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第一印象はなかなか変わってくれない?

昔、知人男性の恋愛話にすごく共感したことがある。

彼が初めて付き合ったときの話なのだが、バイト先で店員同士の喧嘩を止めたことがあるらしい。それがキッカケで同僚の女の子から告白されたとのこと。彼女は、彼が冷静に喧嘩を止める姿に惹かれたらしい。

ところが微妙なすれ違いが出てきた。
彼女の脳内では、どうも彼は「超クールなキャラ」となっているのだ。
だが彼はそういうキャラではない。
すごい饒舌だし、ちょっとチャラッとした感じもするし、少なくとも私の中では明るーい三枚目だ。
一ヵ月後、彼女は彼の本当のキャラに気がつき「なんか違うの」と別れを切り出してきたという。

ところが話はそこで終わらない。
その一年後のこと。
彼女から突然電話がかかってきたという。話していたら、突然、彼女がこう言ったのだ。

「○○君は、相変わらずクールだね」

クールじゃないから、お前は俺をふったんだろ!


「彼女、やっぱり俺のことクールにしちゃってるんだよね」と、まいったように話し終えた彼。

笑っちゃいけないけれど、思わず笑ってしまった。
恋愛のあるあるを詰め込んだような話だな、と思う。

子供にイマジナリーフレンドという存在があるように、人にはイマジナリ―彼氏(彼女)がいるんだと思う。
彼女のイマジナリ―彼氏は「超クール」なんだろう。
そして喧嘩を仲裁した彼の姿をたまたま見た彼女は、彼をそのイマジナリー彼氏の枠にぎゅうぎゅう無理やりはめ込んでしまったんじゃないかな。

そして、もう一つが「第一印象の大切さ」だ。
人の第一印象ってなかなか変わらないときいてはいたが、本当なんだなと思わされた。

そして、恋愛脳というのは自分の都合のいい解釈をしてしまうということ。クールじゃないと自ら別れを切り出したにもかかわらず、会わないでいた空白の時間は、彼女の脳内で彼を都合よく自分の理想のクールキャラに戻してしまった。
過去の恋愛を美化しがちなのもこのためだろう。

さて、彼の話に私は激しく頷いた。
彼のまいってしまう気持ち、よくわかる。
実は、私も同じ理由で男性に振られたことがあるからだ。

ある男性から「恋人になって」と言われたことがある。
あまり話したこともなく、特に親しかったわけでもないのだが、そのストレートな物言いに好感が持てたので付き合うことにした。
ところが三、四ヶ月たったころ、とつぜん彼のほうから「別れたい」と言われてしまった。
理由を問うと「なんというか……僕が最初にあなたから受けた印象と違う」と言われた。
その印象というのが、思わず「ぶーーーっ」と飲んでいたものを噴き出してしまうほど、私のキャラとかけ離れていたのだ。
何をどう間違えて、そんな印象を彼が抱いたのか謎でしかなかった。

ところが、次の彼氏も付き合って一年ぐらい過ぎた頃、突然「最初の印象から、僕は凛のこと勘違いしてた」と言い出すではないか。
その印象というのが、あの飲んでいたものを「ぶーーーっ」と噴き出しそうになった「それは誰ですか?」的なキャラなのだ。
こうなると、どうやら私の第一印象というものは自分が認識している自分と大きくかけ離れているということを認めざるおえない。
ありがたいことに、彼の場合は「それだけ僕に心を許してくれたってことだよね?」と喜んでくれたことと、「今のほうがいいと思う」と言ってくれたことだろうか。受け入れてくれて感謝しているわ。

この二人の男性を思い出したとき、急に夫のことが気になりだした。
夫も思っているんだろうか。

「こいつ、こんな女だったのか!? 僕の最初の印象と全然違うじゃないか!!」(←なぜか怒りモード)

さっそくきいてみることにした。

「ねえねえ、私と初めて会った日のこと覚えてる?」
「覚えてるよ」
「そのときに私に抱いた印象と今の私って同じ?」

「 全 然 違 う 」(即答)


「……違うの?」
「違うな」
「その私の最初の印象ってどんなの?」

夫、しばらく黙り込む。黙り込んだあと、

「ごめん、もう覚えてないよ。今が強烈すぎて昔の印象なんて掻き消えた」

初めて会ってから、月日が経ち過ぎてしまったようです。
もっと早くにきけばよかった。

ちなみに夫の印象は、最初に抱いた印象と今も全く変わってないです。