2024年2月10日 「さらばヴィレヴァン」

完全に昼夜逆転していたのだがやや復活し、起きたのは昼過ぎ。それでもメンタルは不調なのでふらふらと本屋に行ったが目当ての本は売ってなかった。

今はなんだか文学!!!という感じである。それで本屋でも目当ての本がないとわかると岩波や新潮や講談社の棚の前をうろうろしてみるけれどどれもピンとこない。大江健三郎? 三島由紀夫? ヘルマン・ヘッセ? オスカー・ワイルド? どれもピンとこない。ブックオフに行ったら何かあるかと思ったけれど何もない上に混んでいて臭い。まあ家に帰ればプルーストもサリンジャーもボリス・ヴィアンもあるんだから、と思う。ポケットには村上春樹を入れてきたし。

仕方ないので何も買わずケンタッキーで新しいやつを食べる。村上春樹をちょっと読む。

「平凡な街で育って、平凡な学校を出た。小さな時は無口な子供で、成長すると退屈な子供になった。平凡な女の子と知りあって、平凡な初恋をした。十八の年に大学に入って東京に出てきた。大学を出てから友だちと二人で小さな翻訳事務所を始めて、なんとかそれで食べてきた。三年ほど前かPR誌や広告関係の仕事にも手を広げて、そちらの方も順調に伸びている。会社で働いていた女の子と知りあって四年前に結婚して、二ヶ月前に離婚した。理由はひとくちじゃ言えない。年寄りの雄猫を一匹飼っている。一日に四十本煙草を吸う。どうしてもやめられないんだ。スーツを三着とネクタイを六本、それに流行遅れのレコードを五百枚持っている。エラリー・クイーンの小説の犯人は全部覚えている。プルーストの『失われた時を求めて』も揃いで持ってるけど、半分しか読んでない。夏はビールを飲んで、冬はウィスキーを飲む」
「そして三日に二日はバーでオムレツとサンドイッチを食べるのね?」
「うん」と僕は言った。

村上春樹『羊をめぐる冒険(上)』講談社文庫、p.68-69

すごいじゃない。エラリー・クイーンの小説の犯人を全部覚えてるなんて。私なんてあんなに興奮しながら読んだのに『フランス白粉の謎』ぐらいしか覚えてないわよ。

帰って少しだけタスクを片付けた。でもまだまだある。絶望。

(略)それで、ヴィレッジ・ヴァンガードはアジールなき平坦なロードサイドに出現したアジール的空間だったのに、結局は明確な計画のもとに区画整理された、ジャスコやイオンといった隠れる場所なき空間に自ら組み込まれてしまったそのとき名古屋は決定的に面白くなくなったという自説をぶってしまった。

柿内正午『プルーストを読む生活』、p.669

これ最近ツイッターでみんなが話してることじゃないか、と思って引用した。でもこの文章自体は2019年に書かれたもので、じゃあヴィレヴァンが”まとも”になっちゃったのは結構前からだったんだなと思う。地元のイオンで一瞬ヴィレヴァンに入ったけれどほんとつまらなくなった。アングラ感が全然ない。心なしか店内も前より明るくなっちゃったような気がするもんね。店内が暗い方がいい唯一の店、ヴィレヴァン。ヴィレヴァンよさらば。

晩ご飯が早かったせいで腹が減った。ステーキでも食べたい気分だけど明日はピザの予定が入っている。


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