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仏語はお若いうちに

高校時代、世界史の先生に「大学ではドイツ語かフランス語を勉強しとくといいよ。あれは若いうちにやっておかないと頭に入らんから」と言われた。
その時の私はさして興味なく聞いていた。

バカバカ、私の馬鹿。

その言葉をすっかり忘れて、大学では中国語を選択した私。
当時の中国は大躍進の最中。オリンピックも控えているし、勉強しておくと何かと便利だろ、と考えたのだ。

でも、今は後悔している。
私はフランス語を勉強するべきだった。ドイツ語でもいい。欧州の言葉に触れておくべきだったのだ。
なぜかって?
英語しか知らないため、私は何でもかんでも英語読みしちゃおうとするからだ。

例えば、結婚したての頃。
あるお菓子屋さんの前で「ヘンリ・カーペンターだって」と言った私に、夫は「英語読みするとそうだね。でも、あれはフランス語。アンリ・シャルパンティエだよ」と言った。

またある時は、ある喫茶店の看板に「jour」と書かれてあるのを見て「ジュア」と読んだ私に、夫は笑って「それは英語読みだね。あれはフランス語でジュールだよ」と言った。

「ジュールって何?」
「『日』だよ。英語でいう『day』だね。ボン・ジュールのジュール」

案外、フランス語って日常に溶け込んでるんだよね。特にお菓子、パン屋に多い。よく目にします。
キョウも「今日はフランス語で会議」とか言ってたことあるし、ビジネスでも使うことが多い言語なんだろう。
もちろん、一番よく使われるのは英語だろうけど。夫も仕事で使うのは英語です。

これはいろんな国の言葉を学んだ友人たちがそろって口にすることなのだが、英語は他の言語と比較して圧倒的に学びやすいんだそうな。
フランス語やドイツ語を学んだ夫は「いかに英語が簡単かよくわかった」と言う。
ちなみに中国語を学んだ私だが、中国語も文法はとっつきやすいと思う。あえて壁にぶち当たるとすれば、文法より発音だろう。
フランス語やドイツ語の文法は格変化もややこしく、年を重ねてから一から勉強するとなると非常に厄介だと思う。

今になって、高校の先生が「若いうちに、ドイツ語かフランス語をやっておくといい」と言ったのはこういうことかと気がついたが、もう遅い。
すでに私の頭は退化の一途をたどっている。せめて、基本文法を学生時代に頭に入れておけばなんとかなったかもしれないが、一から勉強するのはほぼ無理だろう。
もう、これは一生英語読みでいくしかねーな、と思っている。

先日、夫と一緒に「うっふプリン」の「ティラプリ」というものを食べた。
大きな瓶に入ったティラミスとプリンを混ぜ混ぜしたようなお菓子で、大変に美味しかった。

「美味しいね。見た目もかわいい。うっふプリンっていう名前もかわいい」

私は人差し指を頬にあて「うっふ♥」と言って、首をちょっと傾げてみた。

しーーーーーーーん


キョトンとする夫。

あれれ?どうしたの?反応がイマイチだわ。
いつもなら笑って「凛子さんはかわいいな」ぐらい言うのに。

夫が、ちょっと気まずそうに、おずおずと話し出す。

「凛子さん、あのね。このうっふはフランス語の『うっふ』。『卵』っていう意味だよ」

なっ、なんと!

夫が空になった容器を指差し「ほら、ここに書いてある」と私に見せる。

容器には卵の王様みたいな可愛いキャラが描かれている。その隣には「Oeuf」とある。
これで「うっふ」と読むらしい。

恥ずかしいぃぃぃぃ!


教養のなさがバレバレ。
バカバカ。私の馬鹿。

ところで、今までずっと不思議だったことをきいてみる。

「ねぇ、あなたは英語とフランス語をどうやって区別してるの?」

ところが、これにも夫が戸惑ったような顔。

「どうやって、と言われても……。そんなの見ればわかるし、音なら響きでわかる」

う~ん、この「そんなこと質問されるなんて思わなかった」って顔。何気に傷つくわ~(涙)

「だいたい、こんな単語は英語にはない」
「どうしてそういう発想になるの?こんな英単語、今まで見たことなかったな~って思わない?」
「思わない思わない」と笑って手を振る夫。

う~ん、この「ないない」って顔。めちゃくちゃ傷つくわ~(涙)

英語しか知らない私は、変な話、みんな英語に見えちゃうのだ。
それは私の英語力が非常に低いということでもある(爆)
確かにいまや娘に越された感あるもんな(遠い目)

やっぱりフランス語、ちょっとでも若いうちに学んでおくべきでした。

いや、それよりもまずは英語か(ガクッ)