合:株価>権利行使価格
      プットの場合:株価<権利行使価格
②OTM:権利行使をした場合に損失が生じている状態。
    例)コールの場合:株価<権利行使価格
      プットの場合:株価>権利行使価格

よくATM(At the Money:アット・ザ・マネー)という単語もよくつかわれますが、これは、株価と権利行使価格が一致している状態であり、本質的にはOTMになります。DITM(Deep ITM)、DOTM(Deep OTM)なんかも使われますが、それぞれATMから遠い権利行使価格のオプションの事を意味します。

オプションのプレミアムは本質的価値と時間的価値に分けることができます。

①本質的価値:オプションを権利行使して得られる利益。
       例)コールの場合:株価-権利行使価格
         プットの場合:権利行使価格-株価
②時間的価値:プレミアム価格と本質的価値の差。今後、プレミアムが上昇する期待値。

本質的価値はITMにあるオプションのプレミアムしか持ちません。OTMは権利行使しても利益はゼロであるので。反対に、OTMのオプションのプレミアムはすべて時間的価値となります。ATMもOTMの1種ですので、プレミアムはすべて時間的価値です。しかも、ITMとなる可能性が一番高いOTMオプションであるので、ATMが時間的価値を最大に持つ意味もイメージしやすいのではないでしょうか?

具体的な例で説明します。私はFisker(FSR)という電気自動車の銘柄でカバコを組んでます。現在の株価は$17.38であり、17C売りはITMとなっており、そのプレミアムは$0.65です。

この時のFSRの本質的価値は、$0.38($17.38-$17)となりまので、時間的価値は$0.27($0.65-$0.38)となります。

今後、満期までFSRの株価が変動せず$17.38であったと仮定します。その時の17Cのプレミアムは$0.38となります(満期には本質的価値のみとなる)ので、17Cの売りは$0.27の利益を得ることができます。これは時間的価値と一致します。つまり、オプショントレードの利益の源泉はこの時間的価値なのです。

上記のとおり、時間的価値は時間とともに減価します。これをタイムディケイと呼んでます。時間的価値は「今後、プレミアムが上昇する期待値」であるので、満期までの時間が短くなれば、株価が変化していなければ、ITMになる期待値が下がりますよね?だから、時間的価値も下がるわけです。

話をローリングに戻すと、ローリングはより大きな時間的価値を得ることですした。つまり、タイムディケイで時間的価値が減少したプレミアムDITM、FOTMとなって時間的価値が減少したプレミアムをより時間的価値の大きいOTMや期先のオプションを売ることを目的としているわけです。

カバードコールのローリングの一例

カバードコールによるローリングの一例を紹介したいと思います。(引用するプレミアムの価格は適当ですw ローリングの本質を理解するには問題ないので。)

Aという銘柄をターバイにより$30で所有し、期近の32Cを$1.0で売ったとします。

満期近くに株価が$34まで上昇してきました。この時に32Cのプレミアムは$2.5となっておりました。32Cは株価より低いのでITMであり、本質的価値は$2.0($34(株価)-$32(権利行使価格))となりますので、時間的価値は、$0.5($2.5(プレミアム)-$2.0(本質的価値))となります。

今回は、さらに株価は上昇すると考えて、期先の35Cを$1.8を新規に売るローリングアップ&アウトを実施します。まず、期近の32Cを決済しますので、$1.5($1.0-$2.5)の損失になります。そして、次に期先の35Cを売って$1.8を獲得します。合計で$0.3($1.8-$1.5)の現金を確保したことになります。

一見すると、あまり意味のあるトレードに思われないかもしれませんが、今回のトレードにより、時間的価値を$0.5(期近の時間的価値)から$1.8(期先の時間的価値)まで増やすことに成功しております。オプションの利益の源泉は時間的価値を多く得ることですのでこれで良いのです!

ただ、ちょっと府に落ちないですよね~。なんせ、期近の32Cのトレードだけみると、$1.5の損失してますからね。この点について考えてみましょう。32Cのプレミアムの変化は下記のとおりです。

株価$30 32C($1.0)=本質的価値($0.0)+時間的価値($1.0)
株価$34 32C($2.5)=本質的価値($2.0)+時間的価値($0.5)

プレミアムは、本質的価値が$2.0増加して、時間的価値が$0.5減少したことがわかります。その結果、損失が$1.5となります。

ただし、カバコは現物株も所有しております。現物株の本質的価値はどうでしょうか?現物株は当然時間的価値を持ちません(当たり前ですが、時間が経過しても建値変わらないですよね?)ので、当然、本質的価値しか持ちません。

株価が$30から$34に上昇した場合、現物株がもつ本質的価値は+$4となります。つまり、カバコのコール売りの本質的価値のマイナスを現物株の本質的価値が打ち消してくれるわけです。だから、カバコについては、本質的価値によるマイナスを無視して、時間的価値を多く獲得するようなトレードを実施すればよいわけです。

ローリングダウンについても時間的価値をたくさん得るという本質については同様です。ローリングダウンの場合、アップと違って本質的価値を持たないので、時間的価値が減価して少なくなったものを、あらたに下の権利行使価格を売って多くの本質的価値を得ているわけですね。この場合、ローリングアップと違って、利確しながら新たに売り建てることになります。

まとめ

今回は、ローリングについて、できるだけ簡潔に書いてみましたが、それでもかなりの文章量になってしまいました。

ポイントは、①本質的価値は現物株と相殺②時間的価値を多く得るということです。

もちろん、そんなうまい話だけではなく、リスクも存在します。株価が上昇すると考えてローリングアップしても、その後、株価が下落というケースもあります。この場合、プレミアムを全額獲得できても、現物株の含み損を負うことになります。

ですので、その銘柄毎に、これまでターバイ&カバコで獲得してプレミアムを常に頭に入れて、どのあたりでクローズさせたらよいか?ということを考えてトレードすることが大切です。

ローリングは説明をしたり、理解しようとすると難解に感じるのですが、実際の作業は、満期近くになった時にプレミアムを確認し、ITMならローリングするという単純作業になります。その時点で、すでにプレミアムを獲得しており利益が出ているのであれば、ローリングせず買い手の権利行使をうけてクローズでもいいわけです。

少しでも皆様の理解に役立てることができれば幸いです。本日も最後までお読みいただきありがとうございました!

ありがとうございました!