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結婚指輪してますか?

夫は結婚指輪を長らくしていなかった。
左利きなので邪魔になるし、指輪が傷つきそうだったからだ。

ところが、ある日、仕事から帰ってきた夫が「結婚指輪をする」と言い出した。

事情をきくと、どうやら独身と勘違いされたらしい。
確かに夫はパッと見た感じ、独身に見えるかもしれない。
友人たちは夫をみると「すごく若く見えるねんけど?」と驚くし、ある人は私たち夫婦をみて「同い年ですか?」ときいてきた(殴)あの言い方から察するに、おそらくかなり年下に見えたのだと思う。ショック。一生忘れん。そして許さん。
弟は「義兄さん、会うたびに年齢不詳になっていくね」とちょっと怖がってる。

特に夫は鍛えてるわけでもないし、美容に勤しんでもいない。むしろ興味なし。夫が興味があるのは仕事だけ。あと私と娘(たぶん)
夫が若く見えるのは血筋だろう。
新婚時、夫の従兄が女性と写ってる写真をみて「あら~、キレイな奥様ね」と言ったら「それおばさん。お母さんだよ」と大笑いされたことがある。

ちなみに夫は夫で「僕、精神的に幼いのかも。それが顔に出てるのかもしれない」と悩んでる。

「でも、あなたは左利きだから、指輪したら日常生活で邪魔になるんじゃない?」
「でも、結婚してないって思われる」
「結婚指輪しても誰も見ないと思うよ。意味ないんじゃない?」

私の父も、義父も、そして親戚のおじさんも、みんな指輪なんかしてなかった(と思う)
会社の上司はしてた……かな?人の左手薬指なんて意識して見たことがないから、全く記憶にない。
これを書いている今だって、いつも話してるママ友たちが指輪をしてたかどうか記憶にないぐらいだ。
結婚指輪にそれほど効果があるとは思えない。

この一連の結婚指輪についての考えと疑問を、友人たちに相談してみた。
案の定、何人かは「私も指輪してないし、人の指輪なんて意識したこと一度もないよ」と言い、一人(男)から「僕は指輪してるよ。でも、奥さんは太って入らなくなった(号泣)」と話していた。

ところが、そんなやりとりを見ていた独身の友人(女)Tちゃんが私にlineしてきた。

「凜ちゃん、めっちゃ見るから!もうね、気になる男の人をみた瞬間、左手に目がいってるから。独身の女たちを代表して私が言うわ。お願いだから旦那さんに指輪させて。私たち(?)の心をかき乱すようなことしないで」

まぁ、Tちゃんったら。夫を褒めすぎ、と思ったのもつかの間、怒濤のメッセージがやってきた。

「いい男をみると、反射的に左手の薬指を見ちゃうのよね。まぁ、もうほとんどといっていいぐらい、指輪してるわ。その指輪をみたときのがっかり感といったら……でも、そのあとにくる大きな安心感っといったら……」

意味がわからない。

「なんで、そこで安心するのよ?」

「そう、そこなのよ。『あぁ、沼んなくてよかった~』ていう安心感。わかる?わかんないでしょうね。そんな安心感を覚える自分に『だから私はあかんねん!』と、今度はすごく大きな落ち込みがくるわけ」

がっかりして安心して落ち込んで。なんて忙しい子なのかしら。
悪いけど、私はあなたのその乱高下についていけないわ。

それを、共通の友人Aちゃんに話してみた。
するとAちゃん。

「あぁ、きいたきいた。『凛ちゃんは全然わかってくれないのー!』って、あの子、嘆いてたわよ」

ゴメン、Tちゃん。昔は、バンジージャンプを「シェーーッ」のポーズ(おそ松くん)のままできるか否か、なんて話題で二人で大盛り上がりしたわね。私はそんなあなたが大好きよ。

でも、その後のAちゃんの言葉が重かった。

「でも、私も指輪はしてもらったほうがいいと思う。私は酔って失くされたら困るから(旦那さんは大のお酒好き)別に指輪を買って旦那につけさせてるわよ」

「えー、なんでそこまでして指輪すんの?」と私。

友人は「わかってないわね」みたいな呆れた顔で「あのね、凜ちゃん」と切々と語り出した。

「指輪って、もちろん二人のイベント的な面もあるけれど、それ以上に他人に対する親切っていう意味もあると思うの。もちろん指輪なんか見ても『だから何?』みたいな人もいるかしれない。でも、常識のある人はそこでなんとか心にストップをかけようとするの。そういう意味では指輪って男女の礼儀だと思う」

男女の礼儀!
いやはや、目から鱗どころか魚が落ちたわ。
さすが、中学時代から学級委員に生徒会長、ありとあらゆる面でリーダー気質を発揮していたAちゃん。ときどき「え?その論理おかしくない?」と思うこともあるけど(笑)とにかく説得力あるわ~。

それまで指輪って、私にとって彼女の言うとおり、一つのイベントだった。
付き合って最初にプレゼントされるもの。それはいつだって指輪だった。
彼氏彼女になって間もないころ、すごく盛り上がっているときだからイベント感が大きいのだ。
他人のためにするものだという意識が全くなかった私には、彼女の言葉はそれはそれは響いた。

それにしても書いていて恥ずかしい。
まさにお互いの旦那の惚気合いですね。

確かにAちゃんの旦那さんはイケメンだ。しかも高学歴の高年収ときた。
ジャ〇ーズ大好きなAちゃんを知ってる夫は「Aさん。実生活もジャ〇ーズでよかったね」と言っている。

かくいう夫も、会うこと2回目の女性(私のこと)にいきなり「付き合ってほしい」とストレートに言われちゃった人だ。
いい男は早い者勝ちの仁義なき(?)世界っていうことを学んでいたので(恥)

ちなみに、夫には大笑いされた。
「『女房妬くほど亭主もてもせず』って、昔の人はよく言ったもんだな」

夫よ、妬かれてるうちが華だぞっ。