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いつの世までも


こんにちは。
以前、新聞で
『恋心涼しミンサー織涼し』 という木暮陶句郎さんの俳句を見つけてミンサー織を知りました。
https://eisaahaninnsu.ti-da.net/e10418762.html

木暮さんは陶芸家でもあります。句集『陶治』の「美しき噓の溶け込む花の酒」も、なんて素敵💕(語彙力無し)と思いました (*´ω`*)
https://saku-pub.com/books/touya.html

他サイトに投稿したSSを少し手直ししたものですが、スキマ時間にでも。聖悠紀先生、安らかに。
本日お誕生日の皆さま、おめでとうございます🎂


✤     ✤     ✤

今日は私の誕生日。

5月でも、もっと遅い誕生日がよかったな、と思ってた。ゴールデンウィーク中の 「5月4日」って、友だちに誕生日当日に祝ってもらった記憶がなくて。

1989年、昭和天皇崩御に伴い、これまで「天皇誕生日」だった4月29日が「みどりの日」になったことを最近になって知った。最初から「みどりの日」じゃなかったんだ。私はまだ生まれていない。その後、2005年に法律改正があって、2007年から4月29日が「昭和の日」になって、5月4日が「みどりの日」になったんだって。物心ついた時にはそれが当たり前だったから、両親が未だに「天皇誕生日は4月29日のままだよね」と昭和を懐かしんでいるのを冷めた目で見ていた。

でもね、今は違うの。

誕生日の話をした時に、彼が言ってくれたの。

彼のおばあちゃんは沖縄の八重山という島で暮らしていて、そこで作られているという綺麗な色のポーチをお土産にくれた。

「変わった模様だね」

そう言うと、これはむかしむかし、女性が男性に「いつ(五つ)の世(四つ)までも末永く」の想いを込めて着物の帯に織り込んた、伝統的なデザインなんだと教えてくれた。

「5月4日はそういう、いい日なんだと思うよ。いつの世までも末永く……オレたちも一緒にいられたらいいと思う」

「うん……えっ!?」

最後の方は早口で小さい声になったから、後からもう1回がちゃんと言って!ってお願いしてわかったんだけど。だってずっと仲のいい友だちでしかないと思っていたから。

*** 彼の独白 ***

「お前はシタゴコロはあるのに、ユウキがないな〜」

友だちにはよくこうからかわれた。オレの名前が悠樹(ユウキ)だからだ。ユウの字はたくさんあるのに、この字を選んだ両親。よほどのこだわりが……ではなく、女の子だったら悠紀(ユキ)にするつもりだったらしい。ふたりとも『超人ロック』という漫画が好きで、その作者の名前だと言っていた。聞いた話ではその作者は男のようだが………まぁいいや。

沖縄のばぁちゃんは会うたびにいつも「お前の名前はいい名前だ」と言ってくれた。

「悠久という言葉があるだろう? ずーっとお前は大地に根付いて、枝葉を大きく広げてな、暑い日には木陰を作ってさ、みんなを涼しくするような大きな樹になりな」

小学生のオレの頭にはオフクロがよく歌っていた♪この木 なんの木〜 とかいうコマーシャルソング?が流れてた。オレの樹は小さいから、多分ひとり休ませることが出来たら上出来だと思うよ、ばあちゃん。

ばあちゃんが織ったミンサーのポーチをあげた子の名前は久実(クミ)と言った。大学のゼミで一緒になった時から気になっていた子だった。自分の誕生日がつまらない、と言っていたので、そんなことはない!と「いつの世までも」の話をして、告白もしてしまった!

両親に彼女の話をした時に「ふたりの名前もお似合いね」と胸の前で手を合わせたオフクロが言った。

「悠樹と久実さんで悠久でしょう。それに樹に実がついて……お前のこれからの人生に豊かな実りを運んでくれるんだわ」

………おーい、オフクロさん、お花畑過ぎないか?と思ったが、親父もウンウン、と満足げに頷いていた。反対されるよりずっといいけど、なんだか気恥ずかしくて彼女にこの話はしていない。

*****

いつの世までも末永く……沖縄の青い海に誓い合うのは、来年の私の誕生日。