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娘のスピードに母はついていけるのか

私と夫は会うこと2回目で、私が「彼女にしてもらえないですか?」と言ったことで付き合うことになり、4回目で夫が「結婚しませんか?」と言ったことで結婚することになった。
出会って2か月か3か月ぐらいのことだった。
同棲することもなく、入籍してマンションを借りて二人で住み始めた。

周囲の友人には、とても驚かれた。
高校や大学時代の友人には、彼氏ができたことさえ報告してなかったので「結婚?誰と?」と不思議そうな顔をされた。
「彼氏とは別れたんじゃなかったの?」と前の彼氏と結婚したのだと勘違いする子もいた。

その前の彼氏と共通の知り合いでもあった友人には「あぁ、私そうだと思ったのよ」と妙に納得された。
「凜ちゃん、先生(前彼は医者)と付き合ってても全然楽しそうじゃなかったし。やっぱり凜ちゃんは前の彼氏が忘れられないんだなぁと思ってた。だから戻ってよかったと思う」と、なぜか前前彼氏と結婚したと思われた。

以前、ママ友たちとランチをしたとき、旦那さんとの出会いの話になった。
高校時代の同級生とか、大学の研究室で一緒だったとか、学生時代から長く付き合っていた人も多いし、社会人になってから仕事先やコンパで出会ったなど様々だったけれど、だいたい2年から3年付き合って結婚というパターンが多い印象。
私のようなスピード婚は珍しかった。そして、やっぱり驚かれた。

先日、最も親しくしているママ友Aちゃんが、私と夫の話をきいたときのことだ。
「ちょっと凜ちゃん」と思わぬことを言われた。

「もし、〇〇ちゃん(娘)がそんなことしたら、あなたどうするつもり?」

……。

考えたことなかった。っていうか、娘、まだ中学生よ。
でも、私が結婚した年齢を考えると、あと十年ぐらいか。
確かにそれほど遠い未来のことではないね。

想像してみた。ある日、娘が嬉しそうに報告してくる。

「お母さん、すごく素敵な人みつけたよ~」
「あら、どんな人?」
「背が高くて頭よさそうで仕事できそうで、ちょっと細身。すごく品があって咳したら『失礼』とか言ってくんの。ププッ」
「まぁ、よかったわね~」
うん、二人でお菓子食べながらキャッキャ話してそうだな。

一か月後。

「お母さん、彼氏ができたよ~」
「あら、どんな人?」
「ほら、この前、素敵な人って話してた人」
「まぁ、よかったわね~」
うん、これも二人でお菓子食べながらキャッキャ話してそうだな。

一か月後。

「お母さん、結婚することにしたよ~」
「あら、誰と?」
「やぁね。彼氏とに決まってんでしょ」
「まぁ、よかったわね~」
うん、二人でお菓子食べながら……

いやいやいや。

無理無理無理。

想像から戻った私。
友人に「やだやだ、Aちゃん。私、無理だわ。倒れるかもしれない。どうしよどうしよ」と縋りついてしまった。
「ちょっと、凜ちゃん落ち着いてよ。あなた、自分のこと棚に上げて何を焦ってんの」
うわ~ん、とパニックになる私をなだめながら、Aちゃんは「でもね」と続ける。

「でもね。私、すごく辺鄙な田舎に住んでたでしょ?3年ぐらい付き合ってたら周囲に『まだ結婚しないの?』って、やたらきかれてそれはそれでつらかったわよ」

う~ん、早くても駄目、遅くても駄目。結婚って難しいわね、と二人で今さら意味なく無駄に悩む。
結局「うっせーな。結婚なんて、私たちのしたいときにするから外野は黙ってろ」ってやつだな。

それにしても、こんな大事なことなのに母の反応が全く思い出せない。
反対はされなかったし、むしろ喜んでたような気がする。
いや、私が浮かれ過ぎて何もかもが嬉しく見えただけかもしれない。
恋の力ってそういう眼鏡をかけさせるよね。
全部、幸せ色になっちゃう、みたいな。

さっそく夫に話してみた。
すると、夫が「そうそう。お義母様、僕がご挨拶に伺ったとき、始終ニコニコしてたんだよね。嬉しかったな」と思い出したように話す。

「こんな男が突然やってきて『お嬢さんと結婚させてほしい』っていきなり言い出したのに焦るどころか、あんなに喜んでお祝いしてくれて大歓迎してくれて。自分が親になって思うけど、あれはなかなかできないことだよね」

私の夫は、私の母をとても大事にしてくれる。
なぜか母を「様」づけする。
先日も、母が実家をリフォームすると言えば「費用を出したいとお義母様に伝えて」と言われて驚いた。
結局、母は受け取らなかったが、それでも夫は「せめて半分だけでも」と言い、遠慮する母との間に立ちながら私が結局、これぐらいなら母も受け取るだろう額を決めた。
美味しいものを食べにいくときは、いつも「お義母様もお誘いして」と言うし(これには母は遠慮しない。「楽しみ~、嬉しい~」といつも喜んでやってくる)娘が生まれる前は、毎年、母の日は「二人で楽しんでおいで」と私と母に旅行をプレゼントしてくれた。

なるほど。あのときの母の大歓迎効果は非常に大きいようだ。

そんな夫に、娘が私たちのように突然、出会って間もない男性と「結婚したい」って言い出したらどうする?ときいてみました。

「それは……うん、えーっと、それは」と、私以上に焦り出す夫。
冷静沈着で、とても頭がよくて(たぶん)超人的な仕事量を何食わぬ顔でこなし続ける(たぶん)夫が、あの夫が困惑している!!!

夫の弱点、きっとそれは娘。

娘よ、こんな小さなパパとママですまん。
あと10年で、もうちょっと大きくなるようパパもママも頑張ります。