見出し画像

【レースレポート】箱根ヒルクライム2021 鉄の漢クラス3位 48分34秒

画像1

果てしなく思えるほど長いコロナ禍による緊急事態宣言が、遂に明けた。
2日前に関東を襲った台風16号も彼方へ消え去り、雲一つない快晴に、夏の残り香が鼻をくすぐるような陽気だ。

10月3日(日)、箱根ヒルクライム2021(鉄の漢クラス)に参戦した。

普段は自転車で走ることができない箱根ターンパイクを、丸1日封鎖して開催される箱ヒル。
一般的な年代別クラスのほか、体重別クラス、シングルスピード、ファットバイク、電動アシスト、コスプレ参加推奨のキャラクターヒルクライムなど、ユニークなカテゴリー分けが数多く存在するレースだ。
私がエントリーした鉄の漢クラスは、スチールフレームのみ使用可、カーボンホイールは禁止というなかなかにMっ気……もとい、漢気あふれるクラスとなっている。

コースプロフィールは、距離13.4km、平均勾配7.2%
10km以降はアップダウンとなるため、10km地点までは8〜11%の斜度が続き、最大勾配は約13%とかなり厳しいコースだ。

画像2

春先より膝を痛め、7月までマトモに走る事が出来なかった私にとっては、これが今シーズン最初で最後のレースとなる。膝の寛解から2ヶ月間の付け焼き刃ではあるが、トレーニングを積み重ね減量にも成功した。精一杯楽しもう。

レース前日

前日受付が14時半からという事で、昼食を摂ってから受付会場がある根府川駅へと向かう。
東海道線、小田原〜熱海の区間は、関東の鉄道路線でも屈指の風光明媚な区間だ。

画像3

全面オーシャンビュー!
あまりに良い天気に、明日のレースに向けて早速ワクワクが止まらない。

根府川駅に到着し、輪行を解除。駅から受付会場であるヒルトン小田原まではシャトルバスも出ているが、折角なので前日アップも兼ねて自走することにした……のだが。

画像4

なんだこのクソ坂はwwwww

滑り止めのドーナツ舗装に15%近い斜度。前情報も無しにノコノコ出向いた自分がアホだった。
後からStravaのセグメントをチェックしてみると、距離1.45km、平均勾配8.2%。

画像5

聞けば、この坂道を駆け上るショートヒルクライムレースも開催されたことがあるらしい……

重い荷物を背負い、VO2MAX域の300Wで踏むこと6分、ようやくヒルトン小田原に到着。心拍168bpmまで上がったぞ……
ヒルトン小田原には、既に受付に来た自転車乗りがあちらこちらに居た。高級ホテルにTシャツ短パンで汗だくの自転車乗りは場違いだよな…と心配していたが、これだけ同類が居れば心強い。
なお、受付会場はマスク着用、手指消毒、ソーシャルディスタンスなどの感染対策が徹底されていた。
サクッと受付を済ませ、小田原市街へと向かう。

画像6

写真はヒルトン小田原の裏側から下る山道。海岸線からすぐ山となるこの地形、やはり伊豆半島独特の雰囲気を感じる。山の上からすぐ近くに海を見下ろすのはなかなかの眺望だ。他の自転車乗りやドライバーも、思わず脚を止める人が多かった。

さて、予約していたホテルに到着。

画像7

自転車の部屋置きについて事前に問い合わせをし、「袋に入れればOK」という条件だったので、ロードバイク靴下を持参した。これならば分解する手間を省いて「袋に入れる」という条件を満たす事ができる。

夕食は近場の回転寿司へ。

画像8

寿司ってレース前日には最適な食事では?と勝手に考えている。シャリはもちろん直接エネルギーになる糖質、魚介類は良質なタンパク源だ。シャリに使われるお酢もなんか身体に良さそう。知らんけど。
サイドメニューは注文せず、寿司ばかり11皿を平らげた。
何となく甘味が欲しくなり、コンビニで杏仁豆腐を購入しホテルに戻る。
前日までは減量のため徹底的に節制した生活を送っていたが、今日ばかりは明日のためのエネルギーが必要だ。食べ過ぎて消化不良を起こさない程度に、食欲のタガを外した。

ホテルの大浴場でゆっくりと湯に浸かり、軽く脚の筋肉をほぐしておく。
風呂上がり、キンキンに冷やした杏仁豆腐を堪能し、ウォーターローディングのため2Lの水を2時間掛けて飲み、22時には床に就いた。

レース当日〜スタート前まで

5時ちょうどに目が覚めた。太陽はまだ昇らない。
9時開場、10時35分スタートなのでやや早いが、のんびりと余裕を持って準備を開始した。

大浴場の体重計で、最後の計量をする。
62.9kg。7月後半のピーク体重が66.8kgだったので、およそ1ヶ月半で4kg近い減量に成功した。
これ以上落とすと絶対的パワーも漸減することを経験上分かっているので、これが私のベスト体重だ。
BMIは21.0なのでクライマー体型とまではいかないが、私なりには絞れた方である。

6時半、ホテルの朝食を摂る。
適当に手に取ったところ、パン3つ、お茶漬け、マカロニサラダのトリプル炭水化物にミートボールとスクランブルエッグ、切り干し大根というよく分からない取り合わせになった。食べ過ぎても重くなるだけなので腹7分目に留める。
部屋に戻り、更に水を1L飲んでウォーターローディング。

7時半、ホテルをチェックアウトしウォームアップへ。
小田原から西へ。箱根旧道へと向かう。

東京→大阪キャノンボールで24時間切りを達成した際に走ったルートを、キャノボ以来1年ぶりに訪れた。
強く強く記憶に刻まれているライドだ。同じ場所を通るだけであの時の記憶が鮮明に蘇る。あの時も、今日と同じピーカン晴れの朝、箱根旧道を登ったっけ。

懐旧に浸りながらも、ウォームアップはマジメにやる。
三枚橋までは軽いギヤを100〜120の高ケイデンスで回し身体を覚醒させる。三枚橋から始まる旧道の登りでは、パワーを徐々にFTP強度まで上げ、心拍を160程度まで上げた状態で10分ほど回しておいた。
登り切ることが目的ではないため、大鳥居のはるか手前で切り上げ、引き返して会場へと向かった。

途中のコンビニのトイレで軽量化……つまるところうん(自主規制)を済ませ会場へ。
予定通り9時に開場。自転車乗りでいっぱいだ。こんな「密」な状況はいつぶりだろうか。そして、レース会場で見ると、なぜかみんなめちゃくちゃ速そうに見えるのは何故だろう…
同じ部門に出場するクロモリフレームの方も何人か目につき、ついつい機材や身体の絞れ具合から滲み出る「本気度」をチェックしてしまう。
スタート30分前にカフェイン錠2錠を服用し、気合いを入れる。ライトやベルなどの保安部品を外して自転車も決戦仕様に。知人と談笑しつつ、スタートまでの時間を穏やかに過ごした。

使用機材

画像9

フレーム : Panasonic FRCC22(2019)
コンポーネント : SHIMANO R8000アルテグラ&R9100デュラエース
ホイール : Campagnolo SHAMAL ULTRA C17
タイヤ : Panaracer GILLAR 25c
チューブ : Tubolito Tubo Road
サドル : Prologo Dimension NDR Tirox 143mm
ハンドル : OneByESU ジェイカーボンネクスト
ステム : Dixna リッジラインステム
シートポスト : OneByESU カーボンマガタマ

総重量はサイコンマウント、ペダル、ボトルケージ込みで7.8kg。クロモリ×アルミリムにしてはかなり軽量に仕上がっていると思う。
ハンドルやサドルなど、手持ちの軽量パーツを寄せ集めれば更に-100g程度は目指せるが、ポジションが変わることを嫌い、普段のままとした。
ギヤはフロントが52-36T、リアが11-30T。勾配のきつい序盤では32Tが欲しくなるかな?と心配していたが、30Tで十分に踏み切ることができた。
チェーンオイルはワコーズのチェーンルブリキッド パワーを使用。特にこだわりは無い。

レース本番

荷物預けを済ませ、所定の待機列に並ぶ。
鉄の漢クラスのエントリーは23人。実際に出走するのは目視確認で15〜18人程度だろうか。
ヒルクライムレースでクロモリフレームが一堂に会する光景はなかなか異様だ。

今回の目標は50分切り、そしてあわよくば表彰台の一角。

鉄の漢クラスを連覇中のチャンピオンは昨年45分台を記録している。まず敵わないだろう。
あれ、チャンピオンのゼッケン何番だっけ……スマホ預けちゃったからスタートリスト見られないし、初参加だから誰が前年チャンプか分からん……(この確認ミスがレース中、盛大な勘違いを生む)
前年度2位の選手はゼッケン107番。近ごろZwiftの世界を飛び出して活躍しているZWCのジャージを着ている。昨年51分みたいだけど、速そう……
この選手をマークし、着かず離れずで走る作戦とした(以下107番さん)。
他にも、各地のレースで見かけるチームゲリラ豪雨の選手(以下ゲリラ豪雨さん)や、カリカリに絞れた身体でエクタープロトンのバイクを駆る選手(以下エクタープロトンさん)など、一目で「速そう」オーラを感じたのは5人ほど。マークしておこう。

10時半、魑魅魍魎がひしめくチャンピオンクラスがとんでもない勢いで駆け上っていくのを見送り、5分後にいよいよ体重別&鉄の漢含む特殊車両部門の号砲が鳴って、いざスタート。

マスドスタート(よーいどんで一斉スタートし、着順を競う)形式のレースは初めてなので、意外とのんびりスタートするんだなぁ……と思ったのも束の間、登坂に入った瞬間に前方の体重別クラスの選手をかいくぐり、鉄の漢たちがスルスルと前に上がっていく。
パワーを見ると300〜340W(5.0〜5.5w/kg)くらい。おいまじか。こんなペースじゃFTP271W(4.3w/kg)のクソザコは20分と持たんぞ……
周りを見渡すと、エクタープロトンさんがだいぶ先行し、次いでゲリラ豪雨さん。107番さんが私のすぐ前。
チャンピオンさんはもう遥か先を突っ走っているんだろうな……

最初の2km、8分平均300Wをなんとか耐え、107番さんに付かず離れず着いていく。
2kmを過ぎる頃には次第にペースも落ち着き、280〜300Wくらいとなった。
いくら表彰台も狙いたいとはいえ、あまりにオーバーペースでは脚が売り切れて50分切りも怪しくなってしまう。事前のシミュレーションでは275Wを出し続ければ50分を切れることが分かっていたので、ここで集団が私の予定通りのペースに落ち着いたのはありがたかった。

私、107番さん、ゲリラ豪雨さん、その他体重別クラスの選手を交えた集団で、2km以降の序盤は比較的平和に進行。
そういやゲリラ豪雨さん、さっきからずっと下ハンダンシングで登ってるな……どこまで脚があるか分からず不気味だ。私は登りのダンシングは得意ではないので、ブラケットと上ハンを握り変えつつシッティングで淡々とペースを刻む。

4kmを過ぎる頃、相変わらず280~290Wで淡々とペースを刻むが、どうも周りは少しキツそうだ。私と後続の間にやや間が開く。
前方にエクタープロトンさんと他部門の選手数人が見えたので、ほんの少しだけ出力を上げ、ブリッジをかけてみる。

案外踏めるなぁ、とそのままエクタープロトンさんをパスした5km過ぎで、着いてきていたゲリラ豪雨さんが落ちていった。107番さんはエクタープロトンさんの後ろに着いたようだ。
3人抜いたから、まだ背中も見えないチャンピオンさんの次、2番手かぁ……

だが脚はまだまだ回る。ひたすら淡々とペースを刻んでいると、いつのまにか体重別クラスの選手2人とパックになった。7~8kmにかけての勾配が少し緩む区間では、「平坦で稼ぎましょう!」と前を引いてくださり、一瞬だが脚を休めることもできた。

しばらくしてまた一人旅。10km過ぎの下り区間まではあと2kmほど。さすがに脚に乳酸が溜まってきているのを感じるが、まだ280W前後でペースを刻むことはできる。
後続との差はどれくらいだろうか……後ろを振り向いてもそれらしい姿は見えない。チャンピオンさんはどれぐらい先行しているんだろう……淡々と踏むことはできるが、これ以上ペースを上げる余裕は全くない。後続との差もわからず、もどかしい時間が続いた。

10km過ぎ、長い長い登り区間を終え、アップダウン区間へと入る。
途端に、体重別クラスの選手2人組が物凄い勢いで追い抜いていった。
不安が頭をよぎり、後ろをちらと見る。まだ後続は見えない。
登坂では集団で走るメリットはそう大きくはないが、下りを含む区間では集団走行によるドラフティングの効果は絶大だ。まして、アップダウン区間に入って風向きがやや向かい風に変わった。単独逃げには厳しい状況だ。
下りでは下ハンを持ち少しでも姿勢を低くしてスピードを稼ぎ、800m8%の登り返しでは、もう売り切れた脚を絞って330Wをなんとかひねり出し、なんとしても追いつかれまいと自らに鞭を打った。

ラスト600m。200m下って、400m4%の登り返しの先がゴールだ。
下りきって後ろを振り返ると、ついに3人の小集団が猛然と追走してくるのがはっきりと見えた。先頭を牽引するのは体重別クラスの選手。後ろに鉄の漢2名。私も慌てて踏み直すが、ちょうど登り返しのすぐ手前、スピードが乗らない。
終わった足で790Wのへなちょこスプリントを繰り出し悪あがきをするが、体重別クラスの選手のリードアウトが完璧に機能して鉄の漢2人が発射。ついにゴール手前100mと少し、どう足掻いてもひっくり返すことができない速度差でぶち抜かれてしまった。その差、1.5秒。先頭をゆく107番さん、次いでエクタープロトンさん。わずか1秒先を行く彼らは、はるか遠く、豆粒のように小さく見えた。

先行1人、たったいま2人に抜かれたーーー4位か。
ゴール前、脳内で瞬時に計算をした。あと100mで表彰台に乗れなかった。思わず「クソー!!!」と叫びながらゴールラインを超え、ハンドルを思い切り殴りつけた。

出せるものはすべて出し切って負けた。完全に実力と経験不足だ。
平静さを取り戻し、計測チップを返却し、待機場所の駐車場へ向かい、周囲を見渡す。

あれ......?鉄の漢、まだ自分含めて3人しかゴールしてなくね......?

状況を理解できず、慌てて荷物を回収し、スマホを取り出してリザルト速報を確認する。そしてようやく理解した。

画像10

そう、実は中盤で追い抜いたエクタープロトンさんこそ前年度チャンピオンで、はるか先にもう一人いるというのは盛大な勘違い。自分ひとり先頭で逃げ(泳がされ)ていたことに全く気が付いていなかったのだ……。

全くもってアホな話である。

しかし、結果は1位と1.5秒差で堂々の3位表彰台。しっかり勝負をして負け、しかも目標の50分を1分26秒も上回ることができた。初エントリーにしては出来すぎなくらいだ。

3位という結果は素直に嬉しい。しかし、ゴール手前100mまで私が先頭を独走し、最後の最後で捕まったという事実には本当に悔しさが残る。勝負ごとに「タラレバ」はないので、これが今の自分の実力なのだろう。
「もう少し踏んでいれば」といっても限界まで踏んだし、「下手に泳がされずに集団で賢く走っていれば」といったところで、3位以内に入れていた保証はどこにもない。やれるだけやって3位だった。それだけだ。

ひとしきり悔しさを噛みしめると、また一周回って喜びが沸き上がってきた。

画像11

形はどうあれ、3位は3位。自転車人生初めての表彰台だ。胸を張って表彰を受けよう。

画像12

いざ表彰式。先に表彰を受けていた他のカテゴリーの選手たちは、何故かどうも表彰台の上で控えめだったり、恥ずかしそうにしていたり。司会者から「皆さんもう少し嬉しそうにしましょうよw」とツッコミを受けていたので、堂々と誇らしげに胸を張って、(マスクで分かりづらいけれど)満面の笑みで表彰を受けた。いや実際嬉しかった。
初めての表彰台から見下ろす景色は、想像よりもはるかに良い眺めだった。

画像13

レース展開に課題は残したものの、故障からの復帰2カ月半で目標通り、いやそれ以上にいいレースができた。
来年もまた出よう。次は更に上を目指そう。そんな想いを胸に、会場を後にした。

画像14

走行データ

走行距離 : 13.57km
タイム : 48分34秒501(公式計時)
平均速度 : 17.0km/h(公式計時)
獲得標高 : 984m
平均パワー : 282W(4.48W/kg)
平均NP : 289W(4.59W/kg)
最大パワー : 793W(12.6W/kg)
平均心拍数 : 169bpm
最大心拍数 : 177bpm
平均ケイデンス : 87rpm
消費カロリー : 885kcal
特記事項 : FTP 271W(4.30W/kg)→281W(4.47W/kg)に更新
走行ログ(Strava)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?