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『NOPE/ノープ』公開! ジョーダン・ピールの監督デビュー作『ゲット・アウト』を特典で極める

本日8月26日(金)から公開されたジョーダン・ピール監督最新作『NOPE/ノープ』。

田舎の広大な敷地の牧場経営で生計を立てる一家。長男オーティス・ジュニア(ダニエル・カルーヤ)の目前で突然、空から異物が降り注ぎ、止んだかと思うも束の間、直前まで会話していた父親が息絶える。オーティス・ジュニアは父親の不可解な死の直前に、雲に覆われた巨大な飛行物体のようなものを目撃したことを妹に明かし、やがて兄妹はその飛行物体の物的証拠を収める“バズり動画”を撮影することを思いつくが…。という謎に満ちたサスペンス・スリラーだ。

ハリウッドのイノベーターとして、今最も注目される存在となったジョーダン・ピール監督。
今回はこの『NOPE/ノープ』公開を機に、かつてDVD&動画配信でーたの人気特集「特典で極める」に掲載したピールの監督デビュー作『ゲット・アウト』のパッケージ特典を紹介していこう。予想を裏切るプロットで、第90回アカデミー賞に輝いた脚本はどのように生まれたのか!?

※情報は2018年3月20日に発売された4月号掲載時点のものです。
商品情報と特典内容はコチラ

監督がモチーフを全て吐露する音声解説

©2018 Universal Studios. All Rights Reserved.

「催眠術をかけるシーンは『羊たちの沈黙』をイメージ

緻密に計算された本作の脚本には、さまざまな伏線や過去の名作映画へのオマージュが数多くちりばめられている。監督は、いくつものシーンで参考にしている名作スリラー&サスペンスの元ネタを音声解説で全て公開。特にスタンリー・キューブリック監督の『シャイニング』はお気に入りで、冒頭に出てくるクレジットの文字の色も同作へのオマージュ。さらに夜中、外に出
ようと廊下を歩く主人公クリス(ダニエル・カルーヤ)の後ろに女性使用人ジョージナ(ベッティ・ガブリエル)が現われる気味の悪いシーンは、同作で廊下の奥に双子が現われるシーンから受けた影響だと明かす。また監督は、クリスの恋人であるローズ(アリソン・ウィリアムズ)の母親がクリスに催眠術をかける場面は、「『羊たちの沈黙』でレクター博士がクラリスの頭の中をのぞこうとするシーンをイメージしたんだ」と喜々として語っている。ほかにも『ハロウィン』『ジョーズ』『激突!』『ステップフォード・ワイフ』『ミザリー』『ジュラシック・パーク』に加え、TVドラマ『LOST』まで画づくりの参考にしているそう。

「秘密結社の存在をほのめかした」

©2018 Universal Studios. All Rights Reserved.

小道具にも作品の本質に関わるメッセージを隠している本作。冒頭、暗がりの道を歩いていたある男が、甲冑の仮面を被った男に襲われる場面。監督は「この仮面はテンプル騎士団と同じタイプ。最初から何かしらの秘密結社の存在をほのめかしているんだ」と解説する。ローズの実家のある部屋に立派な雄鹿の剥製が飾られているが、実は雄鹿(=buck)はアフリカ系アフリカ人男性を示す、差別的な呼び名。その事実を知ると、クリスがこの剥製の角で、自分をある部屋に拘束した相手を突き刺す場面の意味合いがより一層と深くなる。

もうひとつのエンディング がお蔵入りになったワケ

©2018 Universal Studios. All Rights Reserved.

脱出したクリスがローズ一家の追撃から逃れて反撃に転じるも、ギリギリで理性を保ち最後の敵を殺すことを躊躇。そこに彼の安否を気にかけていた親友のロッド(リルレル・ハウリー)が現われるというのが、本作のエンディング。別エンディングでは、クリスは敵を全員殺し、ロッドではなく、駆けつけた警察に捕まってしまう。当初は、人種問題に対して強烈なメッセージになるよう、この別エンディングを使う予定だったそうだが、「反人種差別運動が実を結び始めたので、希望のあるエンディングに差し替えた」と監督は解説する。

未公開シーンに不穏な光景はまだあった!

©2018 Universal Studios. All Rights Reserved.

未公開シーンで最も注目なのは、『バドミントン』だ。これは、ローズ一家が開いたパーティで、クリスがローズの弟とバドミントンをするエピソード。彼らの試合を観にパーティ参加者たちがゾロゾロと集まってくるのだが、まるで何かを品定めするようにヒソヒソ話をする彼らの視線は、クリスのみに注がれる。その不穏な雰囲気に耐えかねたクリスが試合を切り上げるという、パーティの異様さが際立つ場面だ。そのほか、『ロッドの到着』は、全てを終えたクリスに、助けに来たロッドがかける言葉の没ネタ集で、張り詰めた緊張感をぶち壊すロッドの間抜けなセリフが6バージョンも収録される。

メイキング で監督のスリラーへのこだわりが判明

©2018 Universal Studios. All Rights Reserved.

音声解説でも分かるように、非常にスリラー好きな監督。現実の人間が自然に取る行動を登場人物たちにさせるということが、彼のこだわり。監督によると、主人公がすぐに逃げ出したくなるような恐怖を感じたのに、その場所に留まるような矛盾を避けるため、急展開しないよう、ジワジワと違和感を覚えるような物語にしたそう。また、人種差別をテーマにした理由として、
「コメディなどではテーマにしてきたにも関わらず、これまで人種問題を描いてこなかった、スリラーというジャンルに一石を投じたかった」ため。スリラーを愛する監督ならではの思いが作品に込められていることが分かる。