母はたべ物にずいぶん気むずかしかった。ことに飯にはやかましかった。
「僕のもめっかちだよ。」
母が飯の小言を言うと、僕もすぐそれについて雷同した。
「心が曲っていると、めっかちのご飯が行くんだ。お父さんのなんか、それやおいしい、いいご飯だ。」
僕は父がこう言うんで、ほんとうかしらと思って、無理に父の茶碗の飯を食って見た。しかしそれは、勿論、やはりめっかちだった。
父はこんなふうで、女中達にも小言一つ言ったことがなかった。
青空文庫 大杉栄『自叙伝』より
めっかちのご飯って……なに?
片目 ⇒ かため ⇒ やわらかくないコワいご飯のこと???