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【パイオニア】エニグマティックファイアーズ完全ガイド 【奇怪な具現】

■はじめに

前回のラクドスミッドレンジの記事ではありがとうございました。予告通り、完全ガイド第2弾のエニグマティックファイアーズ編です。4/1の晴れる屋大阪TCのプレミアム予選を突破し、無事にファイナルへ出場出来ることとなりました。前々週から突破者を輩出し続け、続く4/2の晴れる屋日本橋店でも結果を出した、今最も熱いデッキです。

なおこのデッキは、既に東西のエニグママスターにより記事が執筆されております。是非此方も合わせてご覧ください。また、彼らに倣い本記事におけるデッキ呼称も"奇怪な具現"とします。検索しやすさは重要です。

さて私は今回、レガシー界の盟友はやたつ(@hayatatsu0823)と調整を進めておりましたが、このデッキはプレイヤーやコミュニティによってリストが全く異なります。誰もが自身のデッキが最強と信じ、自身のマナベースを最高だと考えています。その様子はさながら宗教戦争

マスターの記事を読んだ2人の感想。無事抜けたので記事を書いてます

1年以上使い続けた彼らがマスターであり、正教徒であることは認めます。という訳で始めましょう、"奇怪な具現"デッキ解説、異教徒編です。

(2023.4.13) カード解説~エンチャント編~を追加しました。また、一部カードの解説及び評価を変更しました。
(2023.4.24) 最序盤の土地セットについて の章と、グルールブリッツの項を追加しました。また一部マッチアップの相性を更新し、追記を加えました。

■奇怪な具現とは?

見た目は10円レア

デッキ名にもなっているエンチャント、《奇怪な具現》を用いて各種エンチャントをCIP持ちクリーチャーに変換し、盤面の優位を築いていくコンボ・ミッドレンジデッキです。エンチャントの大半は場に出たタイミングで既にアドバンテージを確保しており、それを燃料として再利用するためカードカウントを稼ぎやすいのが特徴です。また《創案の火》を有している点からもデッキ全体のスケールが大きく、クリーチャーデッキ全般に優位を持ちます。また大ぶりのソーサリーアクションが多く、一般論としてアゾリウスカラーに代表されるコントロールデッキ、ロータスコンボのようなアンフェアデッキを苦手と言われています。

■サンプルリスト

81枚です

此方は私が先日、プレミアム予選を突破したリスト(6-0-1, 2-0)になります。4枚採用された《世界樹への道》、一般的に採用されない《魅力的な王子》、そしてサイドボードに大量に置かれたカウンターなど、かなり特徴的なリストになっていると認識しております。折角ですので、マスターのリストをお借りして比較してみましょう。

マナベース、クリーチャー、エンチャント、サイドボード、全てが違う

補足ですが、どちらが優れているかを論じる気はありません。採用するクリーチャーやエンチャントの1枚で相性差が左右するマッチも多く、どの相手に重きを置くか、あるいは切ってしまうのか、これはプレイヤーの判断となります。例えば、《チャンドラの誓い》は対ラクドスミッドレンジへの優位を固める1枚です。このデッキはカスタマイズ性が非常に高く、自分好みのリストに仕上げるのが良いでしょう。今回の私のリストの構築思想としては、安定性を上げること、そして不利マッチを可能な限り減らすことを掲げております。なお抜けた当日、及び前々週のSEで敗北した予選では一度もラクドスミッドレンジにマッチしておりません。確かに有利ではありますが、当たらずとも十分な自力を持つデッキだと自負しております。

■カード解説~クリーチャー編~

それでは、カード紹介に移ります。個人的な優先度、有効なマッチアップ、解説をそれぞれのカードに入れております。また、今回は採用不採用に限らず、調整時に候補に挙げたカード全てをピックアップしていきます。長丁場ですがお付き合い頂けると幸甚です。

■カード解説~エンチャント編~

続いて、カード解説のエンチャント編となります。
基盤となる2マナエンチャントについては後述します。

■カード解説~マナベース編~

マナベースは本当に人それぞれです。確定しているのは《聖なる鋳造所》4枚のみ。これは先手緑単1t目の《ラノワールのエルフ》/《エルフの神秘家》に対して《岩への繋ぎ止め》で返すために必須です。ということで、何種類かのリストをピックアップして意図を解説していきます。

まずは私のリストです。《世界樹への道》を取っているために基本土地が5枠あります。また黒マナを要求するカードを極限まで絞り、同じく黒マナ源を《ゼイゴスのトライオーム》、《沼》のみとしてあります。《ゼイゴスのトライオーム》は最もプレイ頻度が高い《聖なる鋳造所》と対になる土地で、版図カウント5を達成可能、かつ《ドビンの拒否権》の青白要求に対応することが可能です。《世界樹への道》と合わせて、色マナのカウントは赤19、黒9、青21、白20、緑21。

大量のショックランドを採用し、アンタップインの確率を上げつつ版図カウントの期待値を上げることが可能です。また採用された土地の種類が散っているのも特徴です。種類を絞ると再現性が上がる一方で、重ね引いたときに版図が稼げずカラースクリューを起こすリスクがあります。赤18、黒7、青17、白19、緑16。

トライオームの種類を更に散らし、一方で数枚の基本土地を採った形。基本土地は《廃墟の地》への耐性がつくため青白コントロールが多いと見るなら2枚は取っておきたいところです。やはり3者に共通して《聖なる鋳造所》は4枚入っていますね。赤16、黒8、青16、白20、緑18。

■プレイ指針

このデッキを語る上で欠かせないのが、デッキの英名でも上がっている2種類のエンチャント。《奇怪な具現》、そして《創案の火》です。これを軸としてクリーチャーを展開していきます。ダメージレースを仕掛けるというよりは、アドバンテージで圧殺する形を取ることが殆どです。
簡単ではありますが、ゲームの流れは次のようになります。

~序盤~

《岩への繋ぎ止め》、《力戦の束縛》で相手クリーチャーを除去しつつ、マナベースを整えます。また、猶予があれば各種2マナエンチャントを展開しておきましょう。《鏡割りの寓話》はブロッカー/《宝物》の供給、不要牌の処分と土地基盤の整備、フィニッシャーの確保を兼ねる重要カードです。一方で《奇怪な具現》のタネとするには些か勿体なく、また4マナ域に目立ったクリーチャーがいないため、《奇怪な具現》が手札にあるなら2マナエンチャントを優先し、タップイン処理に回ることも多いです。

~中盤~

先行されがちな盤面を《創案の火》、《奇怪な具現》で押し戻します。除去が必要なら《スカイクレイブの亡霊》や《拘留代理人》を。置物が邪魔なら《秋の騎士》を。アドバンテージを稼ぐなら《改革派の結集者》を。そして勝ちに向かうなら《月恵みのクレリック》を。《奇怪な具現》は1回目の起動で場を五分に、2回目の起動で優勢に、というイメージです。
《創案の火》が設置出来ると《トライオーム各種》をサイクリングに回せるようになり、また《空を放浪する者、ヨーリオン》は回収から即プレイまで持っていくことが可能です。後者は《創案の火》を追放することで、1ターン2枚のプレイ制限を外すことが出来ます。丁度2マナ余る計算になるので、ここで《魅力的な王子》をプレイ出来ると互いが互いをブリンクし合い、脇のエンチャントやCIPクリーチャーを無限に起動可能になります。

~終盤~

《力戦の束縛》から呼んだ《産業のタイタン》や《裏切りの工作員》を《空を放浪する者、ヨーリオン》や《玻璃池のミミック》で使いまわし、逆転不可能な盤面を築いていきます。この過程でライフや手札が増え、相手のカードは次々と除去されていきます。実は《産業のタイタン》のトランプルでゲームが終わっていた、《帰還した王、ケンリス》のクロック圏内だった、とリーサルを見逃しやすいです。アドバンテージに溺れないよう注意です。

● 2マナエンチャントの選択について

《海の神のお告げ》、《苦々しい再会》、《ナイレアの存在》、《狼柳の安息所》、そして《世界樹への道》。デッキの基盤とする2マナエンチャントは概ねこの5種から選択することとなります。この中では《狼柳の安息所》のみ性質が異なり、アドバンテージを生まないものの、3t目に4マナへ到達することで《奇怪な具現》を早張りし、対ロータスコンボへの《エメリアのアルコン》、対緑単への《スカイクレイブの亡霊》/《拘留代理人》を早期に展開する目的で使用されます。但しこれは上述のマッチを除くとリターンに乏しいこと、またアンタップイン土地を2枚要求されるためショックランドの枚数が増えやすく対アグロ性能が落ちることが欠点です。そのため採用されても2枚程度であることが多く、メタカードの延長というような認識です。
次に格落ちするカードが《ナイレアの存在》。《力戦の束縛》の1マナプレイが確定しますが、そのために2マナを消費しているため本末転倒です。更には《奇怪な具現》で剥がすと効果は消えてしまいます。ドロー能力も他と比べると単純に弱く、《廃墟の地》で対象不適切になるといった弱点も存在します。《マナの合流点》との相性が良いのは見逃せないメリットです。
《海の神のお告げ》、《苦々しい再会》は前者の優先度が高いです。単純に3枚カードを掘れること、サイドボード後のカウンター構えとの両立が効くことが理由です。後者は《キキジキの鏡像》と相性が良く、また《産業のタイタン》がトランプルと合わせてPWに攻撃するなど、速攻が活きる場面は意外と多いです。但しクリーチャーの展開が終了ステップになることが多いこと、ドローに際し手札に無駄牌が必要なため枚数を減らしています。

●《世界樹への道》について

有料部分、青白コントロールの章で解説します。ごめんなさい!

●《力戦の束縛》について

《奇怪な具現》で生贄にすると、追放したパーマネントが帰ってきてしまいます。トークンを対象に取るとこのデメリットを回避可能ですが、それが相手の場に無い時はCIPを持たないカードを選びましょう。例外としては《耐え抜くもの、母聖樹》や《羅離骨牌》のように《奇怪な具現》への除去が懸念される場合。この場合は単純に強いパーマネントを対象とすることで、相手への選択を迫ります。私は《裏切りの工作員》を呼ぶ前提で《世界を揺るがす者、ニッサ》を追放しなかった結果、《奇怪な具現》を除去されて3/3の群れに押し潰されました(1敗)。

●マリガンについて

いつも通り、ゲームプランが見えるならキープです。《創案の火》、《奇怪な具現》は必ずしも初手にある必要はありません。それよりも重要なのは色基盤です。版図はともかくとして、手札のカードをプレイするに支障がある手札はマリガンです。また、7マナ域クリーチャーが2枚以上ある場合もマリガンした方が良いでしょう。それ以外の最低限、マナ基盤が整っておりプレイ出来るカードが2枚程あるならばそれはキープでOKです。

●最序盤の土地セットについて

基本的にはプレイできるカードの色を優先する、という認識でOKです。では、下記の場合はどうセットするのが良いでしょうか。
先手1t目、相手のデッキは不明と想定します。

正解は《ラウグリンのトライオーム》です。相手が《ラノワールのエルフ》をプレイした、かつトップから《岩への繋ぎ止め》か《力戦の束縛》を引いた場合に即座にプレイすることが可能です。些細なことに見えるかもしれませんが、対緑単では1→3のジャンプを止められるかはゲームの勝敗に直結します。同様に、後手のマリガンでは《聖なる鋳造所》をボトムに返さないよう注意しましょう。(1敗)
簡単ですが、最序盤の土地セットは下記が指針になります。あくまでトライオームを複数引いた前提であり、悩む余地が無い場合も多々あります。

A. 2マナエンチャントがある: 色が合い、ライフ損失の少ない順
B. ない、あるいは複数選択肢がある: 白→青/緑→赤→黒の順

黒マナは《帰還した王、ケンリス》の起動能力と《闇叫び》でしか使わないため、優先度が一番低いです。タップイン処理の過程として、《力戦の束縛》のコストを軽減したいタイミングで置くのが理想です。青/緑マナは単純に2マナエンチャントとしてトップする可能性が高く、赤マナは概ね3t目の《鏡割りの寓話》に間に合えば良いため一段優先度が下がります。また、対アグロデッキには白マナを複数用意することを意識します。ルーターが入った場合に《岩への繋ぎ止め》、《力戦の束縛》を重ね引くと1tで2枚プレイしたい場面があります。

■サイドボーディング & マッチアップガイド

前回同様、サイドボーディングは私のリストに則ったものになります。このデッキはラクドスミッドレンジ以上にカード選択の幅が広く、また1枚の採用、あるいは非採用で相性差が激変するマッチが数多く存在します。目安としてお考え下さい。
参考までに、本リストの相性一覧を先んじて載せておきます。

対青白コントロール、通算17-5になりました。
ロータスは4-3です。

●ラクドスミッドレンジ

サイドin/outです。このマッチは最低限になります

メインボード : 有利

エンチャントの処理手段に乏しいため、《創案の火》あるいは《奇怪な具現》のプレイを目標とします。どちらかが一度機能すれば勝利です。《産業のタイタン》をはじめ、強力な5マナ域クリーチャーで相手の盤面を蹂躙していきましょう。《思考囲い》で上記2種を抜かれ、《砕骨の巨人》で盤面を処理されつつ《税血の収穫者》に殴られるのが負けパターンです。除去は惜しまず使い、《黙示録、シェオルドレッド》によるライフルーズの余裕を保つよう意識しましょう。《奇怪な具現》が機能しているならそれで優勢です。《黙示録、シェオルドレッド》、《砕骨の巨人》、《墓所の大食らい》、《目玉の暴君の住処》、飛び道具はこの辺りです。

サイドボード : 微有利

《強迫》をはじめハンデスが増えるため、上述の負けパターンの頻度が上がります。これを嫌うのであれば、《月恵みのクレリック》の2枚目を採用すると良いでしょう。また、意外と此方側のクリーチャーは奇数に寄っているため《絶滅の契機》は当たりやすいです。元々珍しいケースではありますが、《産業のタイタン》に《盾》カウンターを乗せる動きは特に避けた方が良いでしょう。

●緑単

メインボード : 微不利

《大いなる創造者、カーン》がとにかく厳しいです。《機能不全ダニ》に睨まれると《奇怪な具現》が解決出来ず、《街並みの地ならし屋》が《力戦の束縛》や《岩への繋ぎ止め》を割ることで、削ったはずの信心や《茨の騎兵》を再度機能させてしまいます。更には展開に追いつくための《鏡割りの寓話》からの《宝物》トークンも使用不可に…。
逆に言えば、それ以外の展開はまだ何とかなります。《スカイクレイブの亡霊》や《拘留代理人》で除去し、それを《玻璃池のミミック》や《賢いなりすまし》で横に並べてとにかくマナが伸びるのを阻止します。《拘留代理人》は同名カードを全て巻き込むので、《ラノワールのエルフ》、《エルフの神秘家》の見えている枚数は必ずカウントしましょう。
また、1つの目標となるのが《機械の母、エリシュ・ノーン》の召喚。彼女は4t目の《創案の火》を切ってでもプレイする価値があります。《茨の騎兵》や《ビヒモスを招く者、キオーラ》の誘発を止めること、全てのクリーチャーを押しとどめるタフネス7が見た目以上に時間稼ぎとして有効です。ターンさえ帰ってしまえば除去やドローの誘発も倍加するため、勝利がぐっと近づきます。このどちらかを達成できれば凡そ勝利。出来なければ盤面が溢れて敗北です。
また、最終的なゴールは《裏切りの工作員》です。《空を放浪する者、ヨーリオン》と《魅力的な王子》で全て奪いましょう。対象はPWや《茨の騎兵》が主ですが、枚数が見えているなら《ニクスの祭殿、ニクソス》、《狼柳の安息所》がついているなら《森》も候補になります。

サイドボード : 微有利
大量のカウンター、そして《真髄の針》を投入することで相性は微有利まで持ち直します。《神秘の論争》は《ビビモスを招く者、キオーラ》に間に合い、最悪3マナソフトカウンターとしてもプレイアブルなカードです。序盤を除去とカウンターで凌ぎ、手数を押さえてから《創案の火》や《奇怪な具現》で切り返すという動きを意識すると良いです。《創案の火》は以降のカウンターが全て無駄牌になるため《スカイクレイブの亡霊》、《空を放浪する者、ヨーリオン》等と合わせて盤面を押さえきれる時にのみプレイしましょう。《創案の火》から《奇怪な具現》をキャスト、終了ステップに即生贄という動きはカウンターが重要となる対緑単、対コントロールで頻発します。《真髄の針》の指定は《大いなる創造者、カーン》。2枚目は《耐え抜くもの、母聖樹》です。最近はメインボードにも《街並みの地ならし屋》が増量されているケースが多いので油断は禁物です。

●グルールミッドレンジ

メインボード : 微有利

先手を取られて《ラノワールのエルフ》、《無謀な嵐追い》、《エシカの戦車》と動かれると負けますが、それ以外は大体間に合います。ラクドスと異なりハンデスが無いためゲームプランを立てやすく、逆にクロックが早いため《奇怪な具現》のタネとなるエンチャントの設置が必須となります。《産業のタイタン》が非常に頼もしく、5点ゲイン+《解呪》or《サイ》トークンを《玻璃池のミミック》で使いまわして盤面を固めていきます。この過程で注意が必要なのが《アクロス戦争》。7/7トランプルは此方にとっても脅威となるため、《秋の騎士》や《スカイクレイブの亡霊》での対処していきましょう。特に《無謀な嵐追い》がいると、速攻をもって此方に殴りかかってきます。相手の動きが鈍い時は手札にあることを意識しておくと良いです。

サイドボード : 微有利

特に動きは変わりません。一度は必ず先手の脅威に晒されるので、ブン回られない事を祈りつつクリーチャーを捌いていきましょう。緑色のデッキ全てには共通して《耐え抜くもの、母聖樹》に注意するべきですが、このデッキはクロックが早く、とりわけ致命傷になりやすいです。《エシカの戦車》、《領事の旗艦、スカイソブリン》がいると1マナで起動可能なことは覚えておきましょう。

さて、今回も無料部分はここまでになります。
以降は前回同様、環境デッキ12個へのゲームプラン及びサイドボードと、質問箱を置いております。苦手と言われる対青白コントロール、最近増えている同型に勝ちたい方は是非に。宜しくお願い致します。

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